ヒロインは他に任せて

オウラ

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エスト公国にて

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「………なんで俺がこんな格好」

 緩やかなウェーブを描くアメジスト色の美しい御髪。スッと伸びた手足に、きめ細かな白い肌。どことなく艶やかな雰囲気漂うその顔立ち。個人的には泣きぼくろに、グッときます。

「くつじょくてき……」
「いや、似合ってますよ?ルイ殿……間違えたルイーゼちゃん」
「ルイーゼちゃんって呼ばないで」

 心底嫌そうな顔も様になっている。
 いやぁ、まさか、ここまで似合うとは……いやぁ、素晴らしい、素晴らしいよ、本当に………男に負けたと複雑な気持ちだけどさ。

 多少魔法を使っているとも言えども、見れば見るほど、女にしか見えないルイの女装。いやぁ、前々から綺麗な顔してんなぁ、色っぽいなぁ、イエメン滅びないかなぁとは思っていたが、まさかここまで女装が、似合うとは思わなかった。

「本当になんで、俺がこんな格好。死にたいよ……」
「まぁ、仕方ないですよ。決まったことですから」
「うぅ、泣きたい。俺は、同意してないのに」
「俺じゃなくて、私……ですよ。ルイーゼちゃん」



 なんで、ルイもといルイーゼちゃんがこんな事になったのか。その理由、昨日の話し合いまで遡ることとなる。



 昨日、男爵にもう会えないならいっそ事、不法侵入してしまえ!と発言した私。
 初めは皆んなに驚かれながらも(察するになんて言うか、彼らは貴族、王族だからそんな野蛮な発想には至らなかったみたい。自分の育ちの悪さが目立つよね、まじ泣ける)それでも、話し合った結果、それを実行することになった。のだが、それに当たって、侵入するにあたり、問題が生まれたのだ。そう、誰がどうやって、男爵の屋敷に行くのかという事。

 顔を知られている、もしくはその可能性が高い、大公様の甥のディルクや隣国の王子のアーサー殿下、ディルクと共に挨拶に言ったセシルちゃん達がその任務を実行するのは難しい。となると、私とアネル、それからルイの3人が、実行できる人間となるわけで。まぁ、取り敢えず、えー、うーん。この3人でどうやる?どうやって男爵邸に行く?夜にこっそり不法侵入?商人のふりして入り込む?一層の事正面突破?などなど話していたところ、男爵の屋敷が、用心棒数名とメイドを募集しているとの情報が天から降ってきたの如く舞い降りてきたのである。

 なんて都合がいいんだ!御都合主義かよ!と思ったが、ゲームなんてそんなもの、そういう展開って多いよなぁという事で納得した。(あれ?でも、この展開はゲームにはなかったよな。………まぁ、いいか、そういうこともあるかもしれないし、気にしてたら負けだよな)

 まぁ、取り敢えず、この情報が確かなら、これに乗っかってしまえばいいとなった結果、私とアネルは用心棒、ルイはメイドとして男爵の屋敷に入り込むことになったのである。









「いや、でも、でもさ!なんで、ルーナちゃんが、用心棒で、俺がメイドなの!?せめて普通逆でしょ!もしくは、みんな用心棒になればいいじゃん!」
「なんでって言われても、用心棒側からも、メイド側からも情報を集めたいてますし?それに、ほら、私勇者ですから?聖剣をあまり長い事手放して置くわけにもいかないので」

 用心棒ならまだしも、メイドが剣を持ってるのはちゃんちゃら可笑しい。
 聖剣は、特別ゆえに、それ相当の力を秘めている。基本的には、勇者以外は扱えないし、持つことさえ難しいが、それでも長時間、放っておくのは気が聞ける。持つことさえ難しいと言っても、無理をすれば盗まれる可能性もなくはないだろうし、個人的に聖剣をあまり手放したくはない。それに………なんというか、聖剣をきちんと持っていないと、嫌なことが起きる予感がするんだ。前に一度、薬草を取りに行く時置いていったら、ドゥム達に呪われたという過去がある故なのだろうか。そんなジンクスを感じているのかもしれない。…………まぁ、とにもかくにも私は、聖剣とあまり離れたくないのである。 まぁ、メイドをやりたくない理由が他にもあるんだけれどね。それは、今話すことではない。


「………うん、ルーナちゃんが用心棒な理由はよくわかったけど。でも、やっぱり納得いかないよ。俺も、用心棒がいい!」
「いや、ルイ……ルイーゼちゃん、我儘を言わないで。それに、ほらあなたは、魔法こそは人より優れているけれど、剣術の方はからっきしじゃないですか。ここ読んでくださいよ。ね?」

 そう言ってビシッと指を差し出した募集要項の応募資格の部分には、「剣術に長けたもの」という文字。つまり、剣術ができないものは、お呼びでないということだ。

 因みに、私の剣術の腕前は、うん、まぁ、そこそこだと思う。アネルが、騎士になる前は、彼の練習に付き合ってた事もあるし、元々自分が死なないレベルには鍛えていた。旅の間にも、鍛錬を積みその技能は更に成長した……と思う。現に、この国でも強いとされる騎士団に所属するアネルと勝負した時は、10本に一回は勝てる程度だし(手を抜かれている可能性はあるけど)殿下にも、珍しく「一般人よりは多少マシなレベル」と褒められた。あれ、褒められたのか?
 うん、まぁ、兎に角だ。そこそこ私の剣術の技能は悪くないというわけで、用心棒の条件にも当てはまるはずなのだ。まぁ、用心棒になるには、剣術の試験が課せられるが……なんとかなるだろう。




「まぁ、私は頑張って用心棒やるんで。剣術がダメダメなルイーゼちゃんは、メイド頑張ってください。」
「確かに俺は剣術はからっきしだよ。っく!あっち剣の扱いなら長けてるのに!!むしろ、プロ級なのに!」

 いや、お前さらっと下ネタを言うのはやめろ。今は一応女の子なんだから!

「ルイ殿、本当の女の子にしてあげましょうか?ルイーゼちゃんに生まれ変わらせてあげましょうか?スパッといきますか?」
「や、やめて!」

 ひぇっと顔を青くさせながら、驚くルイーゼちゃん。うん、普段なら果てしなくムカついていたが、女装をした姿だととっても綺麗で可愛いから許せてくる不思議。これが美人の力なのだろうか。女の私でも、見惚れる美しさ。うーん、下手をしたらルイを本物の女だと勘違いして、うっかり手を出してしまう男も現れるかもしれない。それこそ、男爵に目をつけられたら大変かもしれない。


「ルイーゼちゃん…………変な男について言っちゃだめですよ。」
「唐突になに俺は、なにを心配されてるんだろう。嫌な予感しかしないけど」
「何かあったら、言ってくださいね。ちゃんと守ってあげますから」
「そして、俺は君が、本当に女の子が偶に疑いたくなるよ。………胸キュンさせないで!俺の男としての自信がなくなるから!!」

 そんなものさっさと捨ててしまえ!
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