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白い結婚が成立するはずの日 1
しおりを挟む美しい花々と豪華なご馳走。
清楚でありながら豪華な衣装を身につけた花嫁は知的でもあり、可愛らしくもある。もちろんそれは、私に化粧を施してくれたフィラス様の素晴らしい技術によるものだ。
本来なら今日は、私たちの白い結婚が成立するはずの日だった。
けれど今、私たちは3年前のあの日をやり直すように、いっそもっと豪華で幸せな思い出に塗り替えるように2回目の結婚式を執り行っている。
隣に立つ花婿は普段の彼を知る人たちが見たら唖然としてしまいそうなほど幸せそうな笑みを浮かべている。
けれどこれは私には想定外の出来事だ。教えてももらえず、なぜか早朝から磨きあげられここに立っているのだから。
「ウェルズ様、もう私たちは結婚式を終えたはず」
「……これはけじめだ」
確かに、あの日結婚式直後に新 花婿に置いて行かれてしまった惨めな花嫁はここにはもういない。
名実ともに夫婦になった今、誰一人として私がウェルズ様に愛されていないと言う人はいないだろう。
「……マークナル殿下とアイリス殿下にも来ていただきたかったですね」
「うーん。マークナル殿下には気の毒なのではないかな」
「え?」
「まあ、いくら友とはいえ、こればかりは一生伝えてやる気はないが」
「ウェルズ様?」
「何でもない」
ぼそりとつぶやいたウェルズ様の瞳が暗く陰った気がした。
緑を帯びた青色の瞳。いつもは森の中にある美しい泉みたいだけれど、時々よどんでしまう。
「俺だけが君を愛していると、そう思っていて」
「……事実、ウェルズ様だけです」
残念なことに私の父と義母はここには来ていない。いくら私に魔力がないと言っても、フリーディル侯爵家との繋がりは社交界では重要なのに。
「君の父と義母も参列させたかったか?」
「……」
「だとすれば、君には申し訳ないことをした」
「え?」
「君に酷い扱いをした人間をここに呼びたくなくてな……」
「……そうだったのですね」
「俺だけが君を愛し、幸せな世界にいてほしい」
「ふふ、ウェルズ様は皆に愛されているかもしれませんが、私もあなたを愛していますよ?」
ウェルズ様は何か言いたそうな顔をして、そのあ私を抱き上げた。
「……そうだな。では俺は、永遠の愛を誓おう」
「私もずっと愛しています、ウェルズ様」
抱き上げられたまま参列者に祝福されて会場をあとにする。
そのままウェルズ様が向かったのは、マークナル殿下の執務室だった。
そこには白いドレスを着た可愛らしい姫君と、絵本の中から抜け出したような王子様が待っていた。
お揃いの色合いの瞳と髪を持つ二人はあまりにも美しくて、フィラス様の超絶技巧で美しくしてもらった私など霞んでしまう。
「おめでとう、カティリア!!」
アイリス殿下は嬉しそうに抱きついてきた。
本当に無事で良かったと、可愛らしい彼女を抱きしめる。
「……おめでとう、カティリア」
マークナル殿下は微笑むと祝いの言葉を口にした。
「ウェルズ、ここから先は彼女を少しでも不幸にしたら許さない」
「肝に銘じます」
二人は固い握手を交わした。
もちろん、強過ぎる握手の勝者はウェルズ様だったようだ。
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