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「あー。終わったなぁ。でもこれが生きてきた中で1番の善行だったかもな……」
俺の座ったところのちょうど真正面の公園から出たすぐのところに、今は珍しいお酒の自販機が見えた。
俺はそこまで歩いて行って2本ビールを買った。
2本とも開けて1本はベンチに置いてそこにもう1本をぶつける。
我ながらキザだなと思った。
「俺と付き合ってくれていた神宮寺さんは死んだ」
だから明日から会社で会う神宮寺さんは全く別の人だ。
「勝手に殺してんじゃねーよ。全く」
後ろから呆れ声で言われた。
「神宮寺さん……どうしてここに……?」
「恋人が変な様子で変なこと行って、急に帰ったら追いかけんのは普通だろ」
「恋人って……だから俺は」
「別れねぇよ」
「え」
「お前が俺と別れたい理由が、白木なんだったら……お前が俺のことを嫌いになったんじゃなかったら、俺はお前と別れる気はねぇ」
「嫌いになんてなるはずないです」
「なら別れねぇ」
「なんで……」
「なんでって。そりゃ中野のことが好きだからだろ」
「だって、今までそんなこと一度も」
「あー。まぁ口にしたことねぇかもな。悪かった。態度で分かってると思ってたんだ。実際会社の奴らには俺が中野のこと好きなのバレてるし」
「え!?」
「知らなかったか? 営業課の神宮寺と中野はできてるって噂になってんぞ。俺のせいだが……嫌だったか?」
「嫌というか……今まで知らなかったので」
「そうか」
「でも、白木は最近別れたって噂だから……弱ってるところにつけ込むなんてことしたくないかもしれないですけど、白木もいい人だから、きっとすぐに相手を見つけちゃいますよ。早くしないと」
「はぁ……。なぁ、中野。俺はお前が好きだよ。そりゃあ、白木が好きだったことがあるのは認める。だが、今俺が好きだと思ってるのも、愛してると思ってるのも、付き合ってんのも全部お前だ。不安にさせて悪かった。別れるなんて言わねぇで」
「神宮寺さん……。でも」
「俺に不満があるなら言ってくれ。治すようにするから」
「不満なんて俺には。むしろ神宮寺さんの方があるんじゃないですか。最近はスマホばっかり見てるし、話しかけても挙動不審だし、部屋掃除した時に俺の知らないうちに買った服とかパンツとかあったし」
「それは」
青い顔になってるかと思って盗み見た神宮寺さんの顔は真逆で。
首まで真っ赤な顔をしていた。
「その……よ。俺は最初の頃は、男同士のやり方も知らなかったし触り合いとかだけで満足してたんだけどよ。さすがにそれだけじゃ無理っていうか。俺が我慢できなくなったっていうか。でも、やったことないことでお前を傷つけんのも嫌だし。最近はずっとそればっか調べてた。それに、2年も触り合いだけだったのに急に俺がガッツいたらお前、怖がると思って。旅行とか、何か環境を変えてから……と思ってよ」
「聞いてくれたら良かったのに。そんなこと俺が知ってたのに」
「それじゃかっこつかねぇだろ……お前の前でそんな情けねぇとこ見せたくなかったんだよ」
「情けないなんて思わないですよ」
「ああ。お前はそう言うと思ったよ。中野は自分のこと、優しくないって言うけどよ、俺なんかよりよっぽど周り見てるし、優しいやつだと思うよ」
「そんなこと……ないです。俺は道に迷ったおばあさんを助けたりしないし、荷物持ってあげたりしないし、人の落とし物走って追いかけて渡したりしない」
「でも、お前はそれをする俺を嬉しそうに見てるだろ。自分とのデートの時間邪魔されたって怒る人間もいる。だけどお前は俺がそういうことをした後、いつも俺を褒めるだろ」
「それは、神宮寺さんが俺にはできないことするのがかっこいいなって思うから」
「中野は人と話すのが苦手だろ。だから人を助けたくても出来ないだけだろ。でも、お前が道端のゴミ拾ってんのも、白状持った人が階段登ってる後ろ、落ちないように歩いてるのも、痴漢に合ってる女の子の間に入って阻止すんのもお前が誠実なやつだからだと俺は思う。お前のそういう所が好きになった。ずっと一緒にいたいと思った」
「神宮寺さん」
「お前がいまだに白木のこと気にしてるの、気がつかなくてごめん。だが、俺はもう本当にお前しか見てないんだよ」
「俺……、俺、まだ神宮寺さんと居てもいいんですか」
「まだ、じゃない。ずっと一緒に居てくれ」
「はい……ありがとうございます」
「それと……、あれは始まりのせいだけどよ、『付き合ってもらってる』なんて思わねぇで。俺たちは両思いで付き合ってんだ」
「っ、はい……へへ。じゃあお試し交際終了ですね」
「おう。まぁ結構前から俺は本気になってたから、今終了なのは不本意だけどな」
「神宮寺さん、俺、めっちゃ幸せです」
「俺もだよ」
完
俺の座ったところのちょうど真正面の公園から出たすぐのところに、今は珍しいお酒の自販機が見えた。
俺はそこまで歩いて行って2本ビールを買った。
2本とも開けて1本はベンチに置いてそこにもう1本をぶつける。
我ながらキザだなと思った。
「俺と付き合ってくれていた神宮寺さんは死んだ」
だから明日から会社で会う神宮寺さんは全く別の人だ。
「勝手に殺してんじゃねーよ。全く」
後ろから呆れ声で言われた。
「神宮寺さん……どうしてここに……?」
「恋人が変な様子で変なこと行って、急に帰ったら追いかけんのは普通だろ」
「恋人って……だから俺は」
「別れねぇよ」
「え」
「お前が俺と別れたい理由が、白木なんだったら……お前が俺のことを嫌いになったんじゃなかったら、俺はお前と別れる気はねぇ」
「嫌いになんてなるはずないです」
「なら別れねぇ」
「なんで……」
「なんでって。そりゃ中野のことが好きだからだろ」
「だって、今までそんなこと一度も」
「あー。まぁ口にしたことねぇかもな。悪かった。態度で分かってると思ってたんだ。実際会社の奴らには俺が中野のこと好きなのバレてるし」
「え!?」
「知らなかったか? 営業課の神宮寺と中野はできてるって噂になってんぞ。俺のせいだが……嫌だったか?」
「嫌というか……今まで知らなかったので」
「そうか」
「でも、白木は最近別れたって噂だから……弱ってるところにつけ込むなんてことしたくないかもしれないですけど、白木もいい人だから、きっとすぐに相手を見つけちゃいますよ。早くしないと」
「はぁ……。なぁ、中野。俺はお前が好きだよ。そりゃあ、白木が好きだったことがあるのは認める。だが、今俺が好きだと思ってるのも、愛してると思ってるのも、付き合ってんのも全部お前だ。不安にさせて悪かった。別れるなんて言わねぇで」
「神宮寺さん……。でも」
「俺に不満があるなら言ってくれ。治すようにするから」
「不満なんて俺には。むしろ神宮寺さんの方があるんじゃないですか。最近はスマホばっかり見てるし、話しかけても挙動不審だし、部屋掃除した時に俺の知らないうちに買った服とかパンツとかあったし」
「それは」
青い顔になってるかと思って盗み見た神宮寺さんの顔は真逆で。
首まで真っ赤な顔をしていた。
「その……よ。俺は最初の頃は、男同士のやり方も知らなかったし触り合いとかだけで満足してたんだけどよ。さすがにそれだけじゃ無理っていうか。俺が我慢できなくなったっていうか。でも、やったことないことでお前を傷つけんのも嫌だし。最近はずっとそればっか調べてた。それに、2年も触り合いだけだったのに急に俺がガッツいたらお前、怖がると思って。旅行とか、何か環境を変えてから……と思ってよ」
「聞いてくれたら良かったのに。そんなこと俺が知ってたのに」
「それじゃかっこつかねぇだろ……お前の前でそんな情けねぇとこ見せたくなかったんだよ」
「情けないなんて思わないですよ」
「ああ。お前はそう言うと思ったよ。中野は自分のこと、優しくないって言うけどよ、俺なんかよりよっぽど周り見てるし、優しいやつだと思うよ」
「そんなこと……ないです。俺は道に迷ったおばあさんを助けたりしないし、荷物持ってあげたりしないし、人の落とし物走って追いかけて渡したりしない」
「でも、お前はそれをする俺を嬉しそうに見てるだろ。自分とのデートの時間邪魔されたって怒る人間もいる。だけどお前は俺がそういうことをした後、いつも俺を褒めるだろ」
「それは、神宮寺さんが俺にはできないことするのがかっこいいなって思うから」
「中野は人と話すのが苦手だろ。だから人を助けたくても出来ないだけだろ。でも、お前が道端のゴミ拾ってんのも、白状持った人が階段登ってる後ろ、落ちないように歩いてるのも、痴漢に合ってる女の子の間に入って阻止すんのもお前が誠実なやつだからだと俺は思う。お前のそういう所が好きになった。ずっと一緒にいたいと思った」
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「俺……、俺、まだ神宮寺さんと居てもいいんですか」
「まだ、じゃない。ずっと一緒に居てくれ」
「はい……ありがとうございます」
「それと……、あれは始まりのせいだけどよ、『付き合ってもらってる』なんて思わねぇで。俺たちは両思いで付き合ってんだ」
「っ、はい……へへ。じゃあお試し交際終了ですね」
「おう。まぁ結構前から俺は本気になってたから、今終了なのは不本意だけどな」
「神宮寺さん、俺、めっちゃ幸せです」
「俺もだよ」
完
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