トゥモロウ・スピーチ

音羽夏生

文字の大きさ
93 / 237
8章 ※

9

しおりを挟む
「やっ、もう、そこっ、……ぁあん、いじる、っは、やめっ、……ゆび、ひぃんっ、……ぬいてぇ!」

 いつ終わるとも知れない責め苦に、制止の声が嗚咽で震え呂律が怪しくなっても、一洋から許しは与えられない。

「全部吐き出して、忘れてしまえ。国も義務も、家族も、何もかも、今は――」

 与えられ続ける愉悦の深さに思考が麻痺し、それを生み出す指の動きにしか頭が回らない。奥を探り、粘膜を擦り、快楽の源泉を突く指先の行方だけに、意識を持っていかれる。
 欲望だけに支配される、一匹の原始的な獣。人の形をした獣に堕ちた志貴の双眸は、快楽に染められ、虚ろになっていく。

(気持ち、いい……こんなの、駄目、なのに……)

 快楽に駆り立てる容赦のない鞭に打ち据えられ、心とは裏腹に肉体は容易く引きずられる。志貴の欲望は、一洋の望むままに引き出され、赤裸々に曝された。
 尻の中を弄られる感覚を、もう不快と言い繕うことはできない。指の腹で、その我慢ならない場所を押されると、涌泉のように鈍い疼きが下肢に広がる。堪え切れず、腰を突き上げて悶えてしまうのだ。

「あ、ぁんっ、ああぁ――…」

 砂を搾るように最後の白濁を吐き出した時には、蜜口がひりつき、快楽と苦痛の境界も曖昧になっていた。びく、びくっ、と壊れたゼンマイ仕掛けの人形のように、濡れた体が不規則に痙攣を続ける。
 すべての感覚が飽和した中で、志貴の意識は真っ白な闇に弾け飛んでいた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

少年探偵は恥部を徹底的に調べあげられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...