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八百三十九話 オーバーキルだった?
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「冒険者らしくて、一番解り易い内容でしょう」
「ッ…………」
「それとも、このまま何もせずに解散してくれますか? 俺としては、それが一番有難いですが」
決して挑発しようという意図はない。
ただ、アラッドの言葉が、彼らの逃げ道を塞いだ。
「挑ませて、貰おうか」
「それでは、今回の一件に関して不満がある人たちは、全員来てください」
ロビーにいる同業者たち、全員に告げてアラッドは先に訓練場へと向かった。
そしてエルフ細剣士を筆頭に、彼がリーダーのパーティー。
結果としてヴァジュラに殺されることはなかったが、苦い思いを体験した者たちなどがぞろぞろと訓練場へと向かう。
「いやぁ~~、なんか面白そうなことになったな」
「面白そうって言うのは、アラッド君や他の人たちにも失礼じゃないの?」
「なんでだよ。あいつ、後輩から正論ぶつけられて怯んでただろ。あの顔、最高だったじゃねぇか」
「…………本人には言えないけど、確かに珍しくて面白い顔ではあったわね」
アラッドや今回の一件でアラッドに挑むと決めた冒険者たちだけではなく、その戦いが観たい冒険者たちも訓練場へと向かう。
「しっかし、あのアラッド君と戦闘ねぇ……Aランクモンスターに勝ったことがあるんだし、そこを考えると戦る意味あるか? って思っちまうな」
「その戦いって、結構ギリギリの戦いじゃなかった?」
「一年以上前の話なんだから、アラッド君もその時以上に強くなってるだろ。今戦れば、その時よりは余裕をもって戦えるだろ」
「それも……そうね」
「それに、挑もうとしてる連中がそれなりに強いのは解ってっけど、あいつらが運が重なったとしてもAランクモンスターに勝てるイメージが湧くか?」
男の言葉に、周囲の冒険者たちは揃って「確かに」と思った。
現場にいなかった冒険者たちは実際にその光景は観ていないが、冒険者ギルドにはアラッドがソロでAランクモンスターを討伐したという記録が記されている。
その話を聞いても「あんなガキが倒せるなら、Aランクモンスターって案外俺らでも倒せるんじゃね?」といった考えにならない。
Cランクモンスターの中でも特に強い個体は、ソロで挑もうがパーティーで挑もうが、強い。
Bランクモンスターも当然ながら強い。
ワイバーンやリザードなどの亜竜ではなく、火竜や水竜といった本当のドラゴンも含まれる。
現在、あれやこれやと話している実力者たちでも、絶対に万全の状態を期して挑みたい相手である。
「無理ね」
「あっはっは!!!! おいおい、即答じゃねぇか」
Bランクの上が、Aランクなのである。
人によってはBランクモンスターが怪物なら、Aランクモンスターは動く災害だと答える。
単純な話、Bランクモンスターより強いからこそ、Aランクのモンスター。
その純然たる事実は、Aランクモンスターに出会ったことがない者でも解る。
「仕方ないでしょ」
「そうだよ。仕方ねぇんだろうな…………あいつらも正論をぶつけられる前から、アラッド君が口にした内容が正しいってのは解ってた筈だと思うぜ」
「理解出来るのと、納得出来るのは別という話ね」
「噂のハヌマーン……つか、ハヌマーンが基本的に俺ら人間をおちょくったり、からかったりするのが好きなモンスターみたいだからな。バカにされた、侮辱された……そこで砕かれたプライドってのは、そう簡単に元に戻らねぇだろ」
「…………解らなくもないところが辛いところだし、自分たちがあんな行動取ってたらと思うと……かなり恥ずかしいわね」
「だろうな~~~~。それに、アラッド君がただ正論をぶつけて……論破? するんじゃなくて、その理解出来るけど納得は出来ないって気持ちを汲み取ってくれて、文句をぶつけたいなら掛かってきてくださいって言ったんだぜ。いやぁ~~~~、歳上なのに尊敬しちまうぜ~~~~」
アラッドの正論をぶつけながらも、理屈ではない細剣士エルフたちの気持ちを汲み取り、物理的にではあるが文句を受け付けると決めた。
そんな一連の行動に優しを感じる者もいるにはいるが……人によっては、ある種のオーバーキルだと感じる者もいる。
「………………それでも、引き返すという選択肢を取れなかったようね」
「アラッド君が別に良いって言ってんだから、悪い事じゃねぇな。俺らだって、ハヌマーンと遭遇して戦ってたら……今回の一件に対して、冷静な考えを持って対応出来てたか解らねぇしよ」
それなりの経験を積んでおり、ある程度の実力を持っている者たちほど、細剣士エルフたちの感情が解らなくなかった。
「んで……やっぱこうなるよな」
「どうせあんたも賭けるでしょ」
「そりゃあな、やらなきゃ勿体ねぇだろ」
オッズが酷い状況になるのは目に見えているが、それでも冒険者同士のガチバトルが開催されるとなれば、どちらが勝つか、非公式のギャンブルに掛けようと男は情報を集めるが……意外にも、アラッドのオッズが極端に低いということはなかった。
「おいおい、なんでだ? アラッド君の功績があんま信じられてねぇからか?」
「いや、そうじゃなくてな。アラッドが、文句をぶつけたい連中を全員……纏めて相手するって言いだしたんだよ」
「……わ~~~ぉ。そりゃあ、これぐらいのオッズにもなるか」
これからアラッドに挑むことに対して、多少なりとも申し訳ないという気持ちを持つ者はいた。
しかし、アラッドが全員纏めて相手をする発言をしたことで、冒険者らしいといえばらしく……多少の申し訳ないという気持ちが一瞬で消え去った。
「ッ…………」
「それとも、このまま何もせずに解散してくれますか? 俺としては、それが一番有難いですが」
決して挑発しようという意図はない。
ただ、アラッドの言葉が、彼らの逃げ道を塞いだ。
「挑ませて、貰おうか」
「それでは、今回の一件に関して不満がある人たちは、全員来てください」
ロビーにいる同業者たち、全員に告げてアラッドは先に訓練場へと向かった。
そしてエルフ細剣士を筆頭に、彼がリーダーのパーティー。
結果としてヴァジュラに殺されることはなかったが、苦い思いを体験した者たちなどがぞろぞろと訓練場へと向かう。
「いやぁ~~、なんか面白そうなことになったな」
「面白そうって言うのは、アラッド君や他の人たちにも失礼じゃないの?」
「なんでだよ。あいつ、後輩から正論ぶつけられて怯んでただろ。あの顔、最高だったじゃねぇか」
「…………本人には言えないけど、確かに珍しくて面白い顔ではあったわね」
アラッドや今回の一件でアラッドに挑むと決めた冒険者たちだけではなく、その戦いが観たい冒険者たちも訓練場へと向かう。
「しっかし、あのアラッド君と戦闘ねぇ……Aランクモンスターに勝ったことがあるんだし、そこを考えると戦る意味あるか? って思っちまうな」
「その戦いって、結構ギリギリの戦いじゃなかった?」
「一年以上前の話なんだから、アラッド君もその時以上に強くなってるだろ。今戦れば、その時よりは余裕をもって戦えるだろ」
「それも……そうね」
「それに、挑もうとしてる連中がそれなりに強いのは解ってっけど、あいつらが運が重なったとしてもAランクモンスターに勝てるイメージが湧くか?」
男の言葉に、周囲の冒険者たちは揃って「確かに」と思った。
現場にいなかった冒険者たちは実際にその光景は観ていないが、冒険者ギルドにはアラッドがソロでAランクモンスターを討伐したという記録が記されている。
その話を聞いても「あんなガキが倒せるなら、Aランクモンスターって案外俺らでも倒せるんじゃね?」といった考えにならない。
Cランクモンスターの中でも特に強い個体は、ソロで挑もうがパーティーで挑もうが、強い。
Bランクモンスターも当然ながら強い。
ワイバーンやリザードなどの亜竜ではなく、火竜や水竜といった本当のドラゴンも含まれる。
現在、あれやこれやと話している実力者たちでも、絶対に万全の状態を期して挑みたい相手である。
「無理ね」
「あっはっは!!!! おいおい、即答じゃねぇか」
Bランクの上が、Aランクなのである。
人によってはBランクモンスターが怪物なら、Aランクモンスターは動く災害だと答える。
単純な話、Bランクモンスターより強いからこそ、Aランクのモンスター。
その純然たる事実は、Aランクモンスターに出会ったことがない者でも解る。
「仕方ないでしょ」
「そうだよ。仕方ねぇんだろうな…………あいつらも正論をぶつけられる前から、アラッド君が口にした内容が正しいってのは解ってた筈だと思うぜ」
「理解出来るのと、納得出来るのは別という話ね」
「噂のハヌマーン……つか、ハヌマーンが基本的に俺ら人間をおちょくったり、からかったりするのが好きなモンスターみたいだからな。バカにされた、侮辱された……そこで砕かれたプライドってのは、そう簡単に元に戻らねぇだろ」
「…………解らなくもないところが辛いところだし、自分たちがあんな行動取ってたらと思うと……かなり恥ずかしいわね」
「だろうな~~~~。それに、アラッド君がただ正論をぶつけて……論破? するんじゃなくて、その理解出来るけど納得は出来ないって気持ちを汲み取ってくれて、文句をぶつけたいなら掛かってきてくださいって言ったんだぜ。いやぁ~~~~、歳上なのに尊敬しちまうぜ~~~~」
アラッドの正論をぶつけながらも、理屈ではない細剣士エルフたちの気持ちを汲み取り、物理的にではあるが文句を受け付けると決めた。
そんな一連の行動に優しを感じる者もいるにはいるが……人によっては、ある種のオーバーキルだと感じる者もいる。
「………………それでも、引き返すという選択肢を取れなかったようね」
「アラッド君が別に良いって言ってんだから、悪い事じゃねぇな。俺らだって、ハヌマーンと遭遇して戦ってたら……今回の一件に対して、冷静な考えを持って対応出来てたか解らねぇしよ」
それなりの経験を積んでおり、ある程度の実力を持っている者たちほど、細剣士エルフたちの感情が解らなくなかった。
「んで……やっぱこうなるよな」
「どうせあんたも賭けるでしょ」
「そりゃあな、やらなきゃ勿体ねぇだろ」
オッズが酷い状況になるのは目に見えているが、それでも冒険者同士のガチバトルが開催されるとなれば、どちらが勝つか、非公式のギャンブルに掛けようと男は情報を集めるが……意外にも、アラッドのオッズが極端に低いということはなかった。
「おいおい、なんでだ? アラッド君の功績があんま信じられてねぇからか?」
「いや、そうじゃなくてな。アラッドが、文句をぶつけたい連中を全員……纏めて相手するって言いだしたんだよ」
「……わ~~~ぉ。そりゃあ、これぐらいのオッズにもなるか」
これからアラッドに挑むことに対して、多少なりとも申し訳ないという気持ちを持つ者はいた。
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