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実の弟が運命の番だった

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「ソーン・リストレイン。」


城がガタガタと揺れ、大理石の床が割れて、巨大な薔薇の茨が蠢き、のびていく。


「!!?」


「ぎゃぁあ!」

「きゃあ!」


イスリスたちは態勢を崩し、その間にアキレスは消えた。



いや。



のびた茨の蔦に守られるように、アキレスはいる。

そして、そこにはアキレスの兄であるハムスト=リングスの姿があった。



「運命の神よ。運命の番は絶対で、人は運命を変えられないと言いましたね。だが、『運命』を否定するしかない場合もあるのです。ご存じでしょうが、私の『運命の番』はこのアキレスだった。」

蔦に守られ、肩で息をするアキレスは、その瞳を大きく開けて私を見る。


驚いただろう。軽蔑しただろうか。



実の兄弟。
結ばれるなど獣の所業。

それなのに、私の『運命』は弟だった。

弟の腕に抱かれたいと願ってしまった。
まだ第二次性徴もきていない子どもの弟に欲情し、夢の中では何度も睦みあう。
その唇を奪い、頬ずりをし、まだ小さな性器を愛でたい。

弟は素直に私を兄だと慕っているというのに、いつ襲ってしまうか気が気でない。
私は第一王子であり、王太子であるがオメガだった。
こんな私は王にはなれない。
奔放なようだけど、あの子にだって王の資質がある。
あの子を襲って兄弟で結ばれ、弟の子を産むようなことはあってはいけない。


だから私は、父に頼んで弟に第二次性徴が来る前に『運命の番』を分からなくする手術を秘密裏に施してもらい、自分には子どもを持てなくなる手術をして、弟と距離をとった。

あの子が大人になり、勇者となって名声をあげたタイミングで王位継承権を放棄して城から出たのだ。


「なる程…………。俺は兄上が大好きだった。そういうわけか。ありがとう、兄上。」


「お前も!運命に逆らったかのか!ちくしょう!俺は運命の神だあっ!」








「運命は押しつけられるものじゃない。選択し、自分で掴み取るんだ。」


ふわっと空気が変わる。

圧倒的なアルファとオメガのフェロモン。



壊れた天井から現れたのは、ローゼとアーサー。



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