暗殺者は王子に溺愛される

竜鳴躍

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隣国の王子 クリム

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「時間までデートしてくれないかな?」

男はニコニコしている。

「お前、目が悪いんじゃないのか?俺は男だ。可愛くもない。このナリは、女装男装カフェをやっているからだ。じゃ、俺は仕事あるんで。」

そう言って別れたはずなのに、こいつは俺についてきた。

何なんだ、いったい。

俺はサンやボヌールみたいな美人じゃないぞ。

卵持ってくれて助かったけど。


「お帰りなさい、トロワ。あら?」

戻ると、お姉様は優雅にお茶を飲んで、まだ店にいた。

こいつ、知り合いなん?


「あらいやですわ。クリム様、来てらしたの?また、供もつけずに……。」

「おや、リリーナ嬢。いや、最後の自由を満喫しようと思ってね。ケヴィンに会いに来たら、こちらだというから。」

「お姉様、この方は?」


「クリム=ゾーン。隣国ゾーンの第ニ王子よ。近々、立太子されるけど。」

はあ?

王太子になる男に卵持たせたのか、俺は。

「君の弟はいいね。歯に衣着せぬところがいい。」

男は俺をまたニコニコ見てる。

そうか、俺が物珍しいんだな。



王太子だった兄が悪い女に捕まって婚約者を蔑ろにした上、勝手に婚約破棄して国外追放とやらかしたので、廃太子になった。

さらに、俺は自由気ままに、このまま能力を隠してダラダラ過ごすつもりだったのに、周りには俺が有能で、実は兄の陰で農地改革とか色々やってたのバレてたらしく、今度、王太子になることになってしまったのだ。

恋愛結婚するつもりで、婚約者を決めていなかったせいで、政治で婚約者も決まり、来月にはもう自由がない。

2番目同士仲が良かったケヴィンに会いに、お忍びで国を渡った。


あいつは最近、婚約したらしい。

サンはどういう子なんだろう。


城に行ったら、丁度サンの学園が学園祭で、ケヴィンはそこにいるという。

サンは剣術大会に代表で出るらしいから、そこへ行けば会えるだろうと考えたが、場所がよく分からなかった。

途方にくれていたら、赤いギンガムチェックのエプロンドレスに、真っ赤な髪をした、くりくりお目々のかわいらしい子が建物から出てきた。

男の子らしい。

美人じゃないから可愛くないというが、いや、充分可愛い。

デュランの婚約者に似てるな、と思った。

宰相の双子も見たことある。

彼らによりそっくりだが、若干、丸顔で鼻が低いから、リリーナ寄りに見える。

そういえば最近、下の弟が見つかったんだっけ。

国外追放で我が国が預かったのに、逃がしてしまったせいで、被害がかなり出ていたと聞いた。

王族として申し訳ない。


彼について、彼のクラスまで来た。

いいよ、いいよ。卵くらい持ってあげるよ。

僕の方が体が大きい分、腕が長いしね。

ぶっきらぼうな態度もかわいいなあ。

もう少し前に会いたかった。


そうしたら、気兼ねなく口説けただろう。

子どもなんていらないから、君にプロポーズしたのに。
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