ヒロインは他に任せて

オウラ

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1つ目の宝玉と

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 前世では、結構な数の乙女ゲームをやってたと思う。リアルでモテないからよく二次元に逃げていた。やった乙女ゲームの数だけ、多くのイケメンを落とした日々。いやはや、とても楽しかった毎日であるが、やっていてふと疑問に思った事が多々ある。それは

「え、それヒロインじゃなくてもよくない?」

 的な事だ。攻略者がヒロインに好意を持つ理由が、結構な確率で別にこいつじゃなくてもいいだろ!絶対今までこういう事あっただろ。なんで、今なんだ!!ヒロイン以外にもいたよね?絶対。そもそも理由が単純すぎる!!という事があった。

 つまり、なにが言いたいのかっていうとさ。




「本当に嬉しいよ。ありがとう勇者ちゃん」

 と目の前でとても嬉しそうに笑う彼をどうにかしなくてはいけないという事だ。これは、下手したら好感度をうっかり上げてしまったかもしれない。
 いや、別に嫌われたいというわけではない。どっちかといえば、好かれたいよ。モテたいよ?だって人間だもん。女子だもん。欲を言えば、イケメンに好かれたい。だが、絶対に死なない!という目標を掲げている私にとってそれは、無駄な感情。というか無視しなくてはいけない感情だ。変に好感度を上げて、変にルートに入って仕舞えば絶対にボロが出て、はい死亡!的なことになるに決まっている。くっ、こうなったらさっさと上げた好感度を下げなくては


「いやいや、そんな雑草で作った王冠ごときに喜ばないでくださいよ。時間が経てば腐りますよ。旅の邪魔にもなりますし」
「じゃあ、腐らないように魔法でもかけておくよ。保管場所については、異空間にしまっておくよ。そうすれば、邪魔にはならないでしょ」


 いやいや、そこまでする必要なんてないだろう、本当にやめてほしい。

 と言うか本当にルイは今までに一度もプレゼントをもらった事がないのだろうか。それって可笑しくない?だって高貴な神官様だろ?お布施的なものとか貰ってるよ、絶対。

「……そんなものより絶対にもっといい物貰ってますよね。今までに。思い出してくださいよ。だって、あなた神官なんですよね?」
「えー、まぁそりゃぁ信者たちからものをもらう事は良くあったけど、それはあっちが何かを求めての対価としてだからねぇ。プレゼントというよりは賄賂?だったから。」

 なんだろ今、さらっと国の内情を聞いてしまった気がする。

「でも、こうして、特に理由もなく何かを貰うのは初めてだからさ」

 あ、これは何を言っても無駄なパターンだ。今回は諦めて、これから徐々に好感度を下げていくことにしよう。あー、面倒だなぁ。




「はぁ、もう好きにして下さい。……さぁ、そろそろ帰りますよ」


 思えば、十分にゆっくりした。結構な時間を過ごしてしまった。流石にそろそろ帰らないとセシルちゃん達に迷惑をかけてしまうだろう。

 よっこらせと立ち上がり、さぁ、来た道を戻ろうそんな事を思ったが、背後から嫌な気配を感じた。言葉で表すのは難しいが、なんとなくゾワっとするような、気分の悪くなるようなそんな気配。一体なんなんだと思い振り返ったその先にいたのは


「ふ!どうした勇者。あぁ、この俺様の素晴らしさに震えているのか!」
「流石がです。ドゥム様」
「ドゥム様の素晴らしさには、誰もが魅了されます」
「はっはは。そうだろ!そうだろ」

 その先にいたのはいつぞやの三馬鹿。……わはははと高笑いするのが中々様になっている。なんでこんな所にいるんだ。お前達の登場はもっと先だっただろ。次の町あたりでだろ確か。

 だが、まぁ、今その事については詳しく考えているわけにはいかない。そんな事よりも、この状況をどうにかすることを考えなくては。
 三馬鹿は、いわゆる敵キャラ。出てくるときは必ず攻撃してくるのがテンプレだ。


「一体何の用ですか。」

 相手とある程度の距離を取り、そのまま腰にある聖剣に手をかけ……かけ……かけれない。……どこにも聖剣がない事に気付く。
 クソ!そうだった、薬草を取りに行くだけだったから宿において来たんだった。なんと言う判断ミスだろうか。
 ただでさえ、ルイと2人だけと言う不利な状況なのに、聖剣がないとか最悪もいい所だよ





「何の用?それを聞くか。この俺様にあれほどの事をしておいて。」

 ……あー、確かこいつの恨みを買っていたんだっけ。

「まぁ、いい教えてやろう。復讐しに痛んだ、お前に。見れば、頼れる仲間、彼奴も居ないみたいだし、好都合だ」

 ………大したことはしてないはずなのに、なんでこんなに恨みを買っているんだろうか。

 はぁ、本当にどうしよう、こっから。簡単に逃げることはできなさそうだしなぁ。あー、でも彼奴らの目的は私みたいだし、ルイだけでも逃して、助けを呼びに言ってもらおうかな。……いや、やっぱりそれをしたら、奴らに殺される未来しか見えないからやめておこう。

 んー、本当にどうするべきか。




「……勇者ちゃん。ここは俺に任せて逃げなよ。隙を作るからさ」

 さっきまで後ろで黙って居たルイが、そんな事を言いながら、いつの間にか私の一歩前に出て、何処からだしたかわからない杖を構え始めた。

「はぁ!?何言ってるんですか。」

 そんな事したら、死ぬぞ!?殺されるぞ?それに

「置いていって貴方に何かあったら、困りますよ。今後が!それに後味が悪いじゃないですか」

 ここぞと言う感じに、好感度を下げる台詞を言う。いや、ふざけてる場合じゃないんだけどね。こう言う時にやらないと。

「あははは。酷い言い方だなぁ。そこは心配するふりをしてよ。まぁ、でも、大丈夫だよ」

 大丈夫じゃないからいっているのだ。

「あの、そう言う自己を犠牲にするのやめてくれませんか?不愉快です」
「いや、それ勇者ちゃんだけには言われたくないよ。いつも自分を犠牲にしてるくせに」
「はぁ?いやいや、いつ私が自分を犠牲にしたって言うんですか」
「いつもしてるじゃん。この前だって、そうだし。今回だってもしかして、俺だけ逃して~なんてこと考えてたんじゃないの?」




「うるさいぞ!!お前ら!いつまで話しているつもりだ!」


 私たちの言い合いに痺れを切らしたドゥムが、そんな事を叫ぶ。……て言うか、こいつもしかして今の言い合い只々黙って聞いて居たのだろうか。隙だらけだったのに……流石、三馬鹿なだけはある。いや、嬉しい誤算だけどね。


「もういい!やってしまえ!」

 ビシッと指を突き出し、ドゥムが双子に命令を下したその瞬間、地面からニョキニョキと植物が生え始める。これは前と同じ魔法だ。しかも手こずったやつ。

 やばい、一刻も早く逃げなくては、と思ったが足を取られすぐに植物達に拘束されてしまった。


「っく!!勇者ちゃん大丈夫!?」

 ルイは、魔法で必死に応戦しているようだがこちらを助ける余裕はないよう。自力で逃げ出さなくてはいけない。

 ぐっと力を入れ、逃げ出そうとするが、拘束はさらに強くなるばかり。




「待ってて、今助けるから……ってっ!」


 一瞬の隙を突いたのか、頼みのルイさえも、植物達に拘束されてしまった。


 ……ここまでなのだろうか。ここで殺されてしまうのだろうか。やっぱり、私には無理だったんだ。ヒロインも、勇者も、主人公も………世界を救う事なんて、出来ないんだ。ここで殺されて、最悪の勇者として後世にまで語り継がれるんだ。

 ジワリと涙で視界が霞む。





「あぁ、いい眺めだ。死ぬのが怖いか勇者。もっと泣け」

 グリグリっと思い切り私を踏みつけながら、ドゥムが笑う。悔しい、なんでこんな目にあわなくちゃいけないんだ。って言うかこんな性格の奴が、隠れ攻略キャラとか運営馬鹿だろ。


「死にたくありません、ドゥム様って言ってみろよ。なぁ」


 誰がそんな事を言うものか。どうせ言っても殺されるんだ。絶対に言わない。死んでも、言ってやるか。


「っ!!その反抗的な目が、顔がムカつくんだ。」

 ドンっと思い切り蹴られる。痛い、すごく痛い。でも、殺されるのはもっと痛いんだろうな。





「あぁ、心配しなくてもいい。簡単には殺さないさ。絶望の後殺してやるからな、ほらお前達」

「かしこまりました。ドゥム様」
「仰せのままに、ドゥム様」






 そのまま双子が何かの呪文を唱えた瞬間、緑の光に全身を包まれる。そして、何故か、ギリギリと治ったはずの方の傷が痛み始めた。


「痛いか?痛いだろ?なんせこれは呪いだからな」

 嘲笑いながら、私を見下ろすドゥム。一体何をしたと言うんだ。

 ふと、痛む右肩を見てみれば、何かの印が浮かび上がって居た。

「それは古くから伝わる呪術の一つだ。怨みをこめた印。それが全身に広がった時、死を迎えると言うもの。そうお前はこれから、死への恐怖に怯えながら生きていくんだ。どうだ、辛いだろ?悲しいだろ?でも仕方ない。この俺様にあれだけの事をしたんだ。そのぐらいの報いがあって当然さ」


 死の呪い。旅の当初にも殿下にかけられたなそう言えば。……もしかして王族とか皇族っていうのはそう言うのが好きなんだろうか。にしてもまさか、またかけられるとは思っても居なかった。……って冗談を言っている場合ではない。呪いを、しかも死の呪いを計2つもかけられていることになるなんて……本当に絶望でしかないじゃないか。



「せいぜい、悲しみと絶望に浸り苦しみながら死ぬがいい。勇者よ。まぁ、お前がさっさと宝玉を3つ集めたなら、それを解いてやらんこともないがな」


 ぐはははははは

 そんな笑い声を、、森中に響き渡らせながらドゥム達は何処かへ、去って言ってしまった。















「勇者ちゃん!?大丈夫!?勇者ちゃん」


 三馬鹿が去り、拘束して居た魔法たお陰か、自由の身になったルイが血相をかえこちらに寄ってくる。

「多少体は痛みますが、大丈夫ですよ」
「何言ってるんだ。いや、確かにそれもそうだけどさ、違う。呪いだよ、呪い!!大丈夫なわけないだろ?」
「あははは、大丈夫ですよ」

 本当のところは大丈夫じゃないですどね。……いや、でも、まぁ、呪いをかけられたのは今に始まった事ではないから、慣れたよ、そこまで鬼気迫るものではない……いや、慣れてなんかないよ!!めっちゃ鬼気迫ってる。本当にやばいよこれ。どうしよう。

「兎に角、早く宿に戻ろう。アーサーや、セーちゃん、話して……今後のことを」
「あー、いや、それはやめてください、神官殿。みんなには黙っていてください」
「何言ってるの?馬鹿なの?」

 馬鹿はないだろ、馬鹿は。確かに逆の立場だったら、私もおんなじ台詞を言うかもしれないが、それでも話しては欲しくないのだ。
 別に、要らぬ心配をかけたくないとか、変に気を使って欲しくないとか、そんなバカなものじゃなくて、命に関わる問題だから。いや、死の呪いをかけられた時点で、命に関わっているけど、これ以上寿命を縮めたくないんだよ。兎に角、殿下だけにはこの事を知られたくないんだ。

 ドゥムに呪いを掛けられたことにより、私は現在2つの呪い持ちになってしまった。しかも、ドゥムがかけたのは、必ずいずれ死ぬという、殿下がかけたものよりもずっと厄介な呪いだ。
 殿下の秘密を守ることによって、私の命は繋ぎとめられて居たわけだが、どのみち死ぬのなら、その効力は多少なりとも弱くなる。別に話すつもりはさらさらないが、この事を殿下がどう捉えるか、その先が恐ろしい。

 多分知られたら最後、さらに強力な呪いをかけられるだろう。それだけは避けたい




「頼みますから、言わないで下さい。本当に頼みますから」

 どうかこの通りと、頼み込む。多分ここまで人に頼み込んだのは、初めてだろう。


「……あぁ、もうわかったよ。」

 私の熱意が伝わったのか、諦めた感じにクシャリと頭をかく。

「でも、約束して、苦しかったら必ず言う事。それから、定期的にどこまで呪いの印が広がっているか教えること」

 若干、面倒だが、それぐらいで黙っててくれるものなら安い。

「ありがとうございます。神官殿」

 よかった。これで、最大の心配事は免れた。
 いやぁ、訳を詳しく話したわけでもないのに、納得してくれるなんて、なんていい奴なんだろうか。いつも性職者ってバカにしてごめんね。



「………あ、そうだ。あと、名前で呼んでよ。勇者ちゃん」
「は?」
「せっかく秘密を共有する仲になったんだから、名前で呼んでよ。ルイって。俺も名前で呼ぶからさ。ねぇ、ルーナちゃん」
「…………」



 やっぱり、前言撤回。最終的にそう言うところに持っていこうとするなよ!

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