29 / 50
1つ目の宝玉と
28
しおりを挟む
気が抜けているのか、ふぁぁと、あくびが一つでる。はしたない事はわかってるけど、仕方ない。こんな気持ちのいい空の下、美しい新緑に囲まれれば、あくびの一つや二つ出てしまうだろう。
私は,現在あの洞窟の近くにある森にて、ルイと共に薬草を探している。と言うのも、あの戦闘において負傷した仲間の治療をする為に、薬草がたくさん必要だからだ。なんとかして、勝利?を納める事ができたわけだが、その分損害も大きかった訳だある。特にアネルとディルクの損傷が酷いと言う事にあの後、気がついた。………ごめん、すぐに気がつかなくて。(因みにセシルちゃんと殿下は「このくらい大丈夫だし」的な事を言い張る二人を宿にて取り押さえている)
にしても、ここ。洞窟の近くにあり、つい最近まで、全く村人が寄り付かなかったお陰か、彼方此方に薬草がたっぷり生えている。いやぁ、嬉しいね。ただで、こんなに沢山の薬草が手に入るなんて。しかも、めちゃめちゃ高く売れる薬草まであるよ。
あー、これすっごい苦いんだけど、めっちゃ効果あるんだよねぇ。……まぁ、取りすぎは良くないで、ある程度控えめに、必要な分だけをブチブチと採取していくけれど、さ。
素晴らしい空の下、空気が綺麗な森の中で、多くの薬草に囲まれ、とても気分が良い。良い……のだが
「んー、気持ちいい」
何だろうか、こいつは
こっちが一所懸命に働いていると言うのに、ちょっと離れた場所、シロツメグサの群生地的な、花畑的なところで、ごろごろっと寝転がるルイがに殺意がわいてくるのは、仕方ないよね?人が働いているのに、サボるなんて!!なんて神経をしているんだろうか
「………何サボってるんですか。」
ドスドスと怒りをあらわにしながら、彼の近くまで行き、真上から見下ろしてやっても
「えー、だって。こんな気持ちのいい場所で、休まなかったらもったいないじゃん。」
残念なことに、軽く受け流されてしまう
まぁ?確かに、気持ちの良い天気だし?そうやって休みたくなる気持ちも、わからなくはないけど!こっちが真面目にやってるんだから、少しぐらいは手伝えよ!
「そんなに怒らないでよ。…いやぁ、それにしてもまさか勇者ちゃんに薬草の知識があるなんて知らなかったよ」
「まぁ、これぐらいなら……」
と言うか、私みたいな庶民ならこのぐらいの知識あって当然なんだよなぁ。
薬草って、買うと結構な値段だから、自分で採取した方が安上がり。だから、私みたいな庶民は、買うよりも薬草の知識をある程度持っていて、自分で採取することが多い。
しかも、売ればその分いいお小遣い稼ぎにもなる事もある。思えば、勇者になる前、暇さえあれば薬草を取りに行ってたなぁ。
って、話をそらされた。
「さっさと、起き上がって下さい。さすがに怒りますよ」
「まぁ、まぁ。 」
ほらっとルイが手を伸ばしてくる。一体なんだと思えば、次の瞬間グイッと服を引っ張られそのままバランスを崩しルイの隣にボスンと倒れ込む。
下が、花畑の為、倒れた衝撃はそれほどではなかったが、それでもいきなり倒れれば、多少なりとも痛い。
「まったく、いきなりなにするんですか。」
「んー、なんとなく?」
なんとなくで、人を引っ張るものじゃない。やめろ。
はぁとため息をつきながら、隣にいるルイを見れば、思いの外顔が近いことに気がつく。きめ細やかな肌、サラサラの髪、改めて見ると女として負けている部分が多いなぁと思う。なんで、そんなに綺麗な肌してるんだよ!!そして、なんだこの乙女ゲーム的展開は、確かに乙女ゲームだけど、そう言う世界だけど。そういうのは、セシルちゃんとやってくれよ。
「なになに?そんなに見つめちゃって。もしかして、惚れちゃった?」
ニヤニヤと笑いながらこちらをからかってくるルイ。惚れてなどないし、惚れる要素もない。というか、この以上このまま倒れている場合でもない。折れるなら、さっさとフラグを、折らないと。
「いや、馬鹿なこと言っていないで、さっさと帰りますよ。」
そうだ。目的を忘れてはいけない。さっさと帰って、さっさと採取した薬草をセシルちゃん達に渡さねばと思い、上半身を起こし、そのまま立ち上がろうとするが、なぜかルイに手を掴まれそれを阻止される。
「何をするんですか、神官殿。」
「え、引き止めてるんだよ。もう少し、ここでゆっくりしていこうよ。ね?」
「ゆっくりって………皆んな待っているんですよ?冗談はよしてください」
「大丈夫だよ。そもそも、そういう目的で、薬草取りを頼まれたわけだし、ね?」
いやいや、嘘だろ?それ、お前がゆっくりしたいだけの嘘じゃないの。だって、出てくる前にセシルちゃんはなるべく急ぐように言って、言って……
『じゃあ、頼んだよ2人とも。あ、息抜きとしてゆっくりしてきてもいいからね。むしろしてきてね。』
言ってないな。むしろゆっくりしてくるように言ってたわ。
「皆んな、特に勇者ちゃんなんて宝玉を手に入れるために気を張っていたからね。だから、たまには息抜きも必要だよ。そのために、セーちゃんだってゆっくりしてくるように言ってくれたんだ」
ゆっくりねぇ。
「急いでばっかりじゃ、むしろ上手くいかないこともあるよ。だから、ね。ゆっくりしようよ」
気持ち良さそうに寝転がりながらそんな事をいうルイ。
………まぁ、一理あると言えばある。急がば回れなんて諺もあるしな。
個人的には一刻も早く宝玉を探したいけど、急ぎすぎて、息つく間もなく探しても、それはそれで疲れてしまう。死にかけながらもここまで頑張ったもんな、少しぐらいゆっくりしてもバチは当たらないだろう、うん。
「…そうですね。少しくらいなら、ゆっくりしても良いかもしれませんね。」
「うんうん、そうしなよ」
大きく深呼吸を一つ。空気が綺麗で、気持ちがいい。
グッと伸びをしてから、全身の力を抜く。そのまま、ぼーっと深緑を眺める。緑に囲まれるのって精神的に素晴らしい行為だ。荒んだ心が癒される。
あぁ、こんなに気を抜いて、ゆっくりするのはいつぶりだろうか。昔はよく薬草採取の合間に、こうして息抜きをしていたな。草むらに寝っ転がったり、川原で涼んだり、そうそう、シロツメグサで王冠を作ったりもした。本来の目的をすっかり忘れて……なんて事もあったりして、その度に怒られていたっけ。懐かしい。
なんとなく思い出したら、シロツメグサの王冠を作りたくなってきた。おもむろに、周りに生えているシロツメグサを一つ、また一つと取ってみる。
確か、こうして作ったよなぁ。王冠……
過去の記憶を思い出し、摘んだシロツメグサを一つ、一つ巻きつけながら王冠を作り上げていく。久しぶりにやるが、結構覚えているものだ。あと、楽しい。
「さっきからなにしてるの? 勇者ちゃん」
声が聞こえ、不意に顔をあげれば、ルイが目の前にいるのに気がついた。さっきまで寝転がっていたのに、いつの間にか体を起こし、此方の手元をじって見つめている。………なんか、作業しにくいな。
「王冠を作っているんです」
「王冠?これが?」
首を傾げ、何処と無く不思議そうな顔をするルイ。そんなに不思議がる事だろうか……
「知りませんか?シロツメグサの王冠ですよ。小さい頃とかにやりませんでしたか?」
とそこまで言って、ルイの表情を見て、あ……と思い出す。やってしまった。
「んー、俺、子供の頃から神殿にいたからこう言った遊びは知らないなぁ」
そうだった。そうだったよ。それは、失言だった。なにしてんだろうか私。
ルイは幼い頃から、神殿にいる。魔法の才能を認められ、神殿に預けられたと言う過去を待つ攻略候補だった。今ではそんな事もないが、幼い頃から日々修行。遊ぶ間も無く、幼少期を過ごし、神殿の道具として扱われてきた彼。そんなルイに、幼少期、こんな遊びをしたでしょ?と聞くのは愚問だった。失敗した。デリカシーがかけていた。
「え、えっと、なんかすみません」
「別に、勇者ちゃんが謝る必要ないよ。それは、事実だしね」
それを言われるとなにも言えないじゃないか
「……………」
「……」
流れる沈黙。うぅ、なんて、気まずいのだろうか。
こうなったら黙々と作業を続けるしかない。王冠に、王冠作りに集中しろ!!私。
じーっと注がれる視線も無視して、作るしかない。っく!!でも、そんなに見られると、やっぱりやりにくい。
だいたい、なんで、ルイまで黙ってるんだ。何か話せよ。いつもうるさいのに、なんで黙ってるんだ。あれか?やっぱり地雷を踏んだから?つまり、私のせい?私が悪いのか………あー、やばいやばい。罪悪感が半端ないよ。
そんな事を思いながら、ひたすら黙々と花を編み込んで行くことにした。
「ねぇ、最後はどうするの?」
「へ?」
「うん、だから最後。どうやって輪っかにするの?」
無心で作っていたせいか、編み込んだ花は十分な長さに花出来上がっていた。そろそろ、輪っかにする必要がある。
……にしても、もしかしてルイさん。これに夢中になっていたから、無言だったのだろうか。なにそれ、私の悩みは杞憂だったわけ?いや、それならそれでいいけれど、むしろありがたいですけれど。
「最後ですね。最後は、この恥の茎の部分を逆側に、こうやって隠すようすれば……ほら」
そうやってうまい具合に、輪っかにすれば、シロツメグサの王冠の完成だ。うむ、中々の出来栄え。久しぶりに作ったが、腕は衰えてなかったよう。
ふと、目の前のルイを見れば、何処と無くキラキラとした目で、シロツメグサの王冠を見つめている。
「へぇ、凄いねぇ。こんな小さな花で、王冠ができるんだ」
普段からは考えられない、幼い子供みたいな表情。こいつもこんな顔するなんて、意外だ。
「……神官殿ちょっと、いいですか?」
立ち上がり、そのままふわりとルイの頭に王冠を被せる。ちょっと気になったのだ。作っただけで、あんな表情をするなら、被せたらどうなるんだろう…と。
「よかったら、差し上げますよ。それ……」
って、何馬鹿なことを言ってるんだ、私。そんなもの貰って喜ぶのは幼い子供だけ。しかも、高貴な職である彼にあげても、喜ばれるわけがない。ちょっとさっきの顔に騙されたからと言って、本当になにやってるんだろうか
「って、すみません……」
お気に召さなかったら捨てて貰っても構いませんよ。
そんな事を言おうとしたが、無理だった。
目の前のルイの表情の所為で最後まで言う事が出来なかった。ついつい言葉を失った。
嬉しそうに、少女のように顔を真っ赤にさせているルイ。い、一体なにが起きているんだ。
「えへへへへ、嬉しいよ。ありがとう勇者ちゃん。俺、こんな風に誰かに何かを貰ったのって初めてだからさ」
ニコニコと目の前で、そんな事を言って笑うルイ。え、いや、あの。チョロすぎない?
私は,現在あの洞窟の近くにある森にて、ルイと共に薬草を探している。と言うのも、あの戦闘において負傷した仲間の治療をする為に、薬草がたくさん必要だからだ。なんとかして、勝利?を納める事ができたわけだが、その分損害も大きかった訳だある。特にアネルとディルクの損傷が酷いと言う事にあの後、気がついた。………ごめん、すぐに気がつかなくて。(因みにセシルちゃんと殿下は「このくらい大丈夫だし」的な事を言い張る二人を宿にて取り押さえている)
にしても、ここ。洞窟の近くにあり、つい最近まで、全く村人が寄り付かなかったお陰か、彼方此方に薬草がたっぷり生えている。いやぁ、嬉しいね。ただで、こんなに沢山の薬草が手に入るなんて。しかも、めちゃめちゃ高く売れる薬草まであるよ。
あー、これすっごい苦いんだけど、めっちゃ効果あるんだよねぇ。……まぁ、取りすぎは良くないで、ある程度控えめに、必要な分だけをブチブチと採取していくけれど、さ。
素晴らしい空の下、空気が綺麗な森の中で、多くの薬草に囲まれ、とても気分が良い。良い……のだが
「んー、気持ちいい」
何だろうか、こいつは
こっちが一所懸命に働いていると言うのに、ちょっと離れた場所、シロツメグサの群生地的な、花畑的なところで、ごろごろっと寝転がるルイがに殺意がわいてくるのは、仕方ないよね?人が働いているのに、サボるなんて!!なんて神経をしているんだろうか
「………何サボってるんですか。」
ドスドスと怒りをあらわにしながら、彼の近くまで行き、真上から見下ろしてやっても
「えー、だって。こんな気持ちのいい場所で、休まなかったらもったいないじゃん。」
残念なことに、軽く受け流されてしまう
まぁ?確かに、気持ちの良い天気だし?そうやって休みたくなる気持ちも、わからなくはないけど!こっちが真面目にやってるんだから、少しぐらいは手伝えよ!
「そんなに怒らないでよ。…いやぁ、それにしてもまさか勇者ちゃんに薬草の知識があるなんて知らなかったよ」
「まぁ、これぐらいなら……」
と言うか、私みたいな庶民ならこのぐらいの知識あって当然なんだよなぁ。
薬草って、買うと結構な値段だから、自分で採取した方が安上がり。だから、私みたいな庶民は、買うよりも薬草の知識をある程度持っていて、自分で採取することが多い。
しかも、売ればその分いいお小遣い稼ぎにもなる事もある。思えば、勇者になる前、暇さえあれば薬草を取りに行ってたなぁ。
って、話をそらされた。
「さっさと、起き上がって下さい。さすがに怒りますよ」
「まぁ、まぁ。 」
ほらっとルイが手を伸ばしてくる。一体なんだと思えば、次の瞬間グイッと服を引っ張られそのままバランスを崩しルイの隣にボスンと倒れ込む。
下が、花畑の為、倒れた衝撃はそれほどではなかったが、それでもいきなり倒れれば、多少なりとも痛い。
「まったく、いきなりなにするんですか。」
「んー、なんとなく?」
なんとなくで、人を引っ張るものじゃない。やめろ。
はぁとため息をつきながら、隣にいるルイを見れば、思いの外顔が近いことに気がつく。きめ細やかな肌、サラサラの髪、改めて見ると女として負けている部分が多いなぁと思う。なんで、そんなに綺麗な肌してるんだよ!!そして、なんだこの乙女ゲーム的展開は、確かに乙女ゲームだけど、そう言う世界だけど。そういうのは、セシルちゃんとやってくれよ。
「なになに?そんなに見つめちゃって。もしかして、惚れちゃった?」
ニヤニヤと笑いながらこちらをからかってくるルイ。惚れてなどないし、惚れる要素もない。というか、この以上このまま倒れている場合でもない。折れるなら、さっさとフラグを、折らないと。
「いや、馬鹿なこと言っていないで、さっさと帰りますよ。」
そうだ。目的を忘れてはいけない。さっさと帰って、さっさと採取した薬草をセシルちゃん達に渡さねばと思い、上半身を起こし、そのまま立ち上がろうとするが、なぜかルイに手を掴まれそれを阻止される。
「何をするんですか、神官殿。」
「え、引き止めてるんだよ。もう少し、ここでゆっくりしていこうよ。ね?」
「ゆっくりって………皆んな待っているんですよ?冗談はよしてください」
「大丈夫だよ。そもそも、そういう目的で、薬草取りを頼まれたわけだし、ね?」
いやいや、嘘だろ?それ、お前がゆっくりしたいだけの嘘じゃないの。だって、出てくる前にセシルちゃんはなるべく急ぐように言って、言って……
『じゃあ、頼んだよ2人とも。あ、息抜きとしてゆっくりしてきてもいいからね。むしろしてきてね。』
言ってないな。むしろゆっくりしてくるように言ってたわ。
「皆んな、特に勇者ちゃんなんて宝玉を手に入れるために気を張っていたからね。だから、たまには息抜きも必要だよ。そのために、セーちゃんだってゆっくりしてくるように言ってくれたんだ」
ゆっくりねぇ。
「急いでばっかりじゃ、むしろ上手くいかないこともあるよ。だから、ね。ゆっくりしようよ」
気持ち良さそうに寝転がりながらそんな事をいうルイ。
………まぁ、一理あると言えばある。急がば回れなんて諺もあるしな。
個人的には一刻も早く宝玉を探したいけど、急ぎすぎて、息つく間もなく探しても、それはそれで疲れてしまう。死にかけながらもここまで頑張ったもんな、少しぐらいゆっくりしてもバチは当たらないだろう、うん。
「…そうですね。少しくらいなら、ゆっくりしても良いかもしれませんね。」
「うんうん、そうしなよ」
大きく深呼吸を一つ。空気が綺麗で、気持ちがいい。
グッと伸びをしてから、全身の力を抜く。そのまま、ぼーっと深緑を眺める。緑に囲まれるのって精神的に素晴らしい行為だ。荒んだ心が癒される。
あぁ、こんなに気を抜いて、ゆっくりするのはいつぶりだろうか。昔はよく薬草採取の合間に、こうして息抜きをしていたな。草むらに寝っ転がったり、川原で涼んだり、そうそう、シロツメグサで王冠を作ったりもした。本来の目的をすっかり忘れて……なんて事もあったりして、その度に怒られていたっけ。懐かしい。
なんとなく思い出したら、シロツメグサの王冠を作りたくなってきた。おもむろに、周りに生えているシロツメグサを一つ、また一つと取ってみる。
確か、こうして作ったよなぁ。王冠……
過去の記憶を思い出し、摘んだシロツメグサを一つ、一つ巻きつけながら王冠を作り上げていく。久しぶりにやるが、結構覚えているものだ。あと、楽しい。
「さっきからなにしてるの? 勇者ちゃん」
声が聞こえ、不意に顔をあげれば、ルイが目の前にいるのに気がついた。さっきまで寝転がっていたのに、いつの間にか体を起こし、此方の手元をじって見つめている。………なんか、作業しにくいな。
「王冠を作っているんです」
「王冠?これが?」
首を傾げ、何処と無く不思議そうな顔をするルイ。そんなに不思議がる事だろうか……
「知りませんか?シロツメグサの王冠ですよ。小さい頃とかにやりませんでしたか?」
とそこまで言って、ルイの表情を見て、あ……と思い出す。やってしまった。
「んー、俺、子供の頃から神殿にいたからこう言った遊びは知らないなぁ」
そうだった。そうだったよ。それは、失言だった。なにしてんだろうか私。
ルイは幼い頃から、神殿にいる。魔法の才能を認められ、神殿に預けられたと言う過去を待つ攻略候補だった。今ではそんな事もないが、幼い頃から日々修行。遊ぶ間も無く、幼少期を過ごし、神殿の道具として扱われてきた彼。そんなルイに、幼少期、こんな遊びをしたでしょ?と聞くのは愚問だった。失敗した。デリカシーがかけていた。
「え、えっと、なんかすみません」
「別に、勇者ちゃんが謝る必要ないよ。それは、事実だしね」
それを言われるとなにも言えないじゃないか
「……………」
「……」
流れる沈黙。うぅ、なんて、気まずいのだろうか。
こうなったら黙々と作業を続けるしかない。王冠に、王冠作りに集中しろ!!私。
じーっと注がれる視線も無視して、作るしかない。っく!!でも、そんなに見られると、やっぱりやりにくい。
だいたい、なんで、ルイまで黙ってるんだ。何か話せよ。いつもうるさいのに、なんで黙ってるんだ。あれか?やっぱり地雷を踏んだから?つまり、私のせい?私が悪いのか………あー、やばいやばい。罪悪感が半端ないよ。
そんな事を思いながら、ひたすら黙々と花を編み込んで行くことにした。
「ねぇ、最後はどうするの?」
「へ?」
「うん、だから最後。どうやって輪っかにするの?」
無心で作っていたせいか、編み込んだ花は十分な長さに花出来上がっていた。そろそろ、輪っかにする必要がある。
……にしても、もしかしてルイさん。これに夢中になっていたから、無言だったのだろうか。なにそれ、私の悩みは杞憂だったわけ?いや、それならそれでいいけれど、むしろありがたいですけれど。
「最後ですね。最後は、この恥の茎の部分を逆側に、こうやって隠すようすれば……ほら」
そうやってうまい具合に、輪っかにすれば、シロツメグサの王冠の完成だ。うむ、中々の出来栄え。久しぶりに作ったが、腕は衰えてなかったよう。
ふと、目の前のルイを見れば、何処と無くキラキラとした目で、シロツメグサの王冠を見つめている。
「へぇ、凄いねぇ。こんな小さな花で、王冠ができるんだ」
普段からは考えられない、幼い子供みたいな表情。こいつもこんな顔するなんて、意外だ。
「……神官殿ちょっと、いいですか?」
立ち上がり、そのままふわりとルイの頭に王冠を被せる。ちょっと気になったのだ。作っただけで、あんな表情をするなら、被せたらどうなるんだろう…と。
「よかったら、差し上げますよ。それ……」
って、何馬鹿なことを言ってるんだ、私。そんなもの貰って喜ぶのは幼い子供だけ。しかも、高貴な職である彼にあげても、喜ばれるわけがない。ちょっとさっきの顔に騙されたからと言って、本当になにやってるんだろうか
「って、すみません……」
お気に召さなかったら捨てて貰っても構いませんよ。
そんな事を言おうとしたが、無理だった。
目の前のルイの表情の所為で最後まで言う事が出来なかった。ついつい言葉を失った。
嬉しそうに、少女のように顔を真っ赤にさせているルイ。い、一体なにが起きているんだ。
「えへへへへ、嬉しいよ。ありがとう勇者ちゃん。俺、こんな風に誰かに何かを貰ったのって初めてだからさ」
ニコニコと目の前で、そんな事を言って笑うルイ。え、いや、あの。チョロすぎない?
0
あなたにおすすめの小説
妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。
彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。
公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。
しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。
だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。
二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。
彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。
※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。
冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる