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白き花嫁は美しく咲き誇る
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「本当に綺麗よ、エリーザ」
「サラ、あまりはしゃがないで?恥ずかしいわ」
純白のドレスに身を包んだ私の回りながら、サラが何回目か分からない褒め言葉を伝てくれて、またしても鏡に映る自分の顔が赤くなっていることに気付いてしまう。
そんな私を見て嬉しそうに笑うものだから、釣られて微笑んでしまう。
親友の笑顔はやっぱり不思議な力を持っている。
「こんな夢のような日が来るなんて。私、幸せよ」
「ありがとう。私も今生きている喜びと緊張で、心臓がおかしくなりそう」
「ふふ。私も……あんな一途すぎて傲慢な男とまたくっつかなきゃいけなかったかもしれないと思うと心臓自ら握りつぶしそう。聖女だから王族と結婚しなきゃいけないのは百歩譲って良しとして、なんであの傲慢男だったのかしら」
ぶつくさ何かを呟いているサラだけど、叩かれた扉の向こうからやって来たフォルスに肩を震わせた。
「サラさん、申し訳ないんだけど、父上が緊張して胃が痛いっていうから、胃薬煎じてくれないかな?」
「はっ、はい!喜んで!!」
嬉しそうに尻尾を振って行く犬のように、フォルスと共に部屋を出て行ったのとすれ違うように殿下が入ってきた。
「……」
入ってきたのはいいけれど、無言のままその場に固まっている殿下に声を掛けようとするけれど視線を逸らされた。
「殿下?」
「すまない。見惚れただけだ……」
「ふふ。似合ってますか?」
「ああ。世界一美しい」
幸せそうに微笑む殿下に釣られて私も笑って、一緒に部屋を出た。
あの日、私は地獄のような夢を見た。
大好きな人に殺される、最悪な夢を繰り返し見ていた。
でも……大好きな人もまた同じように救えなかったと後悔に溺れ、自ら命を絶ち、亡くなった兄の悲しみに閉じこもりになった弟を想う聖女も自分の無力さに悔やみ、世界の危機を放棄した。
誰も幸せになれないと、諦めていた大好きな人は遂に悲しみの鎖を断ち切ることに成功した。
誰もが幸せになれなかった世界が変わった大きな瞬間に私は死んで、またこうして人生を歩み始めた。
新たな人生で、死なないように歩んだ悪役令嬢としての立ち回りは、大好きな人にベタベタだったはずの私の人格が変わってしまったのかと困らせてしまうこともあったらしい。
でも、想いは……私の中に燃える殿下を想う気持ちだけは何も変わってなどいなかった。
大勢に祝福される中、私達は見つめ合って神父の声にこれまでのことを馳せた。
「健やかなる時も病める時も、富める時も貧しき時も、共に歩み、死が二人を分かつまで――」
私がこれまで死んで届けられなかった想いと共に、殿下を想う。
例えまた、繰り返される日がやって来たとしても……。
「永遠の愛を誓いますか?」
「「誓います」」
この愛がある限り、私は何度でも貴方に愛しているを伝えにいきます。
FIN.
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