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実は白い結婚でした 4
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(大満足だったはずなのに、どうしてこうなったの?)
私の目の前に積み上げられたのは、見覚えのある魔道具。
ニコニコしている姿から、妙な圧力を感じるレザール様。
「えっと……。これらすべてフィアーナが作ったという情報は正しいですか?」
「……企画は私です。作ったのは違う人ですわ」
「リーフ辺境伯のお孫さんですよね?」
「そうです」
まるで取り調べのような雰囲気。
確かに、私が金銭的な余裕がある理由は、魔道具の開発によるロイヤリティーが入ってくるからに他ならない。
そういえば、ほとんどのことはリーフ辺境伯の孫、ロレンス・リーフ様がしてくれていた。
彼は、とてもカッコいい上に、魔道具開発の天才で、私のひょんなひと言からあっという間に素晴らしい魔道具を作り上げてしまう天才だ。
しかも、最強高スペックでありながら乙女ゲームにまったく関連のないモブなのである。悪役令嬢枠だった私にとっては、安心感が半端ない。
「そう……」
「えっと、知らないうちに違法なアイテムを作ってしまいましたか?」
「そんなことはない」
冷たい表情。すでに、乙女ゲームの中の、あるいは以前知っていたレザールきゅんは、存在しないのではないかと悲しくなる。
「――――ただ」
「ただ?」
「…………フィアーナと、この魔道具の製作者、ロレンス・リーフ殿はどのようなご関係ですか?」
冷たい魔術師団長の表情から、突如覗いた子犬みたいな可愛らしい表情。
私の目の前には、再び愛すべきレザールきゅんがいた。
「……レザールきゅん」
「……きゅん?」
「何でもないですわ? レザール様。えっと、ロレンス様との関係ですか。義理の祖母と孫ですわ?」
「――――祖母と孫。まあ、確かに、その通りですが」
「……あと、ビジネスパートナーですかね? ロレンス様と私に、他に何かありますか?」
「まあ、それならそれで……」
ふいっと、あちらを向いてしまった顔。
その横顔はまさに、レザールきゅんが、照れたり少しいじけてしまったときのスチルそのものだ。
「っ、レザールきゅん!!」
「……先ほどから“きゅん”とは?」
「っ、特別な敬称ですわ!」
「特別……」
つい口に出てしまったものは、仕方がない。
怒られるのを覚悟してチラリと伺う。
レザール様の顔は赤い。ものすごく怒っているのだろうか。
口元を押さえているのは、怒りたいのを我慢しているのだろうか。
(可愛いわ。レザールきゅんのよさは、見た目ではなくてその、可愛らしすぎる言動なのですもの)
レザール様は、どうにか気持ちを落ち着けたらしい。
真面目な表情をこちらに向けた。
「そうですか、特別なら仕方ありません。では二人きりの時にはそう呼んで下さい」
「えっ、公式からのご許可が!?」
「……こうしき?」
この日から、私は、レザールきゅんを堂々と見守ることを許された日々が始まるのだった。
「さ、呼んでみて下さい?」
「いざ許されると、本人を前に呼ぶのは恥ずかしいのですわ!?」
「ふふ、特別、なのでしょう?」
「うっ、からかわないでください!?」
濃厚な周辺人物たちに翻弄されながら。
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