ヒロインは他に任せて

オウラ

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エスト公国にて

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「と言うわけで、ありまして。すいませんでした!!」
「どういうわけ!そして、すがすがしいほどの土下座!」

 先ほどのメディルさんの様に、頭を地面にこすりつけて謝れば頭上からルイのそんな声が聞こえてきた。

「えっと、ルーナちゃんひとまず頭を上げて。そしてもう一度教えて貰っていいかな?うん、教えてくれる?」
「……ルイーゼちゃん、マジかわゆす!となった私の上司と会ってください。さらに言えば、多分告白されると思うので、なんとかしてください。」
「どうしてそうなった!!」

 それは、その、色々あったから…

「と言うかさ。ルーナちゃん、この前、俺になんて言ったけ」

 な、なんて言ったかな?わ、忘れちゃったな。

「変な男に、つきまとわれたら守ってくれる的な事を言ったよね?」

 そう言えば、そんなことも言ったかな。……、はい!!言いました、言いました。だからそんな目で私を見ないで。

「言っていることと、やっていることが違うよね?ねぇ!!」
「返す言葉もございません。」

 そうだよね。どんな理由があるにせよ、この前、ちゃんと守るって言ったのに、むしろ逆の行動をとるなんて、人として最低だ。

「……まぁ、詳しく話を聞いてみれば、俺を紹介せざる終えない状況だったから、仕方の無い状況だったんだろうけど。」

 いやいや、それでも、守るって言ったのは私だ。

「はぁ、仕方ないか。会うよ、そのルーナちゃんの上司に。まぁ、俺は、さらさらそっちの趣味はないから。断るつもりばんばんだけど。」

 うぐぐぐ、改めて考えると中々私って酷い事をしてないか。約束を破って、あまつさえ迷惑をかけるという。勇者として、人として、それってどうなんだ!!良くないだろ。なんとかして、ここは挽回せねば。

「ルイーゼちゃん、いえ、ルイ殿。このたびは本当にすいませんでした。」
「もういいよ。そりゃ、多少はイラッときたけど、仕方の無かったことだし。まぁ、今度から、ちゃんと相談さえしてよね。今回のことは、もう忘れちゃっていいから」
「そう言う訳には、いかないんです。約束を守れなかった事、ちゃんと償わせてください。」
「う、うん!?」

 ぐっと、ルイの近くに身体を乗り出す。

「ルイ殿が、ルイーゼちゃんが、ちゃんとメディルさんの告白を断ることができるように協力します。私ができることなら、何でもします。今度こそ、ちゃんと守らせてください。」

 そう言って、彼の手をぎゅっと握る。うむ、男の手と言っても、剣を握っていないこの手は、細くて柔らかい手だ。大きいけれど、何というか私の手とは、全然違う。


「ル、ルーナちゃん?」
「……綺麗な手をしていますね。私、こういう手好きですよ。」
「ル、ルーナちゃん!!!君は、何!?誑しなの!?天然たらしなの!?」

 失礼な!誑しなのは、女性に対して軽いのは貴方の法じゃないですか。何を言っているんだ。まったく、自分の事を棚に上げて、人を誑し呼ばわりするなんて。


「違います。私は、思った事をいっただけ。大体女誑しの貴方だけには、言われたくないです。この性職者。むしろ、性食者」
「いやいや、じゃあこの手はなに!?そして、さっきのセリフは何?これを天然誑しと言わずとして、なんて言うの。」

 いやぁ、これはあれだよ。あれ、つい?というかその場の勢いで?みたいな?というか、そもそも、そもそもね。

「今のルイ殿の格好は、完全に女の子なので。別に、同性の手を握るのも、褒めるのも特に問題ないかなっと……」
「つまり、異性としては全く意識していないと」
「そうですね。」

 きっぱり、即答すれば、もの凄い勢いでうなだれるルイ殿。両の手で顔を隠し、なんだか今にも泣きそうだ。

「俺これでも、王都にいたときはブイブイ言わせていたんだよ。それこそ、女の子にモテモテだったんだけど」
「まぁ、性食者ですもんね。女にだらしなかったとも言いますが」
「酷い!!その通りだけど」
「すみません、つい本音が……」

 どうやら、彼の自尊心を傷つけてしまったらしい。流石に言い過ぎた。と言うか、たとえ、思っていても言っていいことと行けないことがある。それに、今回は多大なる迷惑をルイにかけてもいるんだ。その点を踏まえても失礼すぎるぞ、私!!

「えっと、ルイ殿。異性として意識してないのは、その格好だからですよ。」
「いいよ。今更、そんな風にフォローしなくても。大体、元の格好は、格好でルーナちゃん手厳しいし?あーあ、嫌になる。」

 時はもう既に遅し、もう何を言っても通じないだろう。ルイはもう完全に拗ねている。人間こうなってしまっては、どう頑張っても機嫌はすぐに戻らない。さて果て、どうするべきか。
 致し方ない、こうなったら最終手段。


「ルイ殿、今度美味しい食べ物でもおごりますよ。だから、機嫌を直してください」

 THE・食べ物でつる大作戦。機嫌が悪い相手にはこれが一番。あのアネルだって、好きな物をチラつかせると素直になるくらいの手法である。

「……ルーナちゃん、まさか子供じゃあるまいし、そんなもので機嫌が良くなると思っていたの」
「え!なりませんか?」

 ならない?美味しい物、好きな物を奢ってもらえるなら、めっちゃ機嫌良くなるよ。

「美味しい物は、食べるだけで元気になりますし、それをただで食べれるなんて、最高じゃないですか。」
「君って、本当に……いや、そこが君の良いところか。」

 何だろうか、若干馬鹿にされた気分。

「まぁ、いいや。そうだな、せっかくだから、その提案呑んでみようかな。でも、何かを奢って貰うんじゃなくて、君の、ルーナちゃんの手料理を食べてみたい。」
「はぁ、手料理ですか?別に良いですけど、私別段、料理がうまいわけでもないですよ」

 驚くほど下手というわけでもないが、食べて絶賛されるレベルでもない。至って普通の腕前だ。それに、せっかく食べるなら、美味しいプロの作った物の方が良いんじゃないだろうか。

「良いんだよ。君のが、食べてみたいんだから。」
「……ルイ殿って、本当にさらっとそう言う言葉を吐きますよね。」
「えー、そんなことないよ。」

 いやいや、女の子大好きな君はいつも女性を口説いているじゃないか。

「それに、誰かの手料理を食べたいなんて言ったのは、ルーナちゃんが初めてだよ。」

 と言いつつ、きっと誰にでも言っているのだろう。あぁ、恐ろしや。流石、性食者。

「はいはい、そうですか。とても、光栄です。」
「酷いな。信じてないよね、その反応」

 だったら、ちゃんと信じられるような行いをしろよ。























「あ、そうそう。思い出した。ルーナちゃん、話は変わるけどね、君に話そうと思っていたことがあるんだ。」
「なんですか?」
「実はさ、今日アネル君そっくりの女の人に会ったんだよ。びっくりしちゃって」
「……え」

 アネルにそっくりな女の人。いや、まさかとは思うけど、この前のことがあった手前だ。確実に、あの人のことを言っているのだろう。アネルに似ている女性なんて、多分、彼奴の母親だけだ。あの人は、今この街にいるから、偶々見かけても可笑しくないだろうし。

「いや、世の中にそっくりな人は3人はいるって言うけど、異性でもいるんだね。そっくりさん。アネル君は元がいいけど、あの人も美人だったなぁ。」

 しかし、これはヤバいことになったな。一度鉢合わせしたとは言え、これ以上アネルと彼女を会わせたくない。幼馴染みとして、彼奴の家族として、私はこれ以上、アネルがあの人に会って傷つく姿は見たくない。例えそれが余計なお世話だとしても、会わせたくない。

「そんな偶然あるんですね。……参考までに、その人とどこで会ったか教えて貰ってもいいですか?」

 彼女が出没した場所を避ければ、少しはエンカウント率も下げることができるだろう。まぁ、今はこの男爵邸を中心として生活しているから、会うって事も少ないのだろうけど

「え?あぁ、えっと、離れというか、別邸?にあたる住居で見かけたんだ。」
「別荘?」
「そう、ここよりも市街地に近い場所に男爵が所有している、比較的簡素な家があるんだよ。何でも、その人は男爵の愛人で、色々あって本邸には住めないから、今はそこにいるみたい。俺は、偶々、メイド長とそこに行ったから、見かけることができたんだけど……」

 あぁ、なるほど。そういうことだったのか。今の彼女の旦那とは、男爵の事で、男爵のせいで、アネルは母親に捨てられてしまったのか。あぁ、それは、何というか。知りたく無かった事実。そして、絶対に気づかせたくない事実だ。

「ルーナちゃん、真剣な顔をしてどうしたの?」

 流石に考え込みすぎて、それが顔に出てしまったよう。でも、これは、流石にぺらぺらと話す内容ではない。

「いや、そんなことも。あるんだなと思っていたんです。……あ、そうだ。ルイ殿、そのこと、アネルには絶対に言わないでくださいよね。」
「え、いいけど。また、なんで?」
「だって、そりゃ、自分に似た赤の他人・・・・が、男爵の愛人なんて気持ちの悪い話、誰だって聞きたくないですよ。」
「あぁ、そうだね。」

 ひとまず、これは、私だけの秘密にしておこう。
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