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琢磨と仲直り
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学校に行くと優生が怯えた様子で近寄って来た。
「あの……昨日はすんませんっした。良かれと思って……」
「あのなぁ、良かれと思ってんのはいいが、相談してからにしてくれ」
「はいっす、すんませんっす」
ひどく落ち込んでる様子だったので仕方ない、と許した。
そもそも俺の理性の弱さも悪いしな。
その時、廊下を歩く琢磨が見えた。
一瞬しか見えなかったのにひどく痩せていて頬はこけているように見えた。
「おい! 琢磨!」
俺が後を追って呼びかけると振り返って俺を確認した。
そして驚いた顔をして走って逃げようとした。
だが、ふらついていてうまく走ることもできないようですぐに捕まえることができた。
「何で逃げるんだ」
「あの……僕、ごめん。本当はここを通るつもりじゃなかったんだ、顔見せてごめん」
「は? 何言ってんだ!」
「ごめん……ごめん、ごめ」
「おい、どうしたんだよ」
「ごめん。リン、ごめんね」
埒が明かないので俺は今日の昼、いつも昼飯食べてたところに来いと約束を取り付けた。
俺は授業の時間ももどかしく感じながらお昼を待ってうどんの弁当を2つ買ってあの場所に向かった。最近はここで優生と食べているが今日は遠慮してもらった。
相当ショックそうな反応をしていたが、昨日の件をまだ怒っているわけではないことと話さないといけない相手がいるということを説明すると安心したようにわかったっすと納得してくれた。
待っていると琢磨がふらふらと歩いてきた。
「琢磨!」
「リン……ごめん……」
「何がごめんなんだ。分かるように言ってくれ」
「僕、あんな噂流してなくて……」
「そんなことはもうわかっている。朝礼でも犯人を言ったろ」
「だけど僕、あんな噂を流してないけど……でも、そうしたいと何回か思ってしまったんだ」
「……そうか。でもしてないんだろ。したいと思うのと、実際に行動に移すのは大きな差があると俺は思うが」
「……でも、結局やったのは僕の兄なんだ……だから……ごめん」
「お前が謝ることじゃねぇ。兄とお前は違ぇだろ。それに……お前のこと放置してて悪かったな。こんなになるまで悩んでいるって気がつかなかった。ごめんな」
「そんなこと」
「兄弟の片方を嫌いになったところで、もう片方も同じように嫌うわけないだろ。もしも琢磨が俺と友達で居てくれるなら俺は嬉しいんだが」
「……ごめん」
謝るってことは無理ってことか。
「……そうか。まぁ、お前の言い分は分かった。だがとりあえず飯を食おう。ほら、うどん」
「ぼ、僕のも?」
「ああ。うどんでいいだろ?」
「うん……ありがとう」
琢磨はそう言ってうどんを受け取って、しばらく眺めていたが俺が食べるように促すと、ちゅるちゅると食べ始めた。
「なぁ、気がついてるのかもしれねぇがお前のこと疑ったことがあるんだ。ごめんな」
そう言うと琢磨は困ったように笑った。
「……知ってた。副会長と話してるのを聞いてしまって」
「ごめんな。琢磨がそんなことをするわけないと思ってたんだが、絶対にないとは言い切れなかった。もしも琢磨が許してくれる気になったら、俺は昼はいつもここに居るから来て欲しい。いつになっても構わないから」
「僕が……許す? リンじゃなくて……?」
「あ? そりゃそうだろ。琢磨は何か悪いことをしたのか?」
「ぅぁ、だって……でも」
「急がなくてもいい。お前のこと理不尽に疑ったりした俺を許してくれる気になったらでいいんだ」
「許すなんてそんな! 僕はそんなこと起こってないよ! あんな状況じゃ僕は疑われて当然で」
「疑われて当然じゃない。俺がもっと気を配ってくればあんなことは起きなかったんだからな」
「でも……僕は本当にリンのことを怒ったりなんかしてない……だから許すも許さないもないんだ」
「……つまり、明日からお昼はここで一緒に食べると言うことでいいのか?」
そう聞くと、琢磨はコクリとうなずいた。
「で、でも。リンは本当にそれでいいの? 副会長は怒らない?」
「ん? でも今も普通に優生と一緒に食べてるし……怒ったりは……あ!!」
そうか、もしかして忠次は嫉妬してくれたりしたのか?
だから最近少し暗かったのか?
その可能性に初めて気がついて俺の心は歓喜で溢れた。
そして次の瞬間には自己嫌悪に陥った。
いやいやいや。
もしもそうだとしたら忠次を落ち込ませたりなんかして俺って最低野郎じゃないか。
「どうしたの? リン。やっぱり副会長に怒られるならやめとくよ。僕はリンのことが好きだけど、2人の仲を引き裂きたいわけじゃないんだ」
そう笑って言ってくれた琢磨に俺は申し訳なくなった。
「あ、いや。明日からちゃんとここに来てくれ。忠次にはちゃんと話しておくから」
そうして俺は琢磨と仲直りすることができた。
「あの……昨日はすんませんっした。良かれと思って……」
「あのなぁ、良かれと思ってんのはいいが、相談してからにしてくれ」
「はいっす、すんませんっす」
ひどく落ち込んでる様子だったので仕方ない、と許した。
そもそも俺の理性の弱さも悪いしな。
その時、廊下を歩く琢磨が見えた。
一瞬しか見えなかったのにひどく痩せていて頬はこけているように見えた。
「おい! 琢磨!」
俺が後を追って呼びかけると振り返って俺を確認した。
そして驚いた顔をして走って逃げようとした。
だが、ふらついていてうまく走ることもできないようですぐに捕まえることができた。
「何で逃げるんだ」
「あの……僕、ごめん。本当はここを通るつもりじゃなかったんだ、顔見せてごめん」
「は? 何言ってんだ!」
「ごめん……ごめん、ごめ」
「おい、どうしたんだよ」
「ごめん。リン、ごめんね」
埒が明かないので俺は今日の昼、いつも昼飯食べてたところに来いと約束を取り付けた。
俺は授業の時間ももどかしく感じながらお昼を待ってうどんの弁当を2つ買ってあの場所に向かった。最近はここで優生と食べているが今日は遠慮してもらった。
相当ショックそうな反応をしていたが、昨日の件をまだ怒っているわけではないことと話さないといけない相手がいるということを説明すると安心したようにわかったっすと納得してくれた。
待っていると琢磨がふらふらと歩いてきた。
「琢磨!」
「リン……ごめん……」
「何がごめんなんだ。分かるように言ってくれ」
「僕、あんな噂流してなくて……」
「そんなことはもうわかっている。朝礼でも犯人を言ったろ」
「だけど僕、あんな噂を流してないけど……でも、そうしたいと何回か思ってしまったんだ」
「……そうか。でもしてないんだろ。したいと思うのと、実際に行動に移すのは大きな差があると俺は思うが」
「……でも、結局やったのは僕の兄なんだ……だから……ごめん」
「お前が謝ることじゃねぇ。兄とお前は違ぇだろ。それに……お前のこと放置してて悪かったな。こんなになるまで悩んでいるって気がつかなかった。ごめんな」
「そんなこと」
「兄弟の片方を嫌いになったところで、もう片方も同じように嫌うわけないだろ。もしも琢磨が俺と友達で居てくれるなら俺は嬉しいんだが」
「……ごめん」
謝るってことは無理ってことか。
「……そうか。まぁ、お前の言い分は分かった。だがとりあえず飯を食おう。ほら、うどん」
「ぼ、僕のも?」
「ああ。うどんでいいだろ?」
「うん……ありがとう」
琢磨はそう言ってうどんを受け取って、しばらく眺めていたが俺が食べるように促すと、ちゅるちゅると食べ始めた。
「なぁ、気がついてるのかもしれねぇがお前のこと疑ったことがあるんだ。ごめんな」
そう言うと琢磨は困ったように笑った。
「……知ってた。副会長と話してるのを聞いてしまって」
「ごめんな。琢磨がそんなことをするわけないと思ってたんだが、絶対にないとは言い切れなかった。もしも琢磨が許してくれる気になったら、俺は昼はいつもここに居るから来て欲しい。いつになっても構わないから」
「僕が……許す? リンじゃなくて……?」
「あ? そりゃそうだろ。琢磨は何か悪いことをしたのか?」
「ぅぁ、だって……でも」
「急がなくてもいい。お前のこと理不尽に疑ったりした俺を許してくれる気になったらでいいんだ」
「許すなんてそんな! 僕はそんなこと起こってないよ! あんな状況じゃ僕は疑われて当然で」
「疑われて当然じゃない。俺がもっと気を配ってくればあんなことは起きなかったんだからな」
「でも……僕は本当にリンのことを怒ったりなんかしてない……だから許すも許さないもないんだ」
「……つまり、明日からお昼はここで一緒に食べると言うことでいいのか?」
そう聞くと、琢磨はコクリとうなずいた。
「で、でも。リンは本当にそれでいいの? 副会長は怒らない?」
「ん? でも今も普通に優生と一緒に食べてるし……怒ったりは……あ!!」
そうか、もしかして忠次は嫉妬してくれたりしたのか?
だから最近少し暗かったのか?
その可能性に初めて気がついて俺の心は歓喜で溢れた。
そして次の瞬間には自己嫌悪に陥った。
いやいやいや。
もしもそうだとしたら忠次を落ち込ませたりなんかして俺って最低野郎じゃないか。
「どうしたの? リン。やっぱり副会長に怒られるならやめとくよ。僕はリンのことが好きだけど、2人の仲を引き裂きたいわけじゃないんだ」
そう笑って言ってくれた琢磨に俺は申し訳なくなった。
「あ、いや。明日からちゃんとここに来てくれ。忠次にはちゃんと話しておくから」
そうして俺は琢磨と仲直りすることができた。
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