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病院について受付の際に神崎先生にお願いできないか一応聞いたけど、予約なしはやっぱり無理だった。
すぐにできるのは研修生だけだったので僕はそれでお願いした。
看護師の人に名前を呼ばれてプレイルームに入って待つように指示された。
先生以外とするのは付き合う前から数えてもだいぶ前だなぁ。
しばらくしたら優しそうな好青年の研修医の先生が入ってきて自己紹介をされた。
セーフワードなどを取り決めてからその先生が部屋の端っこに行ってこちらに向かって手を広げた。
「《おいで》」
コマンドを発されて僕の足は勝手に先生の元へ向かった。
「いいこです……《おすわり》」
ぺたんと足を曲げて座る。
でも何だかおかしい。
Domの発するコマンドを聞いて褒められてSub性が満たされていくはずなのに全然満たされない。
嫌だ。
何か嫌なことをされたわけじゃない。
それなのに、心のそこから嫌悪感が浮かんでくる。
体が震えて嫌な汗が出てくる。
研修の先生が僕の名前を焦ったように呼んでいるのがどこか遠くの方で聞こえた。
嫌だ嫌だ嫌だ。
「……る……おる」
不安な心の中に心地いい声が聞こえてきた気がした。
「透!!」
先生の声だ。
「透、《見ろ》」
目を開くと先生が必死な顔をして僕のことを覗き込んでいた。
「えらいな。透、《舐めろ》」
言われた通りに先生が差し出した人差し指を舐める。
何の味もしない。
少しだけ薬品の匂いがする気がするくらいだ。
ボーッとするけど、だんだんと思考が戻ってきた。
「透、えらいな……《座って》」
先生が背中に手を置いて支えてくれておすわりの体制になった。
「えらい。えらいぞ。透」
何だか頭がふわふわしてきて、さっきまで少し戻ってきてた思考力が落ちていく。
だけどそれはさっきまでと違ってとても安心感があった。
なんだか、今日の先生はいつもの先生の話し方と違ったなぁ。
僕はそのまま眠ってしまった。
目が覚めると自分の部屋のベットにいて、昨日のことを思い出して頭を抱えた。
「どうしよう。僕、先生にめちゃくちゃ迷惑かけた。ただでさえ忙しくて疲れてるのに……。どうしよう」
僕が後悔の念に苛まれているとガチャリと寝室のドアが開いた。
「透、起きたんですか」
「先生……僕、すみませんでした」
「何に対して謝ってるんですか?」
「先生に迷惑かけた。先生の病院でサブドロップになっちゃったから、忙しかった先生をさらに追い込んじゃった。僕、先生以外でもプレイできるって思ってた。でもダメだった。迷惑かけてごめんなさい」
先生は、はぁとため息をついた。
「違います。全然違う。私は透が他の誰かにプレイを頼んだことに怒っています。Sub性が安定していなかったのを見極められなかった私にも責任はありますが、ちゃんと言って欲しい。それをわがままだとか、迷惑だとか思わないで欲しい。分かりますか」
「だけど、病院でのプレイは医療行為で」
「言い訳ですか」
先生が冷たく言い放った。
「でもっ、先生は病院で患者さん相手に満たせるかもしれないけど、僕は先生しかいない……。先生は満たってるのに、僕だけのために先生にプレイを頼みたくない」
「そんなことを思っていたんですか。私は確かに患者相手にプレイをすることはあります。ですが、私のDom性を満たせるのは透だけです……でも、今後病院でのプレイは辞めます。私の代わりなんていくらでもいる」
「そんなっ。いいよ! 先生を必要としている患者さんだっているなんだから」
「いいえ、決めました。そして。私から離れようとした透にお仕置きをしないといけませんね」
「ぼ、僕、離れようとなんてしてないよ!」
「他の人にプレイを頼む……これは私から離れようとした案件だと私は捉えています。なのでお仕置きは決定です」
そう言いながら目だけが笑っていない先生の顔を見て僕は場違いにもほんの少しだけお仕置きが楽しみだなって思った。
すぐにできるのは研修生だけだったので僕はそれでお願いした。
看護師の人に名前を呼ばれてプレイルームに入って待つように指示された。
先生以外とするのは付き合う前から数えてもだいぶ前だなぁ。
しばらくしたら優しそうな好青年の研修医の先生が入ってきて自己紹介をされた。
セーフワードなどを取り決めてからその先生が部屋の端っこに行ってこちらに向かって手を広げた。
「《おいで》」
コマンドを発されて僕の足は勝手に先生の元へ向かった。
「いいこです……《おすわり》」
ぺたんと足を曲げて座る。
でも何だかおかしい。
Domの発するコマンドを聞いて褒められてSub性が満たされていくはずなのに全然満たされない。
嫌だ。
何か嫌なことをされたわけじゃない。
それなのに、心のそこから嫌悪感が浮かんでくる。
体が震えて嫌な汗が出てくる。
研修の先生が僕の名前を焦ったように呼んでいるのがどこか遠くの方で聞こえた。
嫌だ嫌だ嫌だ。
「……る……おる」
不安な心の中に心地いい声が聞こえてきた気がした。
「透!!」
先生の声だ。
「透、《見ろ》」
目を開くと先生が必死な顔をして僕のことを覗き込んでいた。
「えらいな。透、《舐めろ》」
言われた通りに先生が差し出した人差し指を舐める。
何の味もしない。
少しだけ薬品の匂いがする気がするくらいだ。
ボーッとするけど、だんだんと思考が戻ってきた。
「透、えらいな……《座って》」
先生が背中に手を置いて支えてくれておすわりの体制になった。
「えらい。えらいぞ。透」
何だか頭がふわふわしてきて、さっきまで少し戻ってきてた思考力が落ちていく。
だけどそれはさっきまでと違ってとても安心感があった。
なんだか、今日の先生はいつもの先生の話し方と違ったなぁ。
僕はそのまま眠ってしまった。
目が覚めると自分の部屋のベットにいて、昨日のことを思い出して頭を抱えた。
「どうしよう。僕、先生にめちゃくちゃ迷惑かけた。ただでさえ忙しくて疲れてるのに……。どうしよう」
僕が後悔の念に苛まれているとガチャリと寝室のドアが開いた。
「透、起きたんですか」
「先生……僕、すみませんでした」
「何に対して謝ってるんですか?」
「先生に迷惑かけた。先生の病院でサブドロップになっちゃったから、忙しかった先生をさらに追い込んじゃった。僕、先生以外でもプレイできるって思ってた。でもダメだった。迷惑かけてごめんなさい」
先生は、はぁとため息をついた。
「違います。全然違う。私は透が他の誰かにプレイを頼んだことに怒っています。Sub性が安定していなかったのを見極められなかった私にも責任はありますが、ちゃんと言って欲しい。それをわがままだとか、迷惑だとか思わないで欲しい。分かりますか」
「だけど、病院でのプレイは医療行為で」
「言い訳ですか」
先生が冷たく言い放った。
「でもっ、先生は病院で患者さん相手に満たせるかもしれないけど、僕は先生しかいない……。先生は満たってるのに、僕だけのために先生にプレイを頼みたくない」
「そんなことを思っていたんですか。私は確かに患者相手にプレイをすることはあります。ですが、私のDom性を満たせるのは透だけです……でも、今後病院でのプレイは辞めます。私の代わりなんていくらでもいる」
「そんなっ。いいよ! 先生を必要としている患者さんだっているなんだから」
「いいえ、決めました。そして。私から離れようとした透にお仕置きをしないといけませんね」
「ぼ、僕、離れようとなんてしてないよ!」
「他の人にプレイを頼む……これは私から離れようとした案件だと私は捉えています。なのでお仕置きは決定です」
そう言いながら目だけが笑っていない先生の顔を見て僕は場違いにもほんの少しだけお仕置きが楽しみだなって思った。
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