あっさりと初恋が破れた俺、神からのギフトで倒して殺して奪う

差が解る

「っ、ッ……ッッッ！！！！　ガッ！！！　っ！！！！　ッ、ゴアアアアアアッ！！！！」

スケイルコングは、目の前の人間との戦闘を始めてから、イライラが続いていた。

こちらの攻撃は当たらず、自分の攻撃は中々当たらない。
それに関しては、特に珍しいことではなかった。

身体能力は高いが、攻撃が単調となれば……戦い慣れている冒険者やモンスターからすれば、そこまで恐れることはない。
ただ、スケイルコングの鱗は非常に堅く、魔法耐性も持つ鉄壁の鱗。
それに加えて剛拳から繰り出される一撃は、多くのタンクを震え上がらせるほどの威力を有している。

攻撃は躱せるが、それでもダメージは与えられず、重圧は浴びせ続けられる。
その結果、必ずどこかでミスを起こし……スケイルコングはそのミスを逃さず、確実に叩き潰す。

普段であれば、そろそろそういった結末が訪れていてもおかしくない。

「ふっ、ふふふ……っ、ッ！！！　フッ！！！　シッ！！！！！」

たった一人で自分と戦っているにも関わらず、女剣士は笑い続けている。

そんな人間との戦闘経験も一応あるスケイルコングだが、一人で戦いながら笑い続ける人間との遭遇は初めて出会った。

イライラが溜まっているスケイルコングに、まだ戦わなければならないであろう人間が二人残っているのに！！！　といった焦りはない。
それは……そもそも頭にティールとラストの存在がすっぽ抜けているだけであり、焦りの感情自体はあった。

何故なら、自慢の鱗が斬られ、捌かれているから。
一つや二つ、二か所や三か所程度ではない。

その数は既に十を越えている。
出血多量に至るような血は流れていないが、再生などのスキルは有しておらず、生物としてのそういった能力……トレントの様な周囲の木々から生命力を吸収するといった力もない。

そのため、一度傷付いた箇所を狙われれば……そこからズバッと斬り裂かれ、腕や脚の切断……それが致命傷となり、そのまま亡くなってもおかしくない。

「っ、ッ！！　ッッッ…………ゴ、ルゥアアアアアアアアッッッッ！！！！！！！」

生物として、このまま死にたくない。
強者として……目の前の人間に負けたくない。
その思いが爆発した結果、スケイルコングはこれまで全くやってなかった行動を取った。

相手の動きのリズム、攻撃してくるタイミングの把握。
普段からやっていなければ、中々上手く読めるものではない。
無茶な選択だと……スケイルコングにツッコむ者は、誰一人としていない。

しかしこの鎧ゴリラは、獣の直感を頼りに、本当にアキラが攻撃に百パーセント移る瞬間を把握。
ワンテンポ動きをずらし、渾身の拳撃を叩き込む。

「っ！！　疾ッ！！！！！！」

「っ！！！！！！？？？？？」

だが……アキラは、経験として相手の呼吸やリズムを読むことを何度も何度も繰り返してきた侍。

（信じた私の、勝ちだ）

上段から勢い良く振り下ろすとみせて、そのまま前方に回転しながら跳び……拳撃を回避しながら、伸ばされた腕を台にして駆け……受ける準備が出来ていなかった首に刃が振り抜かれた。

スキル刀技、居合い両断。

本来は安定した体勢で放ってこそ、最大火力を発揮出来る攻撃技だが……ここ最近の戦いの中で、一番といっても過言ではない集中力を発揮していたアキラの姿勢は、体勢はブレることなく最高の居合い両断を放った。

「はぁ……はぁ……………………強かったぞ」

アキラは、まだスケイルコングが自分に勝つことを、攻めることを諦めていないことを解っていた。

女性でありながら、同世代の中では男女関係無く上位に入る腕前を有していた。
そんなアキラだからこそ、試合を行う相手が終盤、既に諦めているのか……理由はなんであろうと、アキラに負けたくないと、絶対に勝ちたいと闘志を燃やす者たちの差が、表情で解るようになった。

「っ！！！」

とはいえ、それでもスケイルコングが激しい重圧を受けていたアキラは自分が思っているより体力を消耗しており、スケイルコングの死体を回収する前に膝を地面に付いてしまった。