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29 任務
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「さて、私が軍の中でどの位置にいるか知っているだろうか」
「はい、元帥閣下は帝国軍のトップです」
「そうだな。本当なら帝国軍にも入隊試験はあるが、王国軍の入隊式では私直々にルートの戦いを見た。だから私は、私の権限でルートを帝国軍所属にし、私の隊に入れようと思う」
「閣下の隊、ですか。ですが、ポッと出の私が入って反感を買うことにはなりませんか」
「帝国軍は実力主義と言っただろう。それに、ルートが見知った仲のものもいる」
「見知った仲……?」
ベルガリュードはルーナストの疑問に、笑みを浮かべた。
「ロイ……出てこい」
「はっ」
ベルガリュードの声かけに、どこからともなく現れたのは、ロイだった。
けれどいつもと違い、ひげはしっかり剃られ、髪も綺麗に整えられていた。
「ロイ……?」
「ああ。俺の本当の名はロイアード・ジル・リオールという。今まで通りロイと呼んでくれていい」
「ロイは私の右腕として働いている。こう見えて公爵家の当主だ」
「ロイが……」
ロイの風貌や立ち振る舞いからまさか貴族だなどと疑いもしなかったルーナストは、目が飛び出そうなほど驚いた。その上、今は高位貴族然とした雰囲気を纏っている。
ルーナストは、トーナメントの時にロイが手を抜いていた理由が分かって納得した。
「ロイはでかくて目立つ見た目ではあるが、偵察が得意だ。この任務をルートにもやってもらおうと思っている」
(そんな大役ができるだろうか)
ルーナストは不安に思った。
(いや、出来るかどうかじゃなく、とにかくやろう)
覚悟を決めてうなずいて答えた。
「承知しました」
それからルーナストは、任務の内容を伝えられた。
カンドルニア王国の国家転覆を狙った組織が、王国軍の新兵に紛れ込んでいないか監視する任務だ。今まで通り男装したまま潜入し、何か怪しい動きがないか探る。
国家転覆を狙う組織については帝国軍が独自に入手した情報で、王国軍の誰が裏切るのかも分からない状態ということを知った。
そういう状況なので、帝国軍と合同で訓練をすることに対して、カンドルニア王国の王族すら帝国側の目的を知らない。
「そんな重要なことを私に教えてよかったのですか。もしかしたら私がその組織の一員かもしれないのに」
「それはないな。お前とショーンはトーナメント一位になっていたから、特に監視を強くしていた。だが、お前ときたらバカみたいに体を鍛えるばかりだし、ショーンもルートほどではないが、それに近かった。なぁロイ」
ベルガリュードの問いかけにロイはうなずいた。
「はい。俺はショーンを監視していることが多かったですが、ショーンはだいたいルートに誘われたトレーニングを断り、1人か、もしくは俺と2人でコソ練をするのが日課でした」
「コソ練……?」
「隠れてトレーニングをして、ある日突然ルートに勝つつもりだったみたいです」
「付き合い悪いと思ったらそういう事だったのかぁ」
ルーナストは納得してスッキリした。
そんなこんなでルーナストはその日の夜に婚約式を済ませ輿入れ2日目にして、カンドルニア王国に帰った。ロイに魔力がないというのは平民だと思わせるための嘘で実はそれなりの魔力量を持っていたらしく、ベルガリュード、ロイ、ルーナストの3人は、王国軍の訓練所へ瞬間移動した。
ショーンはルーナストが無事に帰ってきたことで本当に喜んでくれた。
ショーンの疑いも、ルーナストと同様晴れているらしいので、今回の出来事について全て説明し、ショーンも協力者になった。
「はい、元帥閣下は帝国軍のトップです」
「そうだな。本当なら帝国軍にも入隊試験はあるが、王国軍の入隊式では私直々にルートの戦いを見た。だから私は、私の権限でルートを帝国軍所属にし、私の隊に入れようと思う」
「閣下の隊、ですか。ですが、ポッと出の私が入って反感を買うことにはなりませんか」
「帝国軍は実力主義と言っただろう。それに、ルートが見知った仲のものもいる」
「見知った仲……?」
ベルガリュードはルーナストの疑問に、笑みを浮かべた。
「ロイ……出てこい」
「はっ」
ベルガリュードの声かけに、どこからともなく現れたのは、ロイだった。
けれどいつもと違い、ひげはしっかり剃られ、髪も綺麗に整えられていた。
「ロイ……?」
「ああ。俺の本当の名はロイアード・ジル・リオールという。今まで通りロイと呼んでくれていい」
「ロイは私の右腕として働いている。こう見えて公爵家の当主だ」
「ロイが……」
ロイの風貌や立ち振る舞いからまさか貴族だなどと疑いもしなかったルーナストは、目が飛び出そうなほど驚いた。その上、今は高位貴族然とした雰囲気を纏っている。
ルーナストは、トーナメントの時にロイが手を抜いていた理由が分かって納得した。
「ロイはでかくて目立つ見た目ではあるが、偵察が得意だ。この任務をルートにもやってもらおうと思っている」
(そんな大役ができるだろうか)
ルーナストは不安に思った。
(いや、出来るかどうかじゃなく、とにかくやろう)
覚悟を決めてうなずいて答えた。
「承知しました」
それからルーナストは、任務の内容を伝えられた。
カンドルニア王国の国家転覆を狙った組織が、王国軍の新兵に紛れ込んでいないか監視する任務だ。今まで通り男装したまま潜入し、何か怪しい動きがないか探る。
国家転覆を狙う組織については帝国軍が独自に入手した情報で、王国軍の誰が裏切るのかも分からない状態ということを知った。
そういう状況なので、帝国軍と合同で訓練をすることに対して、カンドルニア王国の王族すら帝国側の目的を知らない。
「そんな重要なことを私に教えてよかったのですか。もしかしたら私がその組織の一員かもしれないのに」
「それはないな。お前とショーンはトーナメント一位になっていたから、特に監視を強くしていた。だが、お前ときたらバカみたいに体を鍛えるばかりだし、ショーンもルートほどではないが、それに近かった。なぁロイ」
ベルガリュードの問いかけにロイはうなずいた。
「はい。俺はショーンを監視していることが多かったですが、ショーンはだいたいルートに誘われたトレーニングを断り、1人か、もしくは俺と2人でコソ練をするのが日課でした」
「コソ練……?」
「隠れてトレーニングをして、ある日突然ルートに勝つつもりだったみたいです」
「付き合い悪いと思ったらそういう事だったのかぁ」
ルーナストは納得してスッキリした。
そんなこんなでルーナストはその日の夜に婚約式を済ませ輿入れ2日目にして、カンドルニア王国に帰った。ロイに魔力がないというのは平民だと思わせるための嘘で実はそれなりの魔力量を持っていたらしく、ベルガリュード、ロイ、ルーナストの3人は、王国軍の訓練所へ瞬間移動した。
ショーンはルーナストが無事に帰ってきたことで本当に喜んでくれた。
ショーンの疑いも、ルーナストと同様晴れているらしいので、今回の出来事について全て説明し、ショーンも協力者になった。
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