魔力ゼロ令嬢ですが元ライバル魔術師に司書として雇われただけのはずなのに、なぜか溺愛されています。

氷雨そら

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羽の生えた豚 2

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 そこにあるのは、手紙、不器用な一見して子どもの手作りかな、と思うようなお守りなどなど……。
 それら全てがとても大切に、一つ一つ宝物のようにしまい込まれていた。

「……こ、これは?」
「思い出の品」
「アルベルト……あなた」

 はっきり言って今すぐ廃棄したいのに、これだけ大切に飾られていると手の出しようがない。
 子どもの作品を大切に飾っている親がいる、というのは学生時代のクラスメートとの会話で聞いたことがあったけれど、これはそういうものだろうか。

 私は、卒業式で起こった事件の直後にアルベルトが私にプロポーズしてくれた瞬間を思い返していた。
 あのときの私は、アルベルトが責任をとるために好きでもない私に求婚してくれたのだと思い込んでいた。
 けれど、それは間違いだった。アルベルトはとても寂しがりで、こうと決めたら突き進むし、嘘を言わないのだ。

(あのとき、求婚を受け入れていればこんなことにはならなかった……?)

 けれど、後ろを振り返ったところで起きてしまった過去は通常変わらない。
 今回は魔法を使って過去に戻りレイラ様を助け出すことが出来たけれど、それは様々な偶然が重なって成功しただけのことだ。

 通常は過去を変えることはできない。

(うん、それに……。今、アルベルトと一緒にいられる時間はとても大切だから)

「……とりあえず、明日は燃えるゴミの日だから出して良いかしら?」
「嫌だ!!」
「えっと……。私がこれからは一緒にいるんだから、もういらないわよね?」
「……シェリアは知らないんだ。君に会えないときに、この場所が俺にとってどれだけ必要か、なんて」

 にっこり笑いながら私はアルベルトを見つめた。

(卒業式のあとお互いのネクタイとリボンを交換してから襲撃されれば良かったのに……)

 あの事件が残した傷跡は、やはり深いのだ。
 私が違う属性とはいえ魔力を取り戻しても、傷ついてしまった部分が埋まることはそうそうない。
 きっと、アルベルトが私に関するガラクタを収集するようになってしまったのは、あの事件がきっかけだったに違いない。

「……一緒にいましょうね」
「うん。でも、これは学生時代から大事にしていた物だから捨てるのはダメだ」

(あっ……襲撃関係なかった!? そういえば、入学した直後にクラスメート同士で交換した自己紹介カードもなぜか飾られていたわね!?)

 アルベルトの愛は重く、他者の愛を理解するのは例え恋人同士でも難しいのかもしれない。
 アルベルトの意外な一面を知ってしまった私は、とりあえず今回の対処方法として『私は何も見なかった』と思い込むという選択肢を選んだのだった。

 私は虚無の視線を向けた。
 フィーが部屋の中をうろうろとしている。
 そして、一枚の布を引きずって暖炉の前に敷くとその上に丸くなった。

(学園祭の劇で私が着た衣装……!?)

 半眼になって見つめつつ、あとでそっと一部許せない物に関しては処分しようと私は心に誓ったのだった。
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