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司とその後6
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今日は休みだったので、夕飯は私が作った。
とは言っても只野さんの作ったものほど美味しくはできないのだけど、それでも只野さんも四葉も「美味しい、美味しい」と食べてくれた。
お風呂も済ませて四葉と一緒にベットに入って絵本を読んでいると、程なくして寝息が聞こえ始めた。
この時間くらいだと、只野さんはまだリビングにいることが多いので、リビングに行ってみると只野さんはノートパソコンを持ち込んで真剣な顔で仕事をしていた。
「ん? どうした?」
入り口で入るのを迷っている間に只野さんがこちらに気がついて、優しげな微笑みをして首を傾げた。
「あの、少しお話したいのですが」
「話? 分かった。お茶を入れてくるから待っててくれ」
「あ、いえ。私が入れてきます!」
「いいから。座っててくれ」
只野さんは私をソファに誘導して座らせてから、キッチンの方に消えていった。
しばらくしてカップとティーポットを乗せたお盆を持って戻ってきた只野さんは、紅茶をカップに入れてくれながら「それで?」と話を促した。
「……あの」
只野さんが好きです。その一言がなかなか言えなくて口籠ってしまう。
只野さんは仕事中で、貴重な時間を私に使ってくれているのに、口から出る言葉は「あの」やら「その」しか出てきてはくれない。
しばらくそうしていると、呆れたのか只野さんがため息をついた。
「あ、す、すみません。お忙しいのに」
「いや、それはいいんだが。もしかして、俺のことが気持ち悪いか?」
突然の問いかけに訳もわからずギョッとして只野さんを見ると、只野さんは「やっぱりな」と呟いた。
「グイグイしすぎたよな。悪かった。私が佐渡のようになれたら気持ち悪がられる事もないんだろうが……」
「えっ、いえ、ちょっと何を言っているのか分からないんですが、只野さんの事、気持ち悪いなんて思ってないです」
「気を使わなくていい。ここを出たいならその分の費用は私が払おう」
「そんな。私はただ、只野さんのことが好きになってしまったと伝えたかっただけなんです。むしろ、気持ち悪いと思われるのは私の方で」
「好き? 私のことをか? 恋愛的な意味で?」
「……はい」
「私が、司から好かれていて気持ち悪いなんて思うわけがない。私も、司が好きだ」
「……ほ、本当に……?」
只野さんは立ち上がって私のソファに近づいてきた。
「ああ。もうずっと、ずっと司を好きだった。出会った頃はもう司は佐渡とべったりで、それでも好きな奴が幸せならそれでいいと、物わかりのいいフリをして側にいたんだ。あの頃、司が死んだと聞いた後も、今までずっと私は司を好きだったよ」
私の前で跪いて、手を包み込むように掴まれた。
「そんな、前から」
「ああ。怖くなったか?」
「いいえ。でも」
「でも、なんだ?」
そんな前から好きだったと言われて、気がつかなかった鈍感さを申し訳なく思った。
でもあの頃、只野さんの心に気がついていたとしても、どうすることもできなかっただろう。
「いえ……。私でいいんですか? 伊月さんと違って私は子供を産めませんし」
「司がいいんだ。それに、子供なら四葉くんがいる。俺を四葉くんの父親にしてくれないか? ……もちろん、四葉くんがOKしてくれたらだが」
只野さんの真剣な瞳が、不安で揺れているのを見て、本当に私のことを好きでいてくれているんだと思った。
「おいさんが、僕のパパになってくれるの?」
「四葉っ、起きたの?」
声がした方を向くと、四葉がリビングの扉の前に立っていた。
「ああ」
只野さんは立ち上がり、四葉に近づくと抱き上げて顔を合わせた。
「私は、四葉くんのお父さんになりたいと思っているんだが、なってもいいか?」
四葉はニコっと笑ってから只野さんに抱きついた。
「いいよ……僕、そうなればいいなって思ってたんだ」
「ありがとう、四葉く……四葉。じゃあ、今日は3人で一緒に寝ようか」
「うん!」
「えっ、只野さん仕事は大丈夫ですか?」
「ああ、今日の分はもう終わった。実は寝室は準備してある」
そう言って案内された部屋には、キングサイズのベットが一つ置かれていた。
3人で横になっても十分に余裕がある大きなベットを見て、四葉は大はしゃぎして早速真ん中を陣取った。
「良かったよ。一人虚しくこの広さのベットに寝ることにならなくて」
只野さんは冗談なのか本気なのかそんなことを笑って言って、四葉の隣に横になった。
私も四葉を挟んで横になると、幸せがこみ上げてくる。
「こんなふうに、家族と川の字になって寝るのって夢だったんです」
「私もこんな経験はないな。司と四葉のおかげで、今まで知らなかった幸せを知ることが出来た」
只野さんは、ふふっと笑ってそう言って四葉の頭を撫でている。
四葉は満足そうな寝顔ですっかり眠っていた。
とは言っても只野さんの作ったものほど美味しくはできないのだけど、それでも只野さんも四葉も「美味しい、美味しい」と食べてくれた。
お風呂も済ませて四葉と一緒にベットに入って絵本を読んでいると、程なくして寝息が聞こえ始めた。
この時間くらいだと、只野さんはまだリビングにいることが多いので、リビングに行ってみると只野さんはノートパソコンを持ち込んで真剣な顔で仕事をしていた。
「ん? どうした?」
入り口で入るのを迷っている間に只野さんがこちらに気がついて、優しげな微笑みをして首を傾げた。
「あの、少しお話したいのですが」
「話? 分かった。お茶を入れてくるから待っててくれ」
「あ、いえ。私が入れてきます!」
「いいから。座っててくれ」
只野さんは私をソファに誘導して座らせてから、キッチンの方に消えていった。
しばらくしてカップとティーポットを乗せたお盆を持って戻ってきた只野さんは、紅茶をカップに入れてくれながら「それで?」と話を促した。
「……あの」
只野さんが好きです。その一言がなかなか言えなくて口籠ってしまう。
只野さんは仕事中で、貴重な時間を私に使ってくれているのに、口から出る言葉は「あの」やら「その」しか出てきてはくれない。
しばらくそうしていると、呆れたのか只野さんがため息をついた。
「あ、す、すみません。お忙しいのに」
「いや、それはいいんだが。もしかして、俺のことが気持ち悪いか?」
突然の問いかけに訳もわからずギョッとして只野さんを見ると、只野さんは「やっぱりな」と呟いた。
「グイグイしすぎたよな。悪かった。私が佐渡のようになれたら気持ち悪がられる事もないんだろうが……」
「えっ、いえ、ちょっと何を言っているのか分からないんですが、只野さんの事、気持ち悪いなんて思ってないです」
「気を使わなくていい。ここを出たいならその分の費用は私が払おう」
「そんな。私はただ、只野さんのことが好きになってしまったと伝えたかっただけなんです。むしろ、気持ち悪いと思われるのは私の方で」
「好き? 私のことをか? 恋愛的な意味で?」
「……はい」
「私が、司から好かれていて気持ち悪いなんて思うわけがない。私も、司が好きだ」
「……ほ、本当に……?」
只野さんは立ち上がって私のソファに近づいてきた。
「ああ。もうずっと、ずっと司を好きだった。出会った頃はもう司は佐渡とべったりで、それでも好きな奴が幸せならそれでいいと、物わかりのいいフリをして側にいたんだ。あの頃、司が死んだと聞いた後も、今までずっと私は司を好きだったよ」
私の前で跪いて、手を包み込むように掴まれた。
「そんな、前から」
「ああ。怖くなったか?」
「いいえ。でも」
「でも、なんだ?」
そんな前から好きだったと言われて、気がつかなかった鈍感さを申し訳なく思った。
でもあの頃、只野さんの心に気がついていたとしても、どうすることもできなかっただろう。
「いえ……。私でいいんですか? 伊月さんと違って私は子供を産めませんし」
「司がいいんだ。それに、子供なら四葉くんがいる。俺を四葉くんの父親にしてくれないか? ……もちろん、四葉くんがOKしてくれたらだが」
只野さんの真剣な瞳が、不安で揺れているのを見て、本当に私のことを好きでいてくれているんだと思った。
「おいさんが、僕のパパになってくれるの?」
「四葉っ、起きたの?」
声がした方を向くと、四葉がリビングの扉の前に立っていた。
「ああ」
只野さんは立ち上がり、四葉に近づくと抱き上げて顔を合わせた。
「私は、四葉くんのお父さんになりたいと思っているんだが、なってもいいか?」
四葉はニコっと笑ってから只野さんに抱きついた。
「いいよ……僕、そうなればいいなって思ってたんだ」
「ありがとう、四葉く……四葉。じゃあ、今日は3人で一緒に寝ようか」
「うん!」
「えっ、只野さん仕事は大丈夫ですか?」
「ああ、今日の分はもう終わった。実は寝室は準備してある」
そう言って案内された部屋には、キングサイズのベットが一つ置かれていた。
3人で横になっても十分に余裕がある大きなベットを見て、四葉は大はしゃぎして早速真ん中を陣取った。
「良かったよ。一人虚しくこの広さのベットに寝ることにならなくて」
只野さんは冗談なのか本気なのかそんなことを笑って言って、四葉の隣に横になった。
私も四葉を挟んで横になると、幸せがこみ上げてくる。
「こんなふうに、家族と川の字になって寝るのって夢だったんです」
「私もこんな経験はないな。司と四葉のおかげで、今まで知らなかった幸せを知ることが出来た」
只野さんは、ふふっと笑ってそう言って四葉の頭を撫でている。
四葉は満足そうな寝顔ですっかり眠っていた。
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