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へっぽこ召喚士、訓練に翻弄される②

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 続々と心を開いて騎士達に打ち解けて訓練に取り掛かる魔獣達を見つめながら、まるで子供の成長を見ているような気持ちに、ミアの目頭は熱くなる。


(あれだけ……あれだけ人に心を閉ざしていたっていうのに、よく頑張ったねっ!偉い、偉いよ~!!)


 小さく拍手をしながら、騎士と魔獣達の様子を遠巻きに眺めていた。

 こうしてようやく始まった野外での実践的訓練はミアには専門外なため、ただ見守ることしか出来ないが、達成感に満ち溢れていた。

 ――残る問題を、一つ除いては。



「フェンリル。あなたは団長とよ」


『断る』


「何やかんや、あなた達って似た者同士なのよ?」



 威圧的な所も、少々強引な所もミアはどことなく似ていると密かに思っていたのだ。決して、口に出しては言えたことではないが。



『オレはあいつに心を許すつもりもない。諦めろ』


「そんなあ……」


『それより、雑用係として仕事しないとまたあのクソ獣人に吠えられるぞ』


「うっ……」



 休憩所のテントの設営に、厨房から手渡された大量の昼食の準備、万が一の怪我の処置など、雑用係を任されているのだ。

 力仕事を女に任せる上司を、恨みたくなる気持ちもないわけではない。

 しかも、この訓練が終わったら、魔獣達の世話もしなければいけないと思うと、今日の疲労具合はとてつもない。

 重たい気持ちを消し去るようにしながら準備に取り掛かると、風が吹き抜け大きな影が落ちた。



「グリフォン!そのまま旋回だ!」


「クルルー!」



 大空を自由に羽ばたくグリフォンの背には、シュエルが慣れた様子で跨って操縦する姿は、見習いとは言えども魔獣騎士そのものだった。

 その様子を、地上から見上げるミアは、感動のあまり言葉を失った。

 風を切るように飛ぶグリフォンはとても美しく、白い翼で大空を駆け抜ける、魔獣本来の姿を手に入れたグリフォンを見て気合いが漲った。頑張る彼らのためにも、ここでやれることをこなしていこうとせっせと体を動かす。

 休憩所の設営を何とか終わらせた頃には、大粒の汗がじわりと額に滲んでいた。

 少し休憩しようと、ミアは林の木陰へと移動して、遠くから訓練する彼らを見つめた。



「ふう……」



 心地よい風が額の汗を拭うように流れていき、動いて熱くなった体の体温を下げていく。

 そっと目を閉じ聴覚を研ぎ澄ませるようにすると、訓練する彼らの足音や声が、地面を伝って響いて聞こえてくる。騎士と魔獣の足音が一つに合わさって、大地を揺らしている。

 そんな彼らの足音に心安らいでいたのもつかの間、予想外な声が上から掛けられた。



「こんな所でサボるとはいい度胸だな」


「ひっ!」



 目を開ければすぐ横にリヒトが立っていて、動き出そうとするミアを逃がさまいと隣に座り込んできた。

 制服のスカートの裾を下敷きにされ、動くに動けなくなったミアは、身を縮こませることしかできない。

 二人並んで訓練に励む騎士と魔獣達を見つめながら、ドキドキと鳴り響く心臓がやけにうるさく感じるのはどうしてだろうと首を小さく傾げる。おまけに触れた肩から伝わってくる彼の熱に、せっかく冷ました体温がまたしても上昇する。



「団長は、その、どっどうしてここへ?」



 気を紛らわそうと口を開くが、動揺する気持ちまでは抑えられなかった。



「部下達全員の訓練相手をしているんだ。俺にだって、休憩は必要だろうが」


「そ、そそ、そそうですよね!」



 まるで休憩をするなと上司に文句を言ってしまっていることに繋がりかねない質問に、慌てて口を閉ざした。




 
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