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1つ目の宝玉と
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殿下と、同室という恐ろしい状況であったが、特に何事もないまま、一夜が過ぎた(そもそも、私が爆睡したから、なにも起きなかったとも言える)
夕食を食べなかったせいで、目覚めの悪かった今朝方(お腹が好きすぎてヤバかったのだ)。
旅のメンバーと本日の予定を話しながら取った朝食。そんなこんなで、あれやこれやと時間は過ぎていった。
そして、今現在は無事馬車も入手することに成功し、私たちは目的の村、宝玉があるであろう場所へと向かう道中へと向かう途中。
私の隣には馬を操り馬車を運転するアネル。因みに、殿下達は客車の方。運転席の定員が2名、客車の方の定員が4名のため、この席順になった。始め、セシルちゃんあたりが、運転席に座ろうか?といってくれたが流石に貴族様、お偉い様にここに座らせるわけにはいかない……そもそも私はセシルちゃんにヒロインの役割を押し付けようとしているのだ。攻略者候補が沢山いる客車に来てもらったろうが此方としては都合がいい。
都合が良いし、望んでこの席順にしたわけだが………
「…………………」
「…………………」
な、何で気まずいんだろうか。隣に座るアネルから感じる何とも言えない不機嫌なオーラ。も、もしかして、セシルちゃんが隣の方が良かったから怒っているのか?す、すまない。でも、私の命のためなんだ。そこは我慢してくれ。君には悪いけど!一応、ディルクルートで、物語を進めていきたいんだ
「い、いやぁ。それにしてもアネル。馬車の運転上手いね。」
場を和ませるため、意を決して話しかけてみるものの
「運転に集中したいから、黙っててくれない。馬鹿ルーナ」
「あ、はい」
と言われてしまう始末。きっとこれがセシルちゃんだったらニコニコと楽しそうに話してるんだろうなぁ。と思えば思うほど、心が痛んだ。っく、ここはやっぱり幼馴染として、アネルの恋を応援するべきなのか?いやぁ、でも、ディルクルートで行こうって決めたばかりだしなぁ。うーん、どうするべきか…………
さてはて、と私が悩んでいたせいか。二人の間に漂う空気が先ほどよりもなんとも言えない、そんな感じになってきた頃
「……………ていうか、ルーナ。いいの?」
「え、なにが?」
何故か急に話しかけてきたアネル。
というか、運転に集中するんじゃなかったのかよ!あれか?私に話しかけられるのはそんなに嫌だったのか?
「何って、殿下と一緒じゃなくていいのかって事だよ。二人は……恋人同士なんだよね?せっかくセシル様が気を使ってくれたっていうのに、ここにいていいの。」
「あー、良いんだよ」
そもそも、私たちは付き合ってすらないのだから、そんな気遣いはいらない。
「はぁ!?良いってどういう事?意味わかんないんだけど」
うーん。なんで説明して良いのやら。本当は付き合っていないなどと言える訳もないし、かと言ってそれ以外の理由で納得してもらえるかと言ったら、それもどうかと思う。どうしたら、納得してもらえるのやら。
「……何その態度。ムカつく、こっちはその事でイライラしてるっていうのにさ。当の本人が、そんな風に考えてるとか、あり得ないんだけど」
とか言われてもなぁと思う。しかし、このままアネルをイライラさせてもなぁ。……って、あれ?
「……イライラ?なんでアネルがイライラしてるの?」
はっきり言って、アネルがイライラする必要性が何処にも感じられない。私と殿下が付き合うことによって何で、イライラするんだ? あれか? お前みたいな奴が殿下と付き合いやがって的な事か? いや、でもそれはイライラとは少し違う気がするしな。
「は、は、は、はぁ!?イ、イライラなんてしてないけど!!馬鹿ルーナ!何言ってんだよ!!バカバカバカ!!」
「いや、言ったよね?自分でイライラしてるって」
「言ってないったら、言ってない!!」
いやいや、言いましたよね。と喉の辺りまで出かけたが、これ以上何か言っても、きっとアネルのことだ。否定し続けるのだろう。イライラするって言ったり、してないって言ったり、忙しい奴だ。…にして、いつも以上になんか、アネル怒ってない?
「そっか、言ってないか。……だったらごめん。私の聞き違いだったみたいだね」
まぁ、怒ったアネルの扱いは難しい。取りあえず、煽らないようにしておこう。これ以上煽ると、長年の腐れ縁もとうとう切れる気がするから。
「…あぁ、もうっ!!……何その態度!ムカつく!!馬鹿!!!本当に、ルーナっていつもそうだよね。いつも、いつも、いつも、僕にそういう態度で接するよね。いい加減にしてくれない!? それがムカつくんだよ!!……………あぁ、もうムカつく!!本当は、お前が言った通りイライラしてるよ。その態度にも、ルーナが、殿下と付き合ったって事にもムカついてるし、イライラしてるんだ。こっちは、こっちはずっとずっと、昔の約束を果たそうとしてたのに!!それだっていうのに、お前は約束をすっかり忘れているんだろ!?それに、僕に本気で向き合ってくれないお前!!??」
問題ない……と思ったが、どうやら私の発言は逆にアネルの神経を逆なでしてしまうこととなった。急に怒り出すアネル。一体何がそこまで、いらだたせてしまったのだろうか。私の態度ってそんなに酷かった?アネルよりはマシだと思うけれど……それに、昔の約束?一体なんのことだ?と思った次の瞬間、バァン!!という爆発音と共に、ガタッと馬車が揺れた。あまりにいきなりのことだったため、はじめ何が起きたのか理解できなかったが、どうやらこの馬車は誰かから攻撃されたようである
「ッく!!何これ」
ガタガタと揺れに揺れる馬車をなんとか制御するアネル。なんとか、揺れもおさまったかと思えば、次々と攻撃が襲ってくる。
「きゃぁっ!!」
「セシル!大丈夫か?……にしても一体何があったんだ?」
「どうやら、何処からか攻撃されているようだね。……にしてもこの揺れは……」
後ろの客車からも聞こえてくる声。運転席の揺れもさる事ながら、客車の方も、攻撃によって、被害をこうむっているようだ。このままではヤバいなと思っていたそのとき
「うわぁ!!」
少し油断してしまったせいだろう。崩れるバランス、感じる浮遊感。
やばい落ちる!!
と思った時にはもう遅い。次の瞬間には、思い切り地面へと叩きつけられた。
………不幸中の幸いか、馬車のスピードが多少なりとも落ちていたのと、とっさに受け身の体制を取ったお陰で、最悪の事態は免れた。……まさか、予想外、一歩間違えれば死んでいた。こんなところで、これで死んだら恥も恥。一安心、と思えば、次は、激痛が全身に走る。………あ、これはやばい。痛くて死にそう。いや、この程度では死にはしないけれど、死にそうなくらい痛い。痛すぎて立ち上がるどころか、動くことさえままならない。動けない、動けないが、このまま動けなくては、いろいろと厄介だ。そもそも、誰かから攻撃され、馬車から転落した。だとすると、攻撃して来た敵が、この後も追撃してくる可能性は高い。こんなところで、寝ている場合ではない。魔法は、あまり得意ではないが、この状況を少しでも和らげる魔法を自分にかけるべきであろう。
「パラリジ感覚麻痺」
そうやって軽く呪文を唱えれば、いくらか痛みがマシになった気がした。
聖剣を杖代わりにしてなんとか立ち上がる。果たして、何処から、攻撃されたのかと思い周りを見渡して見れど、それらしき影は見えない。………ふと前方の馬車見れば、すでに停車しており、客車にいたセシルちゃん達やアネルが、こちらの方へと駆けつけてくるのが見えた。
「ル、ルーナ!?大丈夫?って凄い血だよ!?」
「え?」
いの一番に駆けつけてくれたセシルちゃんが、私も事をみるなり、目を見開く。その視線の先にある頭に手をやれば、生暖かくドロっとした液体が手についた。……どうやらさっきの衝撃のせいで頭を打ち血がダダ流し状態らしい。感覚麻痺させる魔法を使ってしまった為、全然気づかなかった。わぁ、手が真っ赤だな。とか言っている場合ではない。下手したら本当に死ぬところだったんだなと改めて実感する。と言うか、このままにしていても、出血多量で死ぬけれど。
「す、すぐに応急処置するから!!」
優しきかな。
セシルちゃんが、傷口に手を近づければ、暖かな光を感じる。もともと魔法のおかげで痛みはなかったが、なんとなく先ほどよりも楽になった気がする。
「よし!多分これで傷口は塞がったはず」
再び、傷口に手をやれば、すでにそこは塞がっているようだ(出血多量は免れ…た)
にしてもだ。元々、治癒魔法は高度な技術がいる魔法の為扱える人間はあまり多くない。それをこうやすやすとしかも復唱する事なしに扱うことのできるセシルちゃんは、もう流石としか言いようがない。しかも私みたいな奴に惜しげもなく使うとか良い子過ぎる。
「あ、ありがとうセシルちゃん!!なんて、感謝したら良いのか」
「そんな、感謝だなんて。仲間だもん、当然だよ。にしても他は大丈夫?酷い落ち方だったよ」
あぁ、本当にいい子だ。直してくれるだけではなく、こうも心配してくれるなんて!! 貴女が皆から好かれている理由が改めてわかったよ。そして、やっぱり君以外にヒロインにふさわしい人間はいない
「……セシルの言うとおり、体の方は大丈夫かい?ルーナ。」
「そうだよ!!馬鹿ルーナ。いきなりびっくりしたんだ。こっちの身にもなってよね!!……大丈夫なの?」
セシルちゃんの後から続いて、こちらに来た殿下やアネル達が、私のことを心配そうに見る。まさか、彼らに心配されるとは思わなかった。あと、初めてアネルがデレた気がした。
「あ、あー。体の方は多分今のところ大丈夫です。軽く魔法で感覚を麻痺させてますから、痛みもないですね」
「……感覚を麻痺って、勇者殿。貴方、そんな事をしても無意味じゃないですか。それに、魔法が、切れたら痛みは倍増なんですよ!?なんで、そんな事を」
「そうだよ、勇者ちゃん。その判断はあまり褒められた事じゃないよ」
と言われても、次の事を考えたら妥当だな考えだと思ったんだ。敵の姿は未だに見えないが、次の攻撃に備えた結果な訳であるから、この決断をしたのは間違ってないと思う。
「まぁ、そうルーナを責めてやるなよ。ディルク、ルイ。彼女の決断はこの状況下においては、ある意味懸命だと思うよ。いつ俺たちを攻撃してきた奴らが現れるかわからないからね…………と噂をすればなんとやら。どうやら俺達を襲った奴らのお出ましだ」
そう言った殿下の視線の先にいたのは、帝国からの刺客。昨日あった馬鹿皇子ことドゥムを中心とした三馬鹿だった。先ほどまで、居なかったのに、いつの間に居たのだろうか。
「ふっ!この俺様の実力の前では、王国の奴らもなす術なしだったな!!さすが俺様!!」
「流石は、ドゥム皇子!天才でーす。」
「やっぱり皇子!!流石としか言いようがないですねぇ」
「さぁ、お前ら。宝玉の鍵となりうる勇者を俺様に引き渡すがいい!!このネイブール帝国が第一皇子!!ドゥム・ネイブール様にな!!」
そう言って、目の前の三馬鹿は思いきり決めポーズをとったのであった。
夕食を食べなかったせいで、目覚めの悪かった今朝方(お腹が好きすぎてヤバかったのだ)。
旅のメンバーと本日の予定を話しながら取った朝食。そんなこんなで、あれやこれやと時間は過ぎていった。
そして、今現在は無事馬車も入手することに成功し、私たちは目的の村、宝玉があるであろう場所へと向かう道中へと向かう途中。
私の隣には馬を操り馬車を運転するアネル。因みに、殿下達は客車の方。運転席の定員が2名、客車の方の定員が4名のため、この席順になった。始め、セシルちゃんあたりが、運転席に座ろうか?といってくれたが流石に貴族様、お偉い様にここに座らせるわけにはいかない……そもそも私はセシルちゃんにヒロインの役割を押し付けようとしているのだ。攻略者候補が沢山いる客車に来てもらったろうが此方としては都合がいい。
都合が良いし、望んでこの席順にしたわけだが………
「…………………」
「…………………」
な、何で気まずいんだろうか。隣に座るアネルから感じる何とも言えない不機嫌なオーラ。も、もしかして、セシルちゃんが隣の方が良かったから怒っているのか?す、すまない。でも、私の命のためなんだ。そこは我慢してくれ。君には悪いけど!一応、ディルクルートで、物語を進めていきたいんだ
「い、いやぁ。それにしてもアネル。馬車の運転上手いね。」
場を和ませるため、意を決して話しかけてみるものの
「運転に集中したいから、黙っててくれない。馬鹿ルーナ」
「あ、はい」
と言われてしまう始末。きっとこれがセシルちゃんだったらニコニコと楽しそうに話してるんだろうなぁ。と思えば思うほど、心が痛んだ。っく、ここはやっぱり幼馴染として、アネルの恋を応援するべきなのか?いやぁ、でも、ディルクルートで行こうって決めたばかりだしなぁ。うーん、どうするべきか…………
さてはて、と私が悩んでいたせいか。二人の間に漂う空気が先ほどよりもなんとも言えない、そんな感じになってきた頃
「……………ていうか、ルーナ。いいの?」
「え、なにが?」
何故か急に話しかけてきたアネル。
というか、運転に集中するんじゃなかったのかよ!あれか?私に話しかけられるのはそんなに嫌だったのか?
「何って、殿下と一緒じゃなくていいのかって事だよ。二人は……恋人同士なんだよね?せっかくセシル様が気を使ってくれたっていうのに、ここにいていいの。」
「あー、良いんだよ」
そもそも、私たちは付き合ってすらないのだから、そんな気遣いはいらない。
「はぁ!?良いってどういう事?意味わかんないんだけど」
うーん。なんで説明して良いのやら。本当は付き合っていないなどと言える訳もないし、かと言ってそれ以外の理由で納得してもらえるかと言ったら、それもどうかと思う。どうしたら、納得してもらえるのやら。
「……何その態度。ムカつく、こっちはその事でイライラしてるっていうのにさ。当の本人が、そんな風に考えてるとか、あり得ないんだけど」
とか言われてもなぁと思う。しかし、このままアネルをイライラさせてもなぁ。……って、あれ?
「……イライラ?なんでアネルがイライラしてるの?」
はっきり言って、アネルがイライラする必要性が何処にも感じられない。私と殿下が付き合うことによって何で、イライラするんだ? あれか? お前みたいな奴が殿下と付き合いやがって的な事か? いや、でもそれはイライラとは少し違う気がするしな。
「は、は、は、はぁ!?イ、イライラなんてしてないけど!!馬鹿ルーナ!何言ってんだよ!!バカバカバカ!!」
「いや、言ったよね?自分でイライラしてるって」
「言ってないったら、言ってない!!」
いやいや、言いましたよね。と喉の辺りまで出かけたが、これ以上何か言っても、きっとアネルのことだ。否定し続けるのだろう。イライラするって言ったり、してないって言ったり、忙しい奴だ。…にして、いつも以上になんか、アネル怒ってない?
「そっか、言ってないか。……だったらごめん。私の聞き違いだったみたいだね」
まぁ、怒ったアネルの扱いは難しい。取りあえず、煽らないようにしておこう。これ以上煽ると、長年の腐れ縁もとうとう切れる気がするから。
「…あぁ、もうっ!!……何その態度!ムカつく!!馬鹿!!!本当に、ルーナっていつもそうだよね。いつも、いつも、いつも、僕にそういう態度で接するよね。いい加減にしてくれない!? それがムカつくんだよ!!……………あぁ、もうムカつく!!本当は、お前が言った通りイライラしてるよ。その態度にも、ルーナが、殿下と付き合ったって事にもムカついてるし、イライラしてるんだ。こっちは、こっちはずっとずっと、昔の約束を果たそうとしてたのに!!それだっていうのに、お前は約束をすっかり忘れているんだろ!?それに、僕に本気で向き合ってくれないお前!!??」
問題ない……と思ったが、どうやら私の発言は逆にアネルの神経を逆なでしてしまうこととなった。急に怒り出すアネル。一体何がそこまで、いらだたせてしまったのだろうか。私の態度ってそんなに酷かった?アネルよりはマシだと思うけれど……それに、昔の約束?一体なんのことだ?と思った次の瞬間、バァン!!という爆発音と共に、ガタッと馬車が揺れた。あまりにいきなりのことだったため、はじめ何が起きたのか理解できなかったが、どうやらこの馬車は誰かから攻撃されたようである
「ッく!!何これ」
ガタガタと揺れに揺れる馬車をなんとか制御するアネル。なんとか、揺れもおさまったかと思えば、次々と攻撃が襲ってくる。
「きゃぁっ!!」
「セシル!大丈夫か?……にしても一体何があったんだ?」
「どうやら、何処からか攻撃されているようだね。……にしてもこの揺れは……」
後ろの客車からも聞こえてくる声。運転席の揺れもさる事ながら、客車の方も、攻撃によって、被害をこうむっているようだ。このままではヤバいなと思っていたそのとき
「うわぁ!!」
少し油断してしまったせいだろう。崩れるバランス、感じる浮遊感。
やばい落ちる!!
と思った時にはもう遅い。次の瞬間には、思い切り地面へと叩きつけられた。
………不幸中の幸いか、馬車のスピードが多少なりとも落ちていたのと、とっさに受け身の体制を取ったお陰で、最悪の事態は免れた。……まさか、予想外、一歩間違えれば死んでいた。こんなところで、これで死んだら恥も恥。一安心、と思えば、次は、激痛が全身に走る。………あ、これはやばい。痛くて死にそう。いや、この程度では死にはしないけれど、死にそうなくらい痛い。痛すぎて立ち上がるどころか、動くことさえままならない。動けない、動けないが、このまま動けなくては、いろいろと厄介だ。そもそも、誰かから攻撃され、馬車から転落した。だとすると、攻撃して来た敵が、この後も追撃してくる可能性は高い。こんなところで、寝ている場合ではない。魔法は、あまり得意ではないが、この状況を少しでも和らげる魔法を自分にかけるべきであろう。
「パラリジ感覚麻痺」
そうやって軽く呪文を唱えれば、いくらか痛みがマシになった気がした。
聖剣を杖代わりにしてなんとか立ち上がる。果たして、何処から、攻撃されたのかと思い周りを見渡して見れど、それらしき影は見えない。………ふと前方の馬車見れば、すでに停車しており、客車にいたセシルちゃん達やアネルが、こちらの方へと駆けつけてくるのが見えた。
「ル、ルーナ!?大丈夫?って凄い血だよ!?」
「え?」
いの一番に駆けつけてくれたセシルちゃんが、私も事をみるなり、目を見開く。その視線の先にある頭に手をやれば、生暖かくドロっとした液体が手についた。……どうやらさっきの衝撃のせいで頭を打ち血がダダ流し状態らしい。感覚麻痺させる魔法を使ってしまった為、全然気づかなかった。わぁ、手が真っ赤だな。とか言っている場合ではない。下手したら本当に死ぬところだったんだなと改めて実感する。と言うか、このままにしていても、出血多量で死ぬけれど。
「す、すぐに応急処置するから!!」
優しきかな。
セシルちゃんが、傷口に手を近づければ、暖かな光を感じる。もともと魔法のおかげで痛みはなかったが、なんとなく先ほどよりも楽になった気がする。
「よし!多分これで傷口は塞がったはず」
再び、傷口に手をやれば、すでにそこは塞がっているようだ(出血多量は免れ…た)
にしてもだ。元々、治癒魔法は高度な技術がいる魔法の為扱える人間はあまり多くない。それをこうやすやすとしかも復唱する事なしに扱うことのできるセシルちゃんは、もう流石としか言いようがない。しかも私みたいな奴に惜しげもなく使うとか良い子過ぎる。
「あ、ありがとうセシルちゃん!!なんて、感謝したら良いのか」
「そんな、感謝だなんて。仲間だもん、当然だよ。にしても他は大丈夫?酷い落ち方だったよ」
あぁ、本当にいい子だ。直してくれるだけではなく、こうも心配してくれるなんて!! 貴女が皆から好かれている理由が改めてわかったよ。そして、やっぱり君以外にヒロインにふさわしい人間はいない
「……セシルの言うとおり、体の方は大丈夫かい?ルーナ。」
「そうだよ!!馬鹿ルーナ。いきなりびっくりしたんだ。こっちの身にもなってよね!!……大丈夫なの?」
セシルちゃんの後から続いて、こちらに来た殿下やアネル達が、私のことを心配そうに見る。まさか、彼らに心配されるとは思わなかった。あと、初めてアネルがデレた気がした。
「あ、あー。体の方は多分今のところ大丈夫です。軽く魔法で感覚を麻痺させてますから、痛みもないですね」
「……感覚を麻痺って、勇者殿。貴方、そんな事をしても無意味じゃないですか。それに、魔法が、切れたら痛みは倍増なんですよ!?なんで、そんな事を」
「そうだよ、勇者ちゃん。その判断はあまり褒められた事じゃないよ」
と言われても、次の事を考えたら妥当だな考えだと思ったんだ。敵の姿は未だに見えないが、次の攻撃に備えた結果な訳であるから、この決断をしたのは間違ってないと思う。
「まぁ、そうルーナを責めてやるなよ。ディルク、ルイ。彼女の決断はこの状況下においては、ある意味懸命だと思うよ。いつ俺たちを攻撃してきた奴らが現れるかわからないからね…………と噂をすればなんとやら。どうやら俺達を襲った奴らのお出ましだ」
そう言った殿下の視線の先にいたのは、帝国からの刺客。昨日あった馬鹿皇子ことドゥムを中心とした三馬鹿だった。先ほどまで、居なかったのに、いつの間に居たのだろうか。
「ふっ!この俺様の実力の前では、王国の奴らもなす術なしだったな!!さすが俺様!!」
「流石は、ドゥム皇子!天才でーす。」
「やっぱり皇子!!流石としか言いようがないですねぇ」
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