魔力ゼロ令嬢ですが元ライバル魔術師に司書として雇われただけのはずなのに、なぜか溺愛されています。

氷雨そら

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夜会 2

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 そして翌日は、とても大変だった。
 アルベルトは朝食を慌ただしくとると、「健闘を祈る」と不思議な言葉を残して王立魔術院へと出勤した。

 なぜかミラベル様に手を引かれて応接室へと向かう。そこには、見知らぬ人たちが揉み手しながら待っていた。

「えっと、どちら様でしょうか?」
「この度は、ありがとうございます!!」
「!?!?」

 にこやかな挨拶とともに、私は応接室から別室に連れ去られた。
 そこには大きな鏡とたくさんの布、そしてにこやかな笑顔のミラベル様がいた。

「……これはいったい」
「ドレスを作るのよ」
「えっと、誰の」
「シェリアお姉様のドレスに決まっているでしょう? もちろん、私のドレスもついでに作っていいそうだけれど」

(夜会だからといって、この布の量は一体……)

 見渡してみても白から黄色、黄色から緑、そして青に紫、赤と色を変える各種の布。
 近づいてみれば、そのどれもが最高級品だ。

「……こちらのドレスは」
「見本品よ?」
「どうしてこんなにも大事に」
「……どうせ人目に触れるなら、最高に美しく着飾らせたい男心ね」
「……」

 その言葉に私が着飾ったところでそこまで変わらない、と異を唱えようとしたけれど、手を引かれ鏡の前に立たされて次々と布をあてられていく。

「採用、不採用」

 テキパキと指示を飛ばすミラベル様。
 私にはどれが良いのかさっぱりわからない。

「お姉様の美しい白銀の髪とアイスブルーの瞳。神秘的に誂えるのも良いし、淡い花々でどこまでもロマンチックに甘く仕上げるのも捨てがたい」
「どれを着ても同じようなものだと」
「そう言っているお姉様の自信のなさを周囲の驚愕の視線で塗り替えてみせるわ! そうそう、知的で大人びた姿も外せないわね」

 1時間ほどしてようやくすべての布地が分けられた。採用の布がそれでもかなり多いのは気のせいだろうか。

「そうね。それからレースも布に併せて選ばないと。その前にデザインを決めましょう」

 呆然としているうちに、今度は生成りのドレスを次々着せられる。
 すでにどれもが私のサイズにピッタリだ。

「もう、このドレスで良いのでは?」
「何を言っているんですか。もちろんこれは見本ですお姉様」
「だってもう完成しているのに!?」
「ここから、布あわせとレースやフリル、装飾品を選ぶのよ!」
「ええ~!?」

 今度はすべてのデザインを着てみるのに2時間かかった。

 途中、チラリチラリとジルベルト様が部屋をのぞき込んできてミラベル様に追い返されたり、ローランド侯爵夫人が商人たちに怒濤のごとく指示を飛ばしたりあっという間に時間が過ぎていった。

「やっと……決まったのね」

 そしてようやく、夜会に着ていくドレスと、何に使うのか分からないドレスの注文を終えた私は、ぐったりとドレスにもたれかかる。
 
 そんな私にミラベル様が笑顔を向けて恐ろしいことを口にする。

「まだよ?」
「え?」
「今回は予算上限なしだとお兄様が言っているのだから、もちろんこのままアクセサリーを選ぶわ!」
「そ、そんな!?」
「ふふ、すべてのドレスにそれぞれのアクセサリー。新進気鋭のジュエリーデザイナーばかり呼んだから、きっと会場の注目はすべてお姉様のものよ! それについでに、お兄様もお揃いの盛装を注文したから……!!」
「ひええ……」

 アクセサリーのあとは靴と、夜遅くアルベルトが帰ってくるまで夜会の準備は続くのだった。
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