ヒロインは他に任せて

オウラ

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エスト公国にて

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 なんか、こう色々とあり過ぎて(と言っても実質的には1日しか経ってない)若干忘れていたが、そもそも、私達勇者ご一行が、このエスト公国に来たのには、理由があったからだ。そう、旅の目的である宝玉の一つが、ここにあるかもしれないというか可能性があったから、多分このエスト公国で、最近一気に急成長しているとの噂がある男爵、彼が持っている可能性が最も高いって感じだったからここにいるのだ。てか、可能性が高いとかじゃなくて、事実なんだよ、100%奴が持ってるんだよ。ゲームの設定上そうだったから、絶対、多分、きっと持っているはずなんだよ。
 つまる所だ、なんか色々あったけど、ともかく私達が今一番最優先して行うべきことは、男爵に接触すること。そして、何とかして、男爵から宝玉を奪……じゃなくて、貰い受ける、手に入れることだ。いや、個人的目標としては、セシルちゃんの恋の行方を上手く操作しなくちゃいけないんだけどね。命に代えても、と言うか命のために何とかして、セシルちゃんの恋を成熟させなくてはならないのだが、ゲームを進行させるのも大切故、頑張らなくてはならぬ。同時進行、大変だな。うん、今更だけど自信なくなってきた。

 まぁ、でも、きっと、件の男爵に会うのは特に問題ないだろうなぁ。なんてたってこっちは、リュミエール王国の王子たるアーサー殿下がいるのに加え、昨日から中々帰ってこないディルクがいるのだ。彼らがいれば、すんなりと、男爵にも会えるはず。大公様に男爵を紹介してもらえるはず。……実際ゲームでもそうだった。ゲーム通りなら、この後ディルクが帰って来てなんやかんやあった末、大公様を通して、男爵に接触できるはずなのだ……





「は?……悪い、もう一度言ってくれないか?ディルク」

 一瞬、ドスの効いた声が出かかる殿下。基本的に、外面のいい彼は、外面がいい故に人前では温厚を通していると言うのに……素が!素が出かかっていますよ!殿下。いや、無理もないかもだけど


「っ!!……申し訳ございません、殿下。ですが、私も訳がわからないのです。昨夜までは…」
「ディルク、俺は、もう一度いってくれと言ったんだ。謝れとは言ってない。もう一度、大公からの言伝を教えてくれないか。」
「はい、アーサー殿下。…大公殿下は、会わない。勇者一行には会いたくないと、今朝報告を受けました」

 珍しく焦るディルクと機嫌が悪くなって殿下。あぁ、見ているだけでお腹が痛くなる光景。チラリと他のメンバーに目を向ければ、皆どこか気まずそうにしている。あぁ、居心地が悪い。空気が思い。取りあえず、私の膝に座っているポチでもなでて落ち着こうか。癒やし、大切。と思いうわっふわの毛並みをなでてみるが、特に癒やされなかった。多少のストレス解消になれども、発生源はすぐそこだからね、意味なかったよ。はははは、は、笑えない。




 うーん、それにしても、何で大公様は私たちに会いたがらないのだろうか。ゲームでは、すんなり会うことができたというのに。と言うか、ゲームを抜きにしても、普通は会うものだろう。会わない、会いたくないなんて選択し、例え本心で思っていても選ばないだろ。謎だ、謎すぎる。


「ね、ねぇ。ディルク。でも、昨日は、大公様、殿下に是非お会いしたい。勇者殿の役に立てるよう全力を尽くそうって言っていたよね。」
「えぇ、セシル。そのはずです。そうだったのですが、何故か今朝方急に、会いたくないと」

 つまるところ、急に心変わりする何かがあったと言う事か。

「ディルク、なにか心あたりはないか?大公が、急に意見を変えた理由の」
「いえ、特には……。」
「一日で、急に意見が変わるなんて可笑しいよ。誰かに、入れ知恵されたとかは?どう?昨夜、大公様に謁見した人とかいないの?ディー君」
「いえ、特にそんな話は聞いていません。仮に、誰かが大公殿下に対して何かしら吹き込んだとしても何の目的があってか、それが謎ですし」


 言い換えれば、何か目的があったとしたら、勇者ご一行に会わせると不都合だと考えた人間がいたとすれば……そいつが大公様をそそのかした張本人である可能性が高いと言うことになる。
 でも、仮にそんな人物がいたとしてもどうやって?謁見した人間がいない、大公に誰も会っていないとなれば、その人物を特定しようにもできない。いや、違うか。謁見した人物なんて、ディルクの言うとおり最初からいない。謁見の手順など踏まなくとも、会えるようなもっと身近な人物。内部の人間が、大公様に何かしらを吹き込んだ。もしくは、魔法道具を使って連絡をとったと考えた方が可能性は高いか。
 まぁ、今考えるべきは、誰が大公様に入れ知恵をしたのかと言う事じゃないだろう。いや、それも大切なんだけど、重要なんだろうけど、一番大切な、最優先するべきは一応他にある。

「……でも、大公様に会えないってなると困るよ。これから、どうするの?このままじゃ、男爵に会えないよ」

 そう、そうなのだ。セシルちゃんの言うとおり、一番大切なのは、男爵に会うこと、そして宝玉のありかを知り得ることだ。まぁ、でも考えるに、どうせ大公様に入れ知恵したのもこの男爵なのだろう。宝玉を探す勇者ご一行に自分が所持する宝玉を奪われてなる物かと思い、嘘を吐いたのか、はたまた宝玉の魔力が男爵をそう動かしているのか…審議は不明だけれど、可能性は十分。



「そうだな、どうやって男爵に会うか。それが問題だ。」
「殿下、もう一度明日、大公様に掛け合って見せます。」
「でも、それってどうにもならない可能性の方が高いよね?」
「ですが、大公様に男爵を紹介して貰う機会を得るには、それ以外の方法はないじゃないですか。」
「……でも、そんなことしていたら時間がかかるじゃん。無駄、無駄だよ。」
「確かに、宝玉による災いの恐れはありますが、まだ先の話。我々は、多少なりとも時間の猶予はあるはずですよ。」

 いや、いや、それが困るんだよ、案外ないんだよ、時間が、猶予が。知らないだろうけど、ゲームじゃ結構時間がシビアなんだよ。宝玉の力は、初めは緩やかだが、一定期間を超えると一気に暴走する。暴走してしまうと、それは甚大な被害をもたらすのだ。そうなってしまったら、一巻の終わり。世界は滅びてしまう。そうじゃなくても、こっちは呪いをかけられている。さっさと宝玉を集めるに越したことはない。

「それとも、なにか時間がかかると、困る事でもあるのですか?」
「別に…」

 ふいに、何故かむすっとした顔でこちらを見てくる、ルイと視線が合う。秘密にしといてくれと約束した手前、詳しく話せないのが、不満のようだ。まぁ、既に、一番バレたくない相手にバレてしまったため、もう無効にしてもいいかなと思ったが、やっぱりそれはやめておこう。ひとまず、約束は、そのまま有効にしておこう。話せば急ぎたいっていう理由には、なるだろうけど。そもそも話したところで、それまでで終わるだろう。何かいい案が生まれるわけじゃないだろうし、話すだけ無駄だ。

 ともあれ、このままでいいとも限らない。私は急ぎたい。急いで、宝玉を手に入れたい。自分のために。だとしたら、ここはひとまず、案を出してみるとしよう。
 基本的に、私たちは大公様に男爵を紹介して貰うと考えている。その為には、勇者ご一行が大公に謁見する必要がある。……が、それは現実問題難しい、大体裏で糸を引いているのが男爵なら、絶対に男爵を紹介して貰うのは、男爵に会うのは無理だ。だったら、紹介して貰う事が無理ならば、それならば、もう、いっそのこと


「……あの、いっそのこと男爵の屋敷に侵入したらどうですか。」

 うん、もうこれしかないだろう。
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