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第3章
序列一位様用では、ないです。
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その日から、いつでもマティ様は、私と一緒にいる。お風呂までついてくる。一緒にお湯に浸かるけれど、溶けてしまわないのか心配で仕方がない。
お湯が紫色になっている様子はないので、大丈夫なのだと思いたい。
……妙に、肌がツルツルと調子がいいんだよね。
「さ、そろそろ出ましょうか?」
お湯を拭き取ってあげる必要はないらしい。どういう仕組みになっているのだろう。やはり、細胞膜は、存在しているのだろうか。
ぴょこんぴょこんと、マティ様が後をついてくる。私は、すっかり可愛らしいマティ様の虜だ。
ふんわりと羽織った部屋着は、やっぱり浅い海の色をしている。
「リリーナ姉さん」
「ルシード! 遠征から帰って来たのね。怪我とかしていない?」
「俺が、そんな失敗すると思う?」
……想像してみる。周囲を殲滅して、明らかにオーバーキルな、高威力魔法を連発しているルシード。その周囲で、いとも容易く魔獣を切り捨てていくディオス様。
うん。周囲の被害が、むしろ怖い。
マティ様が、私のそばにいるようになってから、ディオス様とルシードが、遠征に行く回数が増えている。それだけ、今の状況は、限界が近いということなのだろうか。
「……ディオス様は」
「ディオスは」
嫌な予感に、胸が締め付けられる。
「ルシード、リリーナに余計な心配かけるのは、やめてもらえませんか?」
「…………そうだな」
目の前にいるディオス様は、元気そうだ。何も変わりがないように思える。でも、ルシードは、嘘をつくのが苦手なのだ。
グイッと、ディオス様の手を掴んで歩き出す。
「リリーナ」
「ディオス様、怪我をしたのではないですか?」
「リリーナが、心配するようなことは何も」
「ないと言い切れますか?」
「…………リリーナ」
沈黙は、おそらく肯定だ。
そもそも、そういう意味で、私の中でのディオス様の信頼度は、地に落ちている。
「っ……何があったのですか」
二人きりになった途端、ものすごく心細くなる。
縋りつこうとしたのに、やんわりと拒絶される。
その時、動くこともなく私の方になっていた、序列一位マティ様が、ディオス様の肩口へぴょんと移った。
ほんの少し。ほんの少しだけ、ディオス様が、顔を歪めた。きっと、ほとんどの人は気がつかないくらい僅かに。
「リリーナ」
「黙っていてください」
騎士服の留め具を外す。すると、左肩から背中まで、火傷でひどいことになっていた。
「……申し訳ありません、無傷で帰るという、約束を破りました」
「そうですね。でも、そもそも約束の内容がよくなかったです」
「……リリーナ?」
髪の毛を護身用の短剣で少し切り取る。
精霊たちが色めき立つ。
「お願い、ディオス様の…………。マティ様?」
精霊たちに、髪の代わりにディオス様の回復を頼もうとしたのに、マティ様に食べられた。
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