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第2章

出会いは繰り返す 1

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 私の小さな図書室。
 部屋自体は大きいけれど、こじんまりとした図書スペースが、お気に入りだ。

 魔術に関する本、恋愛小説、そしてこの国の歴史書は、恋愛小説全てを読破すると、現れる仕組みだったようだ。

「その意図は……?」

 意外といたずら好きな一面があること、長い付き合いの私は知っている。
 たぶん、私がこの場所に来てから、恋愛小説を読破するまでの時間を予想した上での、時間稼ぎだ。

 だから、今こそ、この国の歴史、そして魔王について知る時なのだ。それにしても。

 毎日のように、魔獣の討伐に出かけるディオス様。でも、あの時みたいに、ボロボロの傷だらけで帰ってくることは、少なくなっていた。

『このままでは、私の髪型がベリーショートになってしまいます! 別に構いませんけど!』

 私の腰まである長い髪。薄紫色の髪は、魔力を持たない私の切り札だ。

『……っ怪我をしません。我が剣にかけて』

 ディオス様は、剣に誓った。最上級の誓いは守られるだろう。私の涙よりも、ベリーショートの方が、説得に役立ったという事実がなんとも世知辛いけれど。

 ……ディオス様は、ロングヘアが、お好きなのだろうか?
 長い、前世の感覚で言うとファンタジーな色合いをした髪の毛をくるくると弄ぶ。

 でも、意外にもこの世界の髪の色は、前の世界と変わらない。金の髪や黒髪、銀髪。瞳の色の多様さに比べて、私やルシードの薄紫の髪、そして聖女ローザ・ルティラシアの桜色の髪は、とても珍しくてどこにいても目立つ。

「……この髪の毛に、何かあるのかな?」

 ヒロインと悪役令嬢。
 桜色とスミレ色の髪。
 聖女に相応しい、純粋な笑顔が浮かぶ。

「そういえば、あの子どうしているかな?」

 平民でありながら、光魔法の強い素質を見出された、ローザ・ルティラシア。
 ヒロインと、私の出会いは、運命的だった。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 ディオス様が、戦場で命を落とした。
 その知らせが届いたのは、入学式の前日だった。

 そして、新しい制服に気持ちが浮き立つこともなく、もう悪役令嬢として過ごして、断罪される未来でいいかな、と泣きに泣いた酷い顔で私は入学式に向かっていた。

 いっそのこと、王立学園なんて通学しないで、泣き暮らしたい。部屋から一歩も出たくなかった。

 それでも……。ガランド兄様の顔が浮かぶ。父と母が死んでしまったから、領民や私たちを守るために、必死になって戦ってくれた、ガランド兄様。

 王立学園に通うのは、王国の貴族の義務だ。
 ただでさえ、第三王子ロイス・ベールンシア殿下との婚約を無理に断ってもらったのだ。
 これ以上迷惑をかけるわけにはいかない。

 やっぱり、家に迷惑がかかる、断罪だけは避けなければ。学園を卒業するまでは生きよう……。
 私は、覚悟を決めて空を仰いだ。

 その時、降ってきたのだ。彼女が。

 受け止められたのは、ルンベルグ辺境伯家の、猛特訓のおかげだったのか。それとも運命だったのか。

 絶対に避けようと、心に決めていたはずのヒロイン、ローザ・ルティラシアは、入学式初日、なぜか私の腕の中にいたのだった。
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