魔力ゼロ令嬢ですが元ライバル魔術師に司書として雇われただけのはずなのに、なぜか溺愛されています。

氷雨そら

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筆頭魔術師 3

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 ――その日の夜は、眠れなかった。

「だって、王立魔術院の図書館に行けるのよ!?」

 寄り添って離れないフィーを抱きしめてつぶやく。アルベルトの許可なく行くことは仁義に反すると思ったけれど、行きたい気持ちは海より深く山より高い。

 ベッドの上でゴロゴロと何度も転がる。
 どんな本があるのかずっと気になっていた。
 それでも、魔力を失ってからの3年間はあえて考えないようにしてきた。

「でも、明日行けるんだ」

 そのとき、ためらいがちに扉が叩かれた。

「どうぞ」

 声をかけると、やはりためらいがちに扉が開いた。
 ドアを薄ら開けてこちらをのぞき込んでいるのは、予想通りアルベルトだった。
 しばらく待ってみたけれど、アルベルトはいつまで経っても入ってくる様子がない。

「アルベルト、あなたの屋敷なのだから堂々と入ってきたら?」
「君は寝間着じゃないか。ここでいい」
「……入ってちょうだい。落ち着かないじゃない」
「……君は人をすぐに信用しすぎる」

 アルベルトなら信用に値するのは間違いないだろう。その手を引いて部屋に招き入れる。

「アルベルトだけよ?」
「それはもっとダメだ」

 なぜか顔を赤くしてアルベルトが抗議した。
 でも、さすがの私でもアルベルト以外の人をこの時間に部屋に入れたりしない。

「平気よ。信頼しているもの」
「くっ、信頼がこんなにも重く感じたことはないな」

 小さな呟きはモゴモゴと口の中で消えた。
 良く聞こえなかったけれど、アルベルトが真っ直ぐ私を見つめてきたので口をつぐむ。

 部屋はしばらくの間、フィーの息づかい以外何も聞こえなくなった。
 ややあって、アルベルトがため息交じりに口を開く。

「――すまなかった」
「え?」

 アルベルトが頭を下げてきた。
 彼が頭を下げるのを見たのは初めてだ。
 驚いてしゃがんで、アルベルトの顔をのぞき込む。

「……どうして謝るの?」
「君にはいつだって王立魔術院へ行く権利があった」
「……フール様の言ってたことと関係あるの?」
「ああ」

 しゃがみ込んだまま見上げたアルベルトの表情には、憂いが浮かんでいた。
 
(間違いなく、理由があるのよね)

「許すわ」
「君はそうやってすぐに」
「アルベルトは、実はいつも私のことを優先してくれている。それくらいわかっているもの」
「……はあ。君には勝てないな」
「一緒に行ってくれるんでしょう?」

 アルベルトがうなずいてくれたから、私も笑顔を返す。それなのに、なぜかアルベルトは何かに気が付いたように目を見開くと視線を逸らした。

「どうしたの?」
「君、その寝間着でその角度だと谷間が見える」
「は?」
「口が滑った」
「……最低!! アルベルトなんて、もう部屋に入れてあげない!!」

 たぶん顔全体真っ赤になっただろう私は、アルベルトを部屋から押し出して、勢いよく扉を閉めたのだった。

 
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