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猛獣使い
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彼を煽るような真似は頼むからしてくれるなと本気がにじむ懇願を、エリオットはさらりと受け止める。その不自然な自然さに、レジナルドはピンときた。
相手の都合を考えずに従僕を選ぶなら、この英国にエリオット以上の人材はそうはいない。
「なるほど、わたしの前は君だったんだね。傍迷惑にも彼の標的に据えられていたのは」
「…さすがに旧い御友人だけありますね、卿のことをよくおわかりだ」
滅多なことではその繊細な容貌を曇らせることがない彼が苦笑するほどに、ジェイムズの勧誘は凄まじいものだったらしい。
(監督生を務めていた頃ならまだしも、十年も経った今、どうしてあの問題児と一対一で向き合わなければならないんだ?)
この先しばらく続きそうな受難の日々に、一瞬勤務中であることも忘れ、レジナルドは思わず天を仰いだ。
「…彼は思い立ったら、何が何でも成し遂げなければ気が済まない男だということも知ってるよ。どうやって逃げおおせたんだい?よければその秘訣を教えてほしいのだけど」
「秘訣?」
二、三度目を瞬かせ、エリオットは思わずといった風に破顔する。そして、意志の輝きを秘めた強い瞳をレジナルドのそれに合わせ、静かに答えた。
「あなたは百も承知のはずですよ、レジィ。今取り組んでいる仕事への情熱――わたしたちを衝き動かす行動原理はそれだけです」
相手の都合を考えずに従僕を選ぶなら、この英国にエリオット以上の人材はそうはいない。
「なるほど、わたしの前は君だったんだね。傍迷惑にも彼の標的に据えられていたのは」
「…さすがに旧い御友人だけありますね、卿のことをよくおわかりだ」
滅多なことではその繊細な容貌を曇らせることがない彼が苦笑するほどに、ジェイムズの勧誘は凄まじいものだったらしい。
(監督生を務めていた頃ならまだしも、十年も経った今、どうしてあの問題児と一対一で向き合わなければならないんだ?)
この先しばらく続きそうな受難の日々に、一瞬勤務中であることも忘れ、レジナルドは思わず天を仰いだ。
「…彼は思い立ったら、何が何でも成し遂げなければ気が済まない男だということも知ってるよ。どうやって逃げおおせたんだい?よければその秘訣を教えてほしいのだけど」
「秘訣?」
二、三度目を瞬かせ、エリオットは思わずといった風に破顔する。そして、意志の輝きを秘めた強い瞳をレジナルドのそれに合わせ、静かに答えた。
「あなたは百も承知のはずですよ、レジィ。今取り組んでいる仕事への情熱――わたしたちを衝き動かす行動原理はそれだけです」
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