ヒロインは他に任せて

オウラ

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世の中には逆ハーという現象がある。正確には逆ハーレム。意味はそのまま、ハーレムの逆バージョン。ハーレムが男が多くの女にモテる状態をさすなら、逆ハーレムは女が多くの男にモテる状態を指す。女の子なら多分誰もが憧れる、そんな状況。具体的には


「セシル、貴女という人は全く。遅刻するなんて言語道断ですよ」
「ごめん、ディルク。ちょっと色々あったの」
「ディー君の事なんか気にしなくていいよ。セーちゃん。そんな事より今日もかわいいね。」
「ルイ、冗談でも好きでもない子にそんなこと言ったらダメだよ」
「えー、俺はセーちゃんの事が一番好きだよ。」
「ルイ、お前またそんなこと言って……ところで、セシル。色々あったと言っていたが、その用事は終わったのかい?」
「うん、終わったよ。アーサー」
「そうか、あぁ、今みんなでお茶をしていたところなんだ。セシルの分も用意させよう」
「ありがとう、アーサー。……そうそう、アネル。この前はありがとね、助かったよ」
「べ、別にお礼言われる事なんてしてませんし。あれは僕がやりたかった事なんで!貴方の為じゃないんで」


 具体的には、多分こんな状態のことを逆ハーレムっていうんだろうなぁ。………うん。
 
 セシルが部屋には入ってくるなり、彼ら攻略キャラ達はセシルと会話をし始めた。もちろん、私はその会話には入れない。それはまるで、女子の作り上げる仲良しグループ。入る隙は無い。



 そもそも私の記憶が正しければ、ゲームでのセシルは、こんな風にモッテモテではなかった。それもそのはず、だってセシルは、本来ならば、というかそもそもヒロインではない。どちらかというとモブキャラに属するキャラクター。そんなモブキャラがヒロインよりもモッテモテだったらゲームは成り立たないわけで、つまるところあの状況はちょっとした違和感を感じるのだ。

 ……まぁ、私の本来の目的は彼女を私の代わりにヒロインにする事なので、この状況どちらかというと嬉しいのだが、私の死亡ルートを回避する可能性がぐんと上がって嬉しいのだが、でもやっぱりこう、なんとなーく違和感を感じる。……………まさか、とは思うけどセシルも転生者って事は…………ないよね。
 まぁ、ぶっちゃけ、転生者でも、そうでなくても、私が死ななければ、そればどうでもいいんだけれど………



 チラリと、彼女達の方を見れば、とても楽しそうにも会話をしている。やっぱり、どこをどう見ても私のは居る隙は無い。


 うん、やっぱり良くないよ!!この状態は!絶対に良くない!!いや、別に彼らとすっごく仲良くなるつもりはないんだけど、この状態は流石にきつい。なんで、楽しそうな奴らを横目に世界を救わなくちゃいけないんだよ!私も構って欲しいとか贅沢は言わない。せめて、会話に混ぜろよ!仲間はずれ良くない、なに?いじめ?新しいいじめかな?いじめよくない、かっこ悪い!!!

 はぁ、とため息をついて、目の前のお茶を口にする。流石は城のお茶。きっと最高級の茶葉を使っているのだろう。庶民のものとは比べものにならないくらい美味しかった。が、心はとっても傷ついた、そんな気がした。



 さて、そんなこんなで親睦を深められなかった親睦会が終わり、私は、勇者のために用意された部屋に案内された。因みに、他のメンバーは、仲良く夕食を取るそうだ。………対して私はそれに誘われず、ぼっちで夕食(まぁ、仲良しこよしで食べる方がいいもんね。旅をしている間はは仲良しこよしで食べれないもんね!)
 言っておくが、別に寂しくなんてない。むしろ、ぼっち飯を楽しんだもんね。
 あー、お城の料理は美味しいなぁ。特にこのお肉なんて、絶品。最高級霜降り肉じゃん。こんな料理を独り占めできるなんて、なんて幸せなんだろうなー。…………あー、虚しい。














 夕食を食べ、お城のお偉いさんに明日の予定を聞き、お風呂に入った私は、すっかり就寝モード。用意された無駄にでかい部屋の無駄にでかいベッドの上でゴローンと横になる。

 お偉いさんの話では、明日は国王陛下に謁見、その後旅の最終身支度をするそうだ。国王陛下には、勇者になった時会ったので、明日出会うのは2回目。因みに明日の謁見では、世界を救う旅に出ろ的な王命が正式に下されるらしい。………詳しくは知らない。取り敢えず、言われた通りにしてればいいとの事。


 にしても、明後日にはもう、彼らと旅に出るのか。うむ、ぶっちゃけ言って、この旅不安でしかない。死ぬかもしれないという事もそうだけど、彼らと上手くやっていけるかという事が、最大のネック。まるで、入学式を一週間休んで、登校した時の気分。仲良しグループは既に形成されており、私の入る隙はない。しかもそこに、恋愛事情が絡んでくるのだ。こんなのやってられないよ。


 そりゃぁ、元々はモブに徹するつもりだったから、ある程度は覚悟できてたけど。でも、実際にそんな状況に陥ると、そんな覚悟は揺らぐわけで。つまり、ぼっちは寂しいわけだ。

 ……まぁ、まだ会ったばかりだし、今後どうなるかは、わからない。初めから悲観するのはやめよう。嫌でも、共に時間を過ごすのだ。多少は彼らの仲間に入れるはず………きっと、明日は今日よりも親睦が深まっているだろう。

 そんななけなしの希望を胸に、私は深い眠りにつくことにした。ふかふかのベッドは物凄く気持ちよかった。
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