4 / 50
出発前
4
しおりを挟む
ヒロインを他に任せると言う画期的なアイデアを思いついた私は、その後安心したのか朝までぐっすりと寝てしまった。
鳥の鳴く声、窓から差し込むまぶしい朝日によって目が覚める。ふと、視線を横へずらせば、昨日私が手に入れた聖剣が目に入った。あぁ、昨日のことは夢ではなかったんだな。と急に勇者になってしまったと言う事が現実味を帯びてくる。死ぬかもしれない、未来に怯える。
でも、まぁ、いつまでも、うじうじしているわけにはいかない。ばっと勢いよく体を起こし、バシッと顔をたたいてやる気をだす。国を救うため、死なないようにするため、今日から頑張っていくことにしよう。そんな思いで身支度をすませた
城の従者が私を迎えにくるまでの間、私は家族で仲良く過ごした。いつも通りの会話、旅の無事を祈る会話など、多くのことを話した。途中、母さんが泣き出してしまった為、私も若干泣きそうになった。が、なんとかぐっとこらえることにした。こんなところで泣いている場合じゃない。泣くのは、そう。最後までとっておくとしよう。願掛け的な意味を込めて。
「ルーナこれ、大切に持っていなさい」
城の従者が我家に私を迎えに来て、さぁ、いよいよか、と言ったとき母さんが差し出したのは青い宝石の首飾り。宝石は小さいながらにも、きらきらと美しく輝いている。
「これは、私が母から受け継いだもの、母もまた祖母から受け継いだ私の家に伝わる宝よ。それに、これには護身魔法がかかっているから、多少は貴方の身を守ってくれると思うわ。……だから無事に帰ってきてね」
「ありがとう、母さん」
「えぇ…」
首飾りを受け取り、それをつければなんとなく何かに守られているような気がした。流石、代々伝わる家宝なだけある。
「勇者殿、そろそろお時間です。こちらにお乗り下さい」
残念、名残惜しいが、もう時間らしい。
「じゃあね。母さん、父さん。帰ってきたら、母さんのビーフシチュー食べたいから、用意しておいてね」
そう言って、城へと向かう馬車に乗り込む。後ろの方から
「ええ、とっておきのを作るから、必ず帰ってくるのよ」
「気をつけて行ってこい」
と言う声がしたが、振り返ることはしなかった。だって振り返ったら、旅に出ると言う決意が揺らいでしまう気がしたから。
城に到着したと思えば、早速私は旅のメンバーになる彼らのところに案内された。彼らがいる部屋に行く途中、物珍しさに興味が引かれ、案内してくれた侍女にいかにも「意地汚い庶民が」と言う目で見られたが気にしてはいけない。だって事実、目の前にいる侍女よりも育ちも身分も悪いのだ。城につとめる侍女は貴族の血が流れている場合がある。と言うのも、令嬢達がよりよい結婚相手を見つけるためだったり、嫁入り前の修行として城で侍女を勤めることがあるためだ。まぁ、そういった侍女達の仕事は、王族の世話、国賓の給仕、賓客の相手、城勤めするお偉いさん達のお手伝いとある程度教養がないとできない仕事が多い。故に、(賓客扱いであろう)私の案内を任せられている彼女も、貴族の血が流れている侍女の一人なのだろう。目の前の彼女は私よりも身分の高い貴族様、対して私は庶民。けして裕福とは言えない家で育った本来このような場所とは縁もゆかりもない人間だ。城下町といっても外れのほうにある下町で、育った私がそんな城にいつもいる方々のような振る舞いができるわけない。
まあ、例え私が上品な振る舞いができたとしても、目の前の侍女は私のことが気に入らないんだろうけど。きっと、貴族であるプライドが、庶民である私の相手をするのを許さない
「勇者様と聞いてどんな方かと思いましたが、少し残念ですわ。貴方と旅をなされるあの方々が哀れに思えます」
部屋の前に到着した瞬間、若干キツい言葉をもらうが、気にしてはいけない。だってそれは事実であるから。まぁ、それでも、何かしら言い返すことくらいは良いだろう。反論はできないが、嫌みくらいなら返せる。
「そうですね、侍女様。私は気品も教養もない、頭の悪い人間です。でも、まぁ、教養があっても口が悪い、性格が悪い、そんな貴方よりましな人間ですよ。私は」
にこりと笑いながらそう言い返せば、侍女は真っ赤にさえ今にも声を荒げて怒り狂い出しそうな顔をする。しかし彼女は大声で怒り出すことはできないだろう。この扉の向こうには、旅のメンバーがいる、彼女の言うところの高貴なお方がいるのだ。流石に、ここで怒り出すほどこの侍女も馬鹿ではないだろう
「あんた!!!あんた!!庶民のくせに、この私に逆らうというの!!貴族である私に。たかが偶然で勇者に選ばれた庶民が、この私に、逆らうって言うの」
馬鹿ではないだろう……と思ったが、そうでもなかったらしい。パシーンという音共に左頬が熱を持つ。ひりひりと痛む。ふと頭によぎったことは、この侍女、すげぇぇぇと言うこと。
そもそも私が立っているのは高貴な方々がおられるという部屋の前。しかも私は現在腰に聖剣を携えている勇者だ。別に勇者が偉いだどうだと言うつもりはない。が少なくともこちらは剣を持った相手なのだ。怒鳴って、手を出して……なんて事をしたら、この剣でズバッと切られることはないとしても、脅されるかもしれないなんて考えないのかな。……いや、考えつかなかったからこうして私は叩かれたのか。
そのままぼーっと目の前の侍女の怒鳴り声を聞いていれば、わらわらと人が集まってきた。私=勇者という認識が残念ながらまだ城の人たちに行き届いていないため
「彼奴、あの怒られている奴誰だ?」
「もしかして、あの部屋の前にいるから、例の勇者様じゃ……」
「いやいや。流石に違うだろ。あの侍女もそこまで馬鹿じゃないだろ。仮にそうだとしたら……彼奴もう城でやっていけないだろ」
なんて声がちらほらと聞こえてくる。いやいや、そこの人たちそうなんですよ、私勇者なんですよ。と心で思っても届くわけがなく、このまま侍女の怒鳴り声が続くかに思われた……
「うるさいですよ。一体何の騒ぎですか?」
がどうやら救いの手が差しのばされたらしい。
扉の向こうから現れたのは攻略キャラの1人。ディルク・ブロテンガだった。
鳥の鳴く声、窓から差し込むまぶしい朝日によって目が覚める。ふと、視線を横へずらせば、昨日私が手に入れた聖剣が目に入った。あぁ、昨日のことは夢ではなかったんだな。と急に勇者になってしまったと言う事が現実味を帯びてくる。死ぬかもしれない、未来に怯える。
でも、まぁ、いつまでも、うじうじしているわけにはいかない。ばっと勢いよく体を起こし、バシッと顔をたたいてやる気をだす。国を救うため、死なないようにするため、今日から頑張っていくことにしよう。そんな思いで身支度をすませた
城の従者が私を迎えにくるまでの間、私は家族で仲良く過ごした。いつも通りの会話、旅の無事を祈る会話など、多くのことを話した。途中、母さんが泣き出してしまった為、私も若干泣きそうになった。が、なんとかぐっとこらえることにした。こんなところで泣いている場合じゃない。泣くのは、そう。最後までとっておくとしよう。願掛け的な意味を込めて。
「ルーナこれ、大切に持っていなさい」
城の従者が我家に私を迎えに来て、さぁ、いよいよか、と言ったとき母さんが差し出したのは青い宝石の首飾り。宝石は小さいながらにも、きらきらと美しく輝いている。
「これは、私が母から受け継いだもの、母もまた祖母から受け継いだ私の家に伝わる宝よ。それに、これには護身魔法がかかっているから、多少は貴方の身を守ってくれると思うわ。……だから無事に帰ってきてね」
「ありがとう、母さん」
「えぇ…」
首飾りを受け取り、それをつければなんとなく何かに守られているような気がした。流石、代々伝わる家宝なだけある。
「勇者殿、そろそろお時間です。こちらにお乗り下さい」
残念、名残惜しいが、もう時間らしい。
「じゃあね。母さん、父さん。帰ってきたら、母さんのビーフシチュー食べたいから、用意しておいてね」
そう言って、城へと向かう馬車に乗り込む。後ろの方から
「ええ、とっておきのを作るから、必ず帰ってくるのよ」
「気をつけて行ってこい」
と言う声がしたが、振り返ることはしなかった。だって振り返ったら、旅に出ると言う決意が揺らいでしまう気がしたから。
城に到着したと思えば、早速私は旅のメンバーになる彼らのところに案内された。彼らがいる部屋に行く途中、物珍しさに興味が引かれ、案内してくれた侍女にいかにも「意地汚い庶民が」と言う目で見られたが気にしてはいけない。だって事実、目の前にいる侍女よりも育ちも身分も悪いのだ。城につとめる侍女は貴族の血が流れている場合がある。と言うのも、令嬢達がよりよい結婚相手を見つけるためだったり、嫁入り前の修行として城で侍女を勤めることがあるためだ。まぁ、そういった侍女達の仕事は、王族の世話、国賓の給仕、賓客の相手、城勤めするお偉いさん達のお手伝いとある程度教養がないとできない仕事が多い。故に、(賓客扱いであろう)私の案内を任せられている彼女も、貴族の血が流れている侍女の一人なのだろう。目の前の彼女は私よりも身分の高い貴族様、対して私は庶民。けして裕福とは言えない家で育った本来このような場所とは縁もゆかりもない人間だ。城下町といっても外れのほうにある下町で、育った私がそんな城にいつもいる方々のような振る舞いができるわけない。
まあ、例え私が上品な振る舞いができたとしても、目の前の侍女は私のことが気に入らないんだろうけど。きっと、貴族であるプライドが、庶民である私の相手をするのを許さない
「勇者様と聞いてどんな方かと思いましたが、少し残念ですわ。貴方と旅をなされるあの方々が哀れに思えます」
部屋の前に到着した瞬間、若干キツい言葉をもらうが、気にしてはいけない。だってそれは事実であるから。まぁ、それでも、何かしら言い返すことくらいは良いだろう。反論はできないが、嫌みくらいなら返せる。
「そうですね、侍女様。私は気品も教養もない、頭の悪い人間です。でも、まぁ、教養があっても口が悪い、性格が悪い、そんな貴方よりましな人間ですよ。私は」
にこりと笑いながらそう言い返せば、侍女は真っ赤にさえ今にも声を荒げて怒り狂い出しそうな顔をする。しかし彼女は大声で怒り出すことはできないだろう。この扉の向こうには、旅のメンバーがいる、彼女の言うところの高貴なお方がいるのだ。流石に、ここで怒り出すほどこの侍女も馬鹿ではないだろう
「あんた!!!あんた!!庶民のくせに、この私に逆らうというの!!貴族である私に。たかが偶然で勇者に選ばれた庶民が、この私に、逆らうって言うの」
馬鹿ではないだろう……と思ったが、そうでもなかったらしい。パシーンという音共に左頬が熱を持つ。ひりひりと痛む。ふと頭によぎったことは、この侍女、すげぇぇぇと言うこと。
そもそも私が立っているのは高貴な方々がおられるという部屋の前。しかも私は現在腰に聖剣を携えている勇者だ。別に勇者が偉いだどうだと言うつもりはない。が少なくともこちらは剣を持った相手なのだ。怒鳴って、手を出して……なんて事をしたら、この剣でズバッと切られることはないとしても、脅されるかもしれないなんて考えないのかな。……いや、考えつかなかったからこうして私は叩かれたのか。
そのままぼーっと目の前の侍女の怒鳴り声を聞いていれば、わらわらと人が集まってきた。私=勇者という認識が残念ながらまだ城の人たちに行き届いていないため
「彼奴、あの怒られている奴誰だ?」
「もしかして、あの部屋の前にいるから、例の勇者様じゃ……」
「いやいや。流石に違うだろ。あの侍女もそこまで馬鹿じゃないだろ。仮にそうだとしたら……彼奴もう城でやっていけないだろ」
なんて声がちらほらと聞こえてくる。いやいや、そこの人たちそうなんですよ、私勇者なんですよ。と心で思っても届くわけがなく、このまま侍女の怒鳴り声が続くかに思われた……
「うるさいですよ。一体何の騒ぎですか?」
がどうやら救いの手が差しのばされたらしい。
扉の向こうから現れたのは攻略キャラの1人。ディルク・ブロテンガだった。
0
あなたにおすすめの小説
妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。
彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。
公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。
しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。
だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。
二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。
彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。
※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。
冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる