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三人の作戦会議

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 イースランド辺境伯邸に急遽設けられた、作戦会議室。
 そこには、ニ大公爵家の一つ、リオーヌ家の長男であり、次期王位継承者セルゲイお兄様、元王太子、現辺境伯のエルディオ様、そしてリオーヌ家の長女を妻に娶り、王国に絶大な影響を与えるベルン・フェンディス公爵が、揃っていた。

 この三人が、王都から不在になっている、そしてシナリオに巻き込まれている時点で、国の未来が危ぶまれるが、そこは影が薄い国王陛下に頑張ってもらうことにしよう。

「それで、記憶を取り戻したきっかけはなんだ。ベルン」

 青い瞳に、仕事の時だけかけているメガネ姿のセルゲイお兄様。

「……この姿になる、魔法が、記憶と眠りの魔法の力を上回ったのだろうな」

「……メリル殿が掛けたという魔法が、か?」

「いや、すでにセリーヌのかけた魔法で、上書きされている。前世の聖女の全力を注ぎ込んだ魔法だ。俺も、どのタイミングでこの姿から元に戻るか予想がつかない」

「……つまり、いつ元の姿に戻ってもおかしくないということか? ベルン殿、元の姿に戻った場合、記憶は」

 真剣な表情で、それについて質問しているエルディオ様。

「ああ、予想もつかない。まあ、セリーヌのことを愛することだけは、間違いないので、決して譲りはしませんが?」

「……未来は、わからないですよ?」

 二人の視線の間に、見えない火花が飛ぶ。
 先に目を逸らしたのは、エルディオ様だったけれど。

「まあ、セリーヌのことは後にした方がいい。セリーヌが絡むと、絶対ややこしくなる」

 それだけは、三人一様に頷く。
 いつも予想外の出来事に巻き込まれる。
 今は、騎士団長であるアルト・レイウィルが、護衛をしているから、問題はない、と思いたい。

「……王太子妃アイリ殿からも、目を離すなよ。セルゲイ」

「ああ、だが、あのどこにでも入り込めるという魔法が厄介だな。時間制限も……」

 チラリと、二人の視線が、エルディオ様に向く。
 その視線の意味に気がつかないエルディオ様ではない。辺境伯領に来てから、表情豊かだったから久しぶりに見た、アルカイックスマイルが、その証拠だ。

「……とりあえず、俺がメリル・フェンディスを探すということでいいのかな?」

「……お願いいたします。エルディオ殿」

 珍しいことに、ベルン公爵が、膝をつく。
 たぶん、自分で探したいと思うのに。

「止めてくれ。貴公のためではない」

「……俺が、目覚めなくなった時には」

「させない。セリーヌの涙は、見たくない」

 たぶん、最後の最後になれば、ベルン公爵は、なんとしても自分だけが、呪いみたいなシナリオの影響を受けようとするだろう。
 それを、止めたいのだけれど、ただ眠っている間に見ている夢に、介入することはできない。

「いい加減起きなさいよ!」

「んぅ?」

「ねえ、どれだけ寝るのよ! もしかして、もともとロングスリーパーだったりするの?」

 そう、私は、最低でも7時間半は眠りたい方なのだ。4時間も寝れば十分だというアイリ様に比べて、眠る時間が増えるという制約は、あまりに大きい。

「くっ……。こんなところにも、ヘルモードの制約が⁈」

 いや、たぶんそれは、個人の特性だろうな……。そう思いながら、寝過ぎて気だるい体を、私は起こすのだった。
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