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39 卒業

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モルガンの首筋からわずかに流れた血を除けば、ベルガリュードは敵も味方も血を一滴も垂らさずに反乱軍を制圧した。

(こういう戦い方もあるんだ)

ルーナストは王国軍の手によって捕縛され輸送される反乱軍を見ながら惚けたようにしばらく動けないでいたが、最後の1人が輸送用馬車に乗せられて無事に終わった。

「ルート、お疲れ様」
「閣下、お疲れ様でした」

(さすがだとか、カッコ良かったとか。そう言うのって不敬になるのかな)

そう思ってしまい、ルーナストはただお疲れ様の言葉を返すだけになった。
けれどベルガリュードは特に気にした様子もなく、報告書の記入を始めた。

「ルートも、もう卒業だな」
「はい」

たったの3ヶ月だったが、濃密な期間だった。
思い出もたくさんあるし、感慨深い。

「卒業すれば皆バラバラの部隊に配属される。そもそもルートは帝国軍の所属になるが、不安なことはあるか?」
「特にありません。ただ、帝国軍は訓練設備がとても良いと聞いたので楽しみです」
「ははっ。そうか」

ベルガリュードは嬉しそうに笑ってそう言った。

そうしてすぐにルーナストたちの卒業の日がやってきた。
ルーナストだけではなくショーンも、帝国軍に入れてもらえることになった。
その上、モルガンをはじめ、何人かは反乱軍に加担したため捕まったので、卒業式後の配属式は寂しい人数になっていた。

「無事解決したけど、なんだか寂しいね」
「そうだね。でも、ショーンが一緒に行けるから私は嬉しいよ」
「僕もルーナストに着いて行けてよかったよ。帝国国籍がないのにさ」
「私が結婚するから、その従者扱いのショーンは2年くらいで帝国国籍がもらえるらしいよ」
「そうなの? よかったぁ。でもほんと、憧れのドラスティールの鬼神とこんなに関われて、その上正式な部下にまでしてもらえるなんて、幸せだよねぇ」
「だね。さ、一度ブラクルト辺境伯領に帰ってから、身支度を整えて帝国の皇都まで行こう」
「うん」

ルーナストたちは、早めに出発するために急ぎ気味でブラクルト辺境伯領まで帰った。
ショーンが魔術で移動できるほどの魔力量を持ち合わせていないため、魔力コントロールが上達したルーナストが、ショーンを一緒に連れて行くつもりだが、初めての2人分の魔術なので、時間に余裕を持って行きたいのだ。
けれどブラクルトまで着くと、ルーナスト宛に急ぎで手紙が届いていた。

「誰からか……名前も書いてない」

真っ白い封筒に、ただルーナストのフルネームが書かれているだけだ。
蝋印の柄も、一般的な柄で家名を特定できるものではなかった。
だが、手紙の中には誰であるのか記入されており、その相手に驚愕した。

『ルーナスト・メディスタム・ブラクルト辺境伯令嬢へ
私はあなたと婚約している者の兄です。
つきましては、あなたと一度話したい。
この手紙が届き、もしも私と話す時間が取れる場合は
私はいつでも時間を取るので先ぶれもなく訪ねて欲しい
グランツェ・グオド・ドラスティール』

ベルガリュードの兄ということは、帝国の皇帝ということだ。
ルーナストは急ぎ、帝国へ向かうことにした。
ショーンには後で迎えに来ることを告げ、とりあえず何も持たずに出発した。
と言っても一度行ったことのある場所だ。

「ドラスティール帝国皇城前へ」

そう呟けば、周りの景色が変化し、次の瞬間には帝国の城の前についた。

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