魔力ゼロ令嬢ですが元ライバル魔術師に司書として雇われただけのはずなのに、なぜか溺愛されています。

氷雨そら

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夜会 3

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 そして夜会当日。
 そもそも、没落伯爵家の出身でしかも虐げられていた私はほとんど夜会に参加いたことがない。

「……足を踏んだら」
「そういえば、学生時代何度も足を踏まれたな。リードするから俺にすべて任せれば良い」
「ドレスの裾を踏んだら」
「俺がエスコートしているかぎり転ばせることなどあり得ない」

 ローランド侯爵家の馬車から降りて、夜会会場であるデルフィーノ公爵邸に降り立つ。
 いつも隠すようにキツくまとめていた白銀の髪は、あえてふわふわと目立つように下ろされている。

 真珠がちりばめられ、白銀の最上級の生地が使われたドレス。
 そして誰もが注目するだろう胸元の大ぶりな魔石は、金色の輝きを放っている。

 対するアルベルトは、夜会にしては控えめな装いだ。黒い盛装と輝くアイスブルーの宝石。
 それ以外はまるで夜の国から訪れた王子様のように漆黒だ。

 その中で私の胸元を彩る魔石とお揃いの金色の瞳だけがギラギラと煌めいている。

(素敵だなあ……)

 思わずボンヤリと見惚れてしまった。
 すでに対外的な高位貴族としての仮面をかぶった冷酷にも感じるその表情は、見慣れなくてまるで遠い場所にいるかのようだ。

 まだ婚約者がいないミラベル様は、やはり婚約者がいないジルベルト様にエスコートされている。

 黒髪に金の瞳のミラベル様と、紫がかった髪に紫の瞳のジルベルト様は紺色を基調にしたお揃いの盛装に身を包んでいる。

(出掛ける直前まで、二人してお揃いが嫌だと駄々をこねていたなんて、誰も思わないでしょうね)

 微笑ましい二人を思い出すと、少しだけ緊張が薄らぐようだ。

「……シェリア、俺から離れないで」
「アルベルト」
「今度は後れをとったりしない。必ず守るから」
「……信じてる。ところで」
『ふぉんっ!!』

 チラリと視線を落とせば、真っ白な犬がいる。
 夜会会場に動物を連れてきているのは、もちろん私だけだ。

「フィーを連れてきて良かったの?」
「構わないだろう。筆頭魔術師が許可を申請してくれたから」
「フール様が?」
「ああ、これくらい当然だろう」

 フィーを連れている、真っ白な色合いの私は否が応でも会場中の視線を総ざらいしてしまう。
 もちろんその視線のほとんどは、好意的なものなどではない。

「ほら、ダンスが始まった。俺たちも踊ろう」
「え、ええ……」

 手を引かれた途端、体重が軽くなったように思えた。いや、事実軽くなっている。

「魔法……。物質の重さを変えるのは不可能だったのでは」
「ああ、まだ論文を公表していないから秘密だ」

 羽が生えたように踊りだす。完全に密着した体は。軽くなった体とあまりに巧みなリードで、周囲からはまるでダンスが最高に得意な淑女みたいに見えるだろう。

「この瞬間だけは、周りなんて気にしないで俺だけを見て」

 アルベルトの心臓の鼓動が聞こえてくる。
 音楽が鳴り終わるまで私たちは踊り続けた。
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