僕はナイチンゲール

いちみやりょう

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結繋

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只野さんと司さんが付き合い始めたと聞いて、僕は本当に嬉しかった。
只野さんはやっぱりずっと司さんのことが好きだったというし、司さんも只野さんのことが大好きなのが分かって、見ていて僕まで幸せな気持ちになる。

最近の僕は2人目の出産を間近に控えて、銀次さんの経営する病院に通っている。

『向こうの病院に通うと、移動時間に会えないのが悔しいんだよ』

というのは銀次さんの言った言葉で、銀次さんは僕が繋心を産んでからの5年ちょっとの期間に次の子が出来たときのために自分の病院に産婦人科を作り僕の担当医を引き抜いていた。

「伊月くんがここに居てくれると、佐渡先生の機嫌がいいから嬉しいわ」

看護師の田中さんが検査のための準備をしながらそう言った。

「そうなんですか? でも銀次さん大体いつもニコニコしてませんか?」
「上っ面の笑顔より、本当の笑顔の方が嬉しいの。この病院ができた当初からこの病院に勤めてるけど、あんなに楽しそうなのは伊月くんが居る時くらいよ」
「そうなんですか。でも銀次さんが楽しいなら、僕も嬉しい」
「ああ。どうしてそんなに可愛いの! 佐渡先生が羨ましい」
「あはは。三十路の男にそんなこと言ってくれるの田中さんだけですよ」

そう笑っていると、突然後ろからふわりと抱きつかれた。

「俺がいつも言ってるでしょ。伊月くん可愛いって」
「銀次さんっ! もうお仕事は平気なんですか?」
「ああ。俺が居なきゃいけないのは終わらせてきた。定期検診の参加は父親である俺の権利だからね」

ニコニコと嬉しそうに言ってくる銀次さんは、早くもお腹の中の子の親バカになっているらしい。

「じゃ、先生呼んできます」

看護師さんはなぜか胸焼けがしたような顔をしてそそくさと出ていってしまった。

「名前どうしましょうか」
「うん。実は考えたんだけど結繋ゆつなはどうかな? 心を繋げて、縁を結んで、大切な人と幸せになれるように」
「結繋……素敵です。それに繋心も自分と同じ字が入ってて喜ぶかも」
「妹ができるって今すごく張り切ってるからね」

銀次さんはそう言って困った顔で笑った。
繋心はお腹の中にいる赤ちゃんが妹だと知ると、それはそれは喜んだ。
生まれる頃には6歳になる繋心と、結繋とは6歳も差ができてしまうので銀次さんと一緒になって甘やかしすぎないかが今から不安だ。

この間、只野さんご一家と一緒に、四葉くんと繋心のランドセルを買いに行った時なんかは、自分のランドセルをピンク色にしようとしていたくらいの浮かれっぷりで、繋心が本当にその色がいいと思っているのなら、そのランドセルでも良かったのだけど、結局は四葉くんの説得で四葉くんとお揃いの紺色のランドセルに決まった。

そして、お産の兆候が見られ、1週間前に入院してから銀次さんは時間が空く時は必ず病室に来てくれていたので今度の陣痛も銀次さんといる時に始まった。

前回はオロオロと応援してくれていたけど、今回はしっかりと手を握り、もう片方の手で腰をさすりながら声をかけてくれ、辛い中にも安心感がある。

それからどれくらい痛みに耐えたのか分からないけど、無事に結繋の産声が上がった。

担当医の松岡先生が結繋を僕の胸の上に乗せてくれると、やっぱり会えた嬉しさで涙が出てきた。

「伊月くん、よく頑張ったね。ありがとう……」

銀次さんも嬉しそうに僕の胸に乗る結繋を見た。

「結繋は、伊月くんに似たかも。今から変な虫がつかないか不安なくらい美人だね」
「ふふ。それは気が早いです」

結繋の元気な様子に安心して、銀次さんの冗談に笑うと、急激に眠気が襲ってきた。

「おやすみ、伊月くん」

銀次さんから子供を寝かしつけるような声で言われると、睡魔に抵抗することは一瞬もできずに、僕はすぐに眠りについた。
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