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エスト公国にて
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しおりを挟む昔々、と言っても彼此10年ほど前、1人の男がいた。男は先代より男爵の位を継承したばかりであり、自分の将来に不安を感じていた。果たして自分は、その役割にふさわしいのか、この役割か務まるのか、これから先、先代のように立派に役目を全うできるのか……とそんな不安を抱えていた。
そんな折、男の元に舞い降りたのが、リュミエール王国への訪問。使節団の一人として、男はリュミエール王国へと赴く重要な役割。
男は気が弱かった。ただでさえ日々の職務にも精神をすり減らせているというのに、大国リュミエールとの外交を任せられるだなんて。と男の精神はますますすり減るばかり。
あぁ、どうにかこの気持ちから解放されたい。
と願った男がある拾ったのは不思議な石。キラキラと輝き、見る物全てを魅了するその石を拾い上げたその瞬間、男の不安は全て吹き飛んだのだ。代わりにおとずれのは、自信と余裕。
そうその不思議な石が、一瞬にして男の全てを変えたのである。
それより、男は何かがあると石に願った。願えばかなった。それは正に不思議な石の力。
そして、その石の力は近年ますます強くなり………今では
今では、男にも制御不能。と言うのが、確かゲームでのシナリオだった。
そして、それは多分この現実でも変わらない………
現に、男爵は近年力がつき始めている。最初は小さな願いだったものが、ついには人の命を奪うほどまでになっている。
近年、エスト公国の公子が突如として無くなっているというのは、正に石……宝玉が暴走し始めた証拠だろう。
しかしまぁ、よく10年もの間、宝玉が暴走しなかものだ。宝玉は、使用者の願いを叶える、かなえようとしすぎて暴走する。
暴走までの期間は、願いの種類や、その時の状況によってまちまちとされているけれど、10年という月日は、そこそこ長いんじゃないのかなぁと勝手に思うわけだ。
実際、1つめの宝玉は、ポチが使用者となってからそれほどの月日が流れていないのに暴走したし
……あー、いや。でも、まぁ、3つめの宝玉のことを考えれば、そうでもないのかな。まぁ、3つめは特殊と言えば特殊だから、なんとも言いがたいけれど。
男爵の持つ2つ目の宝玉、アネルの母親、あとついでにルイの事と……最近色々とありすぎてなんだかこの先が不安になる。
ゲーム通りな部分もあれば、ゲームとは全く違う部分も多い。
まぁ、ゲーム通りではないって事は、ゲームとは違う結末を迎えることが出来る可能性もあるわけで、悪いことばかりではないのだけれど、それでも不確定の未来というのは、どうしても人を不安にする。いや、未来が不確定っていうのは、一般的には当たり前のことなのか。誰だって、未来はわからない。
むしろ、最悪の結末がわかっているだけ、私は良いのかも知れないな。
「ルーナ、やめてくれない。その辛気くさい顔。朝から気が滅入るんだけど」
ふつふつとわき上がる不安、この先のことを考えながら朝食を、黙々と食べていれば、かけられる声。顔を上げれば、不機嫌そうなアネルが、こちらを睨んでいた。
「朝食がまずくなる。……何をそんなに考えて居るんだよ。」
……そんなに酷い顔をしていたのだろうか。今度から気をつけることとしよう。
「え、あぁ、対した事じゃないから。……ごめんね。」
「は?何それ……僕には話せない事なのかよ。」
……話せないと言うより、話しても信じてくれないだろ?ゲーム通りに進んでないから、不安何だよねとは。
あぁ、勿論、その中にはアネルの母親に関する事も含まれているから、やっぱり話せないのだけれど。
しかし、アネルのこの顔を見るに、話さなくては納得してないのだろう。仕方ない…
「本当に、対したことじゃないから。………そうだな、あえて言えば、このトマトをどうしようかと。」
皿の上にのるトマトをじーと凝視する。別に嘘は吐いてない。トマト、どうしてくれようかと考えていたのもまた事実。
昔から、苦手なんだよね。食感と良い、独特な酸味と良い。サンドイッチに入っていたり、加熱処理を加えた物は食べれるけれど、単体だとどうにも苦手意識が出てくる。
頑張れば食べられなくもないが、でもなー、食べたくないんだよな。
「はぁ!?なに、そんなこと悩んでいたのかよ。……っ。相変わらず、馬鹿だ。馬鹿ルーナ。心配して損した。」
なんかごめん。
「と言うか、未だにトマト苦手だったんだ」
「…あぁ、うん」
多分、いつになっても好きになる事は無いと思う。苦手な物は苦手、無理して好きになる事も無いじゃないか!
無理はよくない。
「……はぁ、いつまで経っても子供かよ。」
そう言って、ぶすっと、私のトマトにフォークを突き立てるアネル。え?と思った瞬間には、既に彼の口の中。
「ア、アネル?」
「なに?文句あるの。」
「いや…」
そうじゃなくて、ちょっとびっくりしただけだ。いつもみたいに馬鹿にされて終わるだけって思っていたから。まさか、食べてくれるとは。
「ありがとう。アネル」
「……別に」
ぷいっと顔をそらしたが、アネルの耳はトマトみたいに染まっていたのを、私は見逃さなかった。
「え、まって。それ本当!?」
「嘘をつく意味なんて無いだろ。」
朝食を食べ終え、今日の予定を共有し合えば、アネルの口から出てきたのは
「今日はメディルさんと別邸に行くことになった」
と言う言葉。
やばい、それは非常にヤバいぞ。なんせ、別邸いるのは、アネルの母親。なるべくというか、絶対に二人を合わせたくない身としては、アネルを別邸に行かせるわけにはいかない。
「あ、あのさぁ。アネル、よかったら、別邸行き。私と変わらない?」
「はぁ?なんでだよ、馬鹿ルーナ」
「それは、あれだよ。うん、あれ!!」
ど、どうしよう。良い言い訳が思いつかない。どうにかして良い言い訳を考えないと。
既に「何言ってんだ、此奴」って感じの目で見てるし、これはやばい。
「なんで?」
なんとも言えない視線が私を貫く。
せめて、別邸に行きたいわけでもあればアネルを納得させられるんだけどなぁ。……ここ、男爵邸ではなくて、別邸に行きたい理由。あぁ、そうだ、あるじゃないか!!
「そう、もしかしたら別館に宝玉があるかも知れないでしょ!」
「は?」
何言ってんのと言いたげなアネルとは、対照的に私はなんとか彼を納得させるための言い訳をひねるひねる。
「ここ数日、屋敷を探しまくったけど、宝玉のありかは未だ不明。だとしたら、ここじゃないどこかにあるはず……まだ、別邸は探してないでしょ?だからさ?ね?」
うん、我ながら上手い言い訳だと思う。流石私!
「まぁ、確かに。……でもさ、それって別にルーナと変わらなくてもよくない?宝玉探し、僕が…お前より上手くやれる自信がある。」
しかし若干まだ納得していない表情のアネル。後一押しといった所なんだけど。
「で、でも、宝玉は勇者とひかれ合うんだよ!!だったら!!私が言った方が確実なんじゃないかなぁ!!メディルさんにも私が言っておくしさ。」
ね?っとたたみかければ、はぁと溜息を吐きながらも
「そ、そこまでお前が言うなら。」
と納得してくれたアネル。
よかった。なんとか危機は回避できた。
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