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9話
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「うっ…またか…」
下腹部に魔力回路を作られて以降、グレンが俺を呼ぶ時には必ずコレが反応する。
コレが生理現象なのか、彼からの呼び出しなのかたまに分かりにくい時があり、非常に不便だ。
「グレン!今度はなに?」
扉を勢いよく開けるが、彼は涼しい顔で本を読んでいる。
「あぁ、紅茶を持ってきてくれ」
「人形を使えばいいじゃないか!」
「人形共を動かすにも多少私の魔力が必要なのだ、使用人なら魔力の節約くらい手伝え」
正論を言われてしまった。何も言い返せず、頬を膨らませる。
「それとアルク、お前も自分の分を用意するといい、腹が減ったなら焼き菓子でもついでに持って来い」
そのうえおまけまで付けてもらい、もはや何に怒っているのかよくわからない状態になってしまった。
すごすごとグレンの部屋を出て厨房へと向かう。
少しだけ人形に手伝ってもらおうと思ったが。どうやら厨房には人形がおらず、他の持ち場に行ってしまっているようだ。
「えーと、紅茶紅茶」
紅茶とお菓子を求めて食料庫を覗く。
この広い食料庫では色んな調味料や麺類、缶詰などが並んでおり、探すのに一苦労だ。
「お、あった」
しかし紅茶の缶は少し高い所にある。
人形なら腕を飛ばしたり、背の高いグレンなら簡単に届くのだろうけど。
「あーあ、俺も魔法が使えたらなぁ」
グレンの真似で腕を前に突き出す、影に動くように命じながら、缶を見つめる。
「……まぁ動くわけ無いんだけどね」
幼い頃、そういう念力や飛行能力といった類に憧れていた事を思い出し馬鹿馬鹿しくなる。
何か足台になるものを探そうと振りむく。
カラン、ガシャンッ!!
突然の缶の音でびっくりして少し飛び上がる。
どうやら目当ての紅茶の缶が落ちてきたようだ。
「え?……なんで?」
自分の足元の影を見る
そして前方に伸びるよう、頭の中で思い描くとなんとゆっくり影が動き出した。
そのまま椅子の影にくっつけてこちらに引こうとすると、少しずつ椅子が動く
「すごい!!!俺ってもしかして魔法の才能が━━━━━━━」
温かい液体が手に触れる。
気がつくとあまりの出来事に興奮しすぎたのか、鼻血が出てきてしまったようだ。
そんな事より早くグレンに報告しなきゃ。
「………あ、あれ?」
しかし足が震えて動かない。
鼻血を拭こうと思っても手は鉛のように重く、動かない。
もしかするとこれ、やばい?
段々と立っているのもしんどくなる。心の底からグレンに助けを求めるが、声が出ない。
地面が近づいてくる。
もうだめだ。
「やれやれ、やたらと世話の焼けるメイドっぷりだな、アルクよ」
ギリギリの所でグレンに抱き抱えられる。
「お前に預けたわずかな魔力が急に消えたかと思えば、まさか魔術を使っていたとはな」
俺は赤子のようにグレンに鼻を拭われ、そのまま彼に抱えられたままぐったりとするしかできなかった。
「さて、ここまで身体に症状が出ているなら応急処置をせざるを得んわけだが」
グレンが赤い瞳で俺を見つめている。
とても寒い。
グレンの熱がほしい。
俺は出せる限りの力を振り絞ってグレンの顔を触る。
グレンの顔が段々と近づいていき、俺は彼の熱を奪うように唇に口づけをした。
「んっ……」
スカーレットとは何度かキスをした事があったが、これはそれとは全く違う、キスというよりはもはや別の行為だった。
「んっ…はぁっ…ちぅ…」
本能的にコレが今一番必要な行為だと身体が理解しているのか、グレンの口から魔力が送り込まれてくるのを感じ、貪るように舌を絡めていく。
そうしていると、段々と身体に力が入るようになってきた。
「手足を動かせるか?」
「んっ……はぁ…グレン…?」
グレンからそっと地面に降ろされる。
そして俺の身体が動くようになったのを確認すると、グレンはキスをやめてしまった。
俺はもっと欲しいのに、急にやめないでほしい。
俺はグレンの腕を胸に引き寄せる。
「少し待て、空の胃に俺の魔力は毒にもなりかねん」
「毒でもいい……グレン……」
俺は完全にだだをこねる子供のようだ。
こんな事普段は絶対しないのに、俺はどうしてしまったのだろう。
きっと魔力回路のせいだ、そうに違いない。
俺はそう納得させる。
グレンは人形に紅茶を用意させると、厨房を出てすぐ近くにあるソファに俺を座らせる。
「ほら、食べろ」
グレンからクッキーを口に押し付けられ、俺は一口でそれを食べる。
とてもおいしい、身体が飢えているのか、一層そう感じる。
次にグレンは紅茶を手に取るとそれは自分で飲み始めてしまった。
俺のは?そう聞こうとすると、紅茶を置く。
あぁ、なるほど。
「んっ……んっ…」
口の中に紅茶の香りが広がり、先程食べたクッキーが押し流されていく。
彼から供給される紅茶はとても甘美で、一滴すら惜しい。
そのまま紅茶を求め彼と舌を絡めていく。
「んっ…ちゅっ…れろ……ちゅ…」
グレンのキスはとても上手だ。
俺の求める動きを完全に理解しているようにぴったりと舌が絡む。
それに加え、紅茶を溢すことなく口へと押し流してくる。もしかしたら何か魔術を使っているのかもしれない。
ともかくこんなキスは覚えてはいけない気がする。
魔力とお腹が満たされていくのを感じると同時に、スカーレットの事を想う余裕が出てきてしまい、罪悪感で心がチクチク痛む。
しかしこれはあくまで助けてもらっているだけで、しかもグレンは男だ、万が一にも心変わりがしたりする事はない。
そう何度も心に言い聞かせ、結局彼とは紅茶が無くなった後も小一時間じっくりとキスをしてしまうのであった。
下腹部に魔力回路を作られて以降、グレンが俺を呼ぶ時には必ずコレが反応する。
コレが生理現象なのか、彼からの呼び出しなのかたまに分かりにくい時があり、非常に不便だ。
「グレン!今度はなに?」
扉を勢いよく開けるが、彼は涼しい顔で本を読んでいる。
「あぁ、紅茶を持ってきてくれ」
「人形を使えばいいじゃないか!」
「人形共を動かすにも多少私の魔力が必要なのだ、使用人なら魔力の節約くらい手伝え」
正論を言われてしまった。何も言い返せず、頬を膨らませる。
「それとアルク、お前も自分の分を用意するといい、腹が減ったなら焼き菓子でもついでに持って来い」
そのうえおまけまで付けてもらい、もはや何に怒っているのかよくわからない状態になってしまった。
すごすごとグレンの部屋を出て厨房へと向かう。
少しだけ人形に手伝ってもらおうと思ったが。どうやら厨房には人形がおらず、他の持ち場に行ってしまっているようだ。
「えーと、紅茶紅茶」
紅茶とお菓子を求めて食料庫を覗く。
この広い食料庫では色んな調味料や麺類、缶詰などが並んでおり、探すのに一苦労だ。
「お、あった」
しかし紅茶の缶は少し高い所にある。
人形なら腕を飛ばしたり、背の高いグレンなら簡単に届くのだろうけど。
「あーあ、俺も魔法が使えたらなぁ」
グレンの真似で腕を前に突き出す、影に動くように命じながら、缶を見つめる。
「……まぁ動くわけ無いんだけどね」
幼い頃、そういう念力や飛行能力といった類に憧れていた事を思い出し馬鹿馬鹿しくなる。
何か足台になるものを探そうと振りむく。
カラン、ガシャンッ!!
突然の缶の音でびっくりして少し飛び上がる。
どうやら目当ての紅茶の缶が落ちてきたようだ。
「え?……なんで?」
自分の足元の影を見る
そして前方に伸びるよう、頭の中で思い描くとなんとゆっくり影が動き出した。
そのまま椅子の影にくっつけてこちらに引こうとすると、少しずつ椅子が動く
「すごい!!!俺ってもしかして魔法の才能が━━━━━━━」
温かい液体が手に触れる。
気がつくとあまりの出来事に興奮しすぎたのか、鼻血が出てきてしまったようだ。
そんな事より早くグレンに報告しなきゃ。
「………あ、あれ?」
しかし足が震えて動かない。
鼻血を拭こうと思っても手は鉛のように重く、動かない。
もしかするとこれ、やばい?
段々と立っているのもしんどくなる。心の底からグレンに助けを求めるが、声が出ない。
地面が近づいてくる。
もうだめだ。
「やれやれ、やたらと世話の焼けるメイドっぷりだな、アルクよ」
ギリギリの所でグレンに抱き抱えられる。
「お前に預けたわずかな魔力が急に消えたかと思えば、まさか魔術を使っていたとはな」
俺は赤子のようにグレンに鼻を拭われ、そのまま彼に抱えられたままぐったりとするしかできなかった。
「さて、ここまで身体に症状が出ているなら応急処置をせざるを得んわけだが」
グレンが赤い瞳で俺を見つめている。
とても寒い。
グレンの熱がほしい。
俺は出せる限りの力を振り絞ってグレンの顔を触る。
グレンの顔が段々と近づいていき、俺は彼の熱を奪うように唇に口づけをした。
「んっ……」
スカーレットとは何度かキスをした事があったが、これはそれとは全く違う、キスというよりはもはや別の行為だった。
「んっ…はぁっ…ちぅ…」
本能的にコレが今一番必要な行為だと身体が理解しているのか、グレンの口から魔力が送り込まれてくるのを感じ、貪るように舌を絡めていく。
そうしていると、段々と身体に力が入るようになってきた。
「手足を動かせるか?」
「んっ……はぁ…グレン…?」
グレンからそっと地面に降ろされる。
そして俺の身体が動くようになったのを確認すると、グレンはキスをやめてしまった。
俺はもっと欲しいのに、急にやめないでほしい。
俺はグレンの腕を胸に引き寄せる。
「少し待て、空の胃に俺の魔力は毒にもなりかねん」
「毒でもいい……グレン……」
俺は完全にだだをこねる子供のようだ。
こんな事普段は絶対しないのに、俺はどうしてしまったのだろう。
きっと魔力回路のせいだ、そうに違いない。
俺はそう納得させる。
グレンは人形に紅茶を用意させると、厨房を出てすぐ近くにあるソファに俺を座らせる。
「ほら、食べろ」
グレンからクッキーを口に押し付けられ、俺は一口でそれを食べる。
とてもおいしい、身体が飢えているのか、一層そう感じる。
次にグレンは紅茶を手に取るとそれは自分で飲み始めてしまった。
俺のは?そう聞こうとすると、紅茶を置く。
あぁ、なるほど。
「んっ……んっ…」
口の中に紅茶の香りが広がり、先程食べたクッキーが押し流されていく。
彼から供給される紅茶はとても甘美で、一滴すら惜しい。
そのまま紅茶を求め彼と舌を絡めていく。
「んっ…ちゅっ…れろ……ちゅ…」
グレンのキスはとても上手だ。
俺の求める動きを完全に理解しているようにぴったりと舌が絡む。
それに加え、紅茶を溢すことなく口へと押し流してくる。もしかしたら何か魔術を使っているのかもしれない。
ともかくこんなキスは覚えてはいけない気がする。
魔力とお腹が満たされていくのを感じると同時に、スカーレットの事を想う余裕が出てきてしまい、罪悪感で心がチクチク痛む。
しかしこれはあくまで助けてもらっているだけで、しかもグレンは男だ、万が一にも心変わりがしたりする事はない。
そう何度も心に言い聞かせ、結局彼とは紅茶が無くなった後も小一時間じっくりとキスをしてしまうのであった。
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