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倒錯嫉妬仕置・高井
三
しおりを挟む「この女、俺だろ」
折角、締め切り前に、艶本の作品を仕上げたというに、高井は原稿用紙を親の仇のように睨みつけている。
「ええ、君、読心術でも心得ているのか?」と半ば驚き、半ばからかって返す。
とたんに、原稿用紙から僕のほうに、睨みを利かした。
「時さんが、教えてくれた。
町で俺が女連れなのを、見かけたってな。
つい、お見合いの話をしてしまったが、知らなかったあんたに、教えてよかったか?
って気に病んでたよ」
「そうか。でも、君、勘がいいよ」とくつくつと笑う。
眉間の皺を深めた高井が「嫉妬の仕方がややこしいんだよ、あんた」とぼやくのに、余裕で否定はしなかった。
が、「しかも悪質だ」とつづいたのは、意外だった。
「俺が犯されるのを想像して、作品にするなんてな。
あんた、何も分かっちゃいない」
おもむろに原稿用紙の上を持ったなら、一息に引き裂いた。
そりゃあ、じっとしていられず、「ちょっと、ちょっと!」と手を伸ばす。
「締め切り一日前に、しあげた原稿を没にするのか!?
今から書き直せと迫るほうが、悪質だろう!」
「締め切り一日前と、いちいち偉そうに口にするな。
筆が遅い、あんた仕様の締め切りであって、本来の締め切り日には、十分、間に合ってないんだよ」
終いまで告げる前に、今度は縦に引き裂いた。
「いや!だったら尚更、勘弁してくれ!」と跳びかかったところで、原稿が放られ、腕を掴まれる。
そのまま畳に押しつけられ、体が倒された。
高井のあぐらに乗って、四つん這いになりつつ、顔を上げれば、目を細め、冷ややかに見下ろされて。
「あんたも知っているだろ、俺が十五で志願兵になったのは。
自分より体格がいい男共に囲まれて、身を守るのに、どれだけ心血を注いだか」
たしかに、兵役時代に考えが至らなかったのは粗忽だった。
「す」まないと、謝らせてもくれず、着物をめくられ、露になった尻に、掌を打ちつけられる。
齢が十も下の男に、子供にするような、お仕置をされる屈辱と、単に痛いのとで、目に涙が滲んだ。
だけでないのが、僕のいただけないところで、「く、あっ・・・!」と体を跳ねて、喘げば、「このっ!」と苛ただしげに、また尻を叩かれた。
肌が熱くひりつくのに、「ん・・・!」と身を震わせつつ、腰を上げる。
「ぐっ」と歯軋りするような音が、耳についたが、再三、尻を叩いてはこないで、着物の襟を掴み、僕を引っぱりあげた。
齧りつくように口付けされ、その勢いのまま、口内を舌で蹂躙される。
尻の疼痛と、口内の生温かく粘着な快さが、入り混じった倒錯的な感覚が悩ましい。
堪らず、「ふ、あ、あ、はあっ、ん」と腰を揺らしつつ、高井の太ももに乗せていた手を、内に滑らせた。
固い膨らみに手が至ったなら、とたんに口から舌を抜き、顔をあげた。
闘牛のように、青筋を立て、鼻息荒くしながらも、下の手を退けようとも、着物の襟を放そうともしない。
く、と笑いをこぼし、おもむろに、あぐらに跨り、胸を突き合わせて、僕の固くなったのを、そこに擦りつける。
「は、あっ、ん」と感じ入る僕の目前で、野暮にも高井は口をへの字のままにしていたから「鳴かずなら、鳴かせてやろう」とばかりに腰を寄せ、しきりに揺らした。
そのうち、口の隙間から、熱っぽい息が漏れだし、それでも、歯を食いしばりつつ、「くそっ・・・!」とこぼしたもので。
「け、っきょく、あんたの、思い、通りか・・・!」
返事の代わりに「は、ん、あ、あ」と喘ぎながら、笑みをこぼせば、悔しげに口角を歪めて、首に噛みついてきた。
と同時に、尻を手で掴み、揉みつつ、揺すってくる。
より盛んに、互いのが擦れ合い、噛みちぎらんばかりに、首に歯が食いこんでくるのも善くて、高井の頭をかき抱き、甲高く鳴く。
遮二無二、首に噛みつく高井に、愛おしさを覚えながら「健やかな家庭?冗談じゃない」と、どうしようもなく、心をささくれ立たせていた。
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