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へっぽこ召喚士、訓練に翻弄される①
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昨日の出来事のせいもあってか、中々寝付けないまま迎えた野外訓練当日。
いつもより早く起きたミアは、いつも通りの仕事に加えて、リヒトの指示通りの準備の最終確認を済ませると、王都近くの草原まで一斉に魔獣達を連れてやって来ていた。
ピクニック日和とも言える温かい陽だまりに、救われるようにしながら、いざ始まった訓練に身を引き締める。
落ち着きのなさは、魔獣達にも伝わりかねないと、まずは深呼吸をして心を落ち着かせた。
「ミア・スカーレット。準備は任せた」
リヒトに呼ばれて、謎に顔が赤くなりそうになるのを堪えながら彼の元へと向かう。
昨日の宣戦布告とも言える言葉が、ミアの頭から離れない。
それを振り切って、用意してきた騎士と魔獣の組み合わせリストを抱きしめながら、魔獣の手綱を手渡した。
「槍使いのあなたには、アルミラージをお願いします。俊敏性に優れていて、この子の一本角はあなたの武器をより活かしてくれるはずだから」
「分かりました」
「シュエルくんは、グリフォンをお願い。風魔法を使えるあなたと、相性はバッチリよ」
「分かった!」
仕事が終わってから、リヒトに指示を出された相性の組み合わせリスト夜な夜な作成し、そのリスト通りにペアを作っていく。
全部を知った訳では無いが、ミアが築き上げてきた関係の中でヒントはたくさん転がっていたのだ。
好きな物同士の組み合わせや、できない何かを補う組み合わせ。関係を築いて知れたことは、その組み合わせを強く結びつける。
魔獣の事もフェンリルに全て聞くのではなく、これまで空いた時間で王都の国立図書館に通ったりして、魔獣についても密かに調べ上げていた。
完成したリストに書かれた組み合わせは、互いにとっていい相棒と呼べるとミアには自信があった。
手綱を手渡した騎士達は、明らかに魔獣の瞳の奥に怯える気持ちがないことを悟り、そのまま心を通わせるために魔力を解放していく。
(大丈夫。彼らはあなた達にとって大切な相棒で、家族になる人達だから。だから……安心して心を開いて)
祈るようにしながら、その幻想的な光景を見つめていると、遂に魔獣達は心を決めて騎士が解放する魔力に混ぜるように、自分の魔力を放った。
確かめ合うように、二つの魔力がゆっくりと各々に近づいていく。
そして二つの魔力が色鮮やかに混じり合い、一筋の光が出来上がると、次の瞬間には魔獣は嬉しそうに騎士に体を擦り付けた。
挨拶を交わし合う姿に、成功したのだと分かると、胸が熱くなった。
「やった……!!」
自分以外に懐く魔獣達の姿に思わず声を出して喜ぶと、魔獣達はミアに見守っていてねというかのように目を細めた。
感動のあまり自分の仕事を放棄しかけたことに慌てて気づき、次々と騎士達に相性が合う魔獣の手綱を託した。
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