魔力ゼロ令嬢ですが元ライバル魔術師に司書として雇われただけのはずなのに、なぜか溺愛されています。

氷雨そら

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闇魔法 1

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 東の空が明るくなり始める頃になり、ようやくうとうとした私が目覚めたときアルベルトはもう隣にはいなかった。

 冷たくなってしまったシーツのしわを手のひらで伸ばして昨夜の温かさを思い出す。

(確かに魔力枯渇は命に関わるし、眠ったら最後目覚めるまで眠り続けるものだけど)

 私より先に目覚めたのに何も起こらないなんて、そこまで魅力がないだろうか。
 置いてけぼりにされたみたいに思えて、小さくため息をつく。

 ――その時、扉がガチャリと開かれた。

「起きたのか。そろそろ起こそうと思っていたんだ」

 アルベルトは片手にトレーをのせ、その上にはホカホカ湯気を立てるカップ、そしてワンプレートにのせられた朝ごはん。

「……アルベルト」
「昨夜は悪かった。強引だったな」

 サイドテーブルに置かれた食事、決まり悪そうに微笑んだアルベルト。

「というより、放っておかれたから魅力がないのかと思って」
「は?」
「何でもない。聞かなかったことに」

 まだ、ベッドから出てもいない。ブランケットを引き寄せて口にしてしまった言葉を取り戻したいと思う。
 恥ずかしすぎてアルベルトの顔が見れない。

「シェリアは」

 頬を両手で挟まれた。
 きっと今私は心情的にも物理的にもひどい顔をしているに違いない。

「良い香りだし、最高に柔らかいし、寝顔は可愛いし、たまに寝言で俺の名前を呼ぶし」
「ひえっ、寝言!?」

 羞恥心で倒れそうになっているのに、アルベルトは余裕の表情を取り戻してニヤリと笑った。

「そ、だから目覚めてその可愛らしさを堪能するだけに留めて耐えた俺を褒めて?」
「そこ褒めるポイント!?」

 私の白銀の髪を長い指先に絡めて、あろうことかアルベルトは口づけを落としてきた。
 長い睫毛は金色の瞳を完全に覆い隠すほど長い。

 そのまま上目遣いに見つめてくるアルベルトは、自分がどれだけ格好いいのか知らないに違いない。

(心臓が壊れそう)

 バクバクと音を立てる心臓。
 それは耳元で聞こえているのかと思えるほどうるさい。
 
「はは、可愛い」
「……っ」

 余裕の表情なのに頬への口づけは、あまりに遠慮がちだ。

「……筆頭魔術師殿が首を長くして待っているだろうから、そろそろ行ってくる」
「アルベルト、あの、気をつけて」
「……いつも通り仕事に行くだけだ。それよりちゃんと朝ごはんを食べてから作業に入れ。命令だからな?」
「……わかった」

 ――アルベルトの命令。

 それはバディを組んでほしいというものだったり、名前を呼んでほしいというものだったり、食事をちゃんと食べるようにというものだったり、いつも可愛らしいお願いだ。

「いってらっしゃい」
「ああ、行ってくる」

 アルベルトを見送る私。気になるジルベルト様のなま温かい視線。絶対勘違いされている。

 こうして心臓騒がしい朝は過ぎていったのだった。
 
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