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クリフォート伯爵家
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新学期。
夜会が終わり、最後の学園生活。
あと、3か月で僕たちは学園を卒業するのだ。
「おはようございます。」
クリフォート家で目を覚まし、レナードと手を繋いでダイニングへ向かうと、お義母様が微笑む。
ヤードがぎゅっと僕たちに抱きついてくれる。
「お兄様とアレックス様は別の世界の人になっちゃうんでしょう。僕、さみしいよ。」
レナードとして帰国した日。
お義母様たちは僕たちに膝をついた。
でも…。
8年経って、クリフォート伯爵家はレナードにとって本当の家族だ。
もちろん、ずっとそばにいた僕にとっても。
だから、今までと変わらずスプリング王国での両親でいて欲しいと、レナードは言った。
それでも、ウィンター王国へ行って、王太子と王太子妃になることには変わらない。
おいそれとは会えなくなる。
こうして、甘えることも。
クリフォート伯爵家の本当の嫡男は、実は元々レナードとして向こうにいくことだけは決まっていたから、レナードと一緒に当主の勉強は行ってきた。
だから、急にレナードがいなくなるからといってヤードが困ることはない。
だけど…。
「ヤードっ。」
胸が痛む。
レナードはヤードを抱きしめると、抱き上げた。
「うわあ!お兄様!僕もう重たいよ!」
「ヤードはいつまでも俺の大切な弟だよ。ヤードが生まれてきた日のことは忘れない。事故の時、お義母様もお前を宿していたと分かった時、どんなに心配だったか。無事に元気に生まれてくるまで、気が気じゃなかった。1歳の誕生日も、2歳の誕生日も……、毎年一緒に過ごしたじゃないか。俺がたとえ王様になったって、お前は弟だよ。心の中ではそう思ってるから。」
「うんっ、僕、立派な伯爵になる!そうしてお兄様のお城に遊びに行くね…!」
「あぅぅぅうぅ。れなーどぉやーどぉぉぉ…。」
「あらあら。若奥様は泣き虫ですね。」
メリーが僕の涙を拭いてくれた。
「そういえば、お義母さま。お義父様は今日はお早いのですね。」
お義父様の姿が見えない。
「そうですね。陛下が弱ってらっしゃるようで。今更、ほんっっとうに今更。うわごとのようにレイチェル、レナードとつぶやいているようですわ。」
本当は、あのアイリ妃さえいなければ…。
政略結婚かもしれないけれど、仲の良い夫婦になれたのかもしれません。
本当に小さな声で、お義母様は呟いた。
「どうする?レナード。会いに、いく?」
レナードは首を振る。
「母の墓参りにくらいは行く。」
そうだね。
小さい頃から命を狙われて、陛下は関係なかったとしても、何もしなかった。
レナードの中では、『父親』ではないのかもしれない。
夜会が終わり、最後の学園生活。
あと、3か月で僕たちは学園を卒業するのだ。
「おはようございます。」
クリフォート家で目を覚まし、レナードと手を繋いでダイニングへ向かうと、お義母様が微笑む。
ヤードがぎゅっと僕たちに抱きついてくれる。
「お兄様とアレックス様は別の世界の人になっちゃうんでしょう。僕、さみしいよ。」
レナードとして帰国した日。
お義母様たちは僕たちに膝をついた。
でも…。
8年経って、クリフォート伯爵家はレナードにとって本当の家族だ。
もちろん、ずっとそばにいた僕にとっても。
だから、今までと変わらずスプリング王国での両親でいて欲しいと、レナードは言った。
それでも、ウィンター王国へ行って、王太子と王太子妃になることには変わらない。
おいそれとは会えなくなる。
こうして、甘えることも。
クリフォート伯爵家の本当の嫡男は、実は元々レナードとして向こうにいくことだけは決まっていたから、レナードと一緒に当主の勉強は行ってきた。
だから、急にレナードがいなくなるからといってヤードが困ることはない。
だけど…。
「ヤードっ。」
胸が痛む。
レナードはヤードを抱きしめると、抱き上げた。
「うわあ!お兄様!僕もう重たいよ!」
「ヤードはいつまでも俺の大切な弟だよ。ヤードが生まれてきた日のことは忘れない。事故の時、お義母様もお前を宿していたと分かった時、どんなに心配だったか。無事に元気に生まれてくるまで、気が気じゃなかった。1歳の誕生日も、2歳の誕生日も……、毎年一緒に過ごしたじゃないか。俺がたとえ王様になったって、お前は弟だよ。心の中ではそう思ってるから。」
「うんっ、僕、立派な伯爵になる!そうしてお兄様のお城に遊びに行くね…!」
「あぅぅぅうぅ。れなーどぉやーどぉぉぉ…。」
「あらあら。若奥様は泣き虫ですね。」
メリーが僕の涙を拭いてくれた。
「そういえば、お義母さま。お義父様は今日はお早いのですね。」
お義父様の姿が見えない。
「そうですね。陛下が弱ってらっしゃるようで。今更、ほんっっとうに今更。うわごとのようにレイチェル、レナードとつぶやいているようですわ。」
本当は、あのアイリ妃さえいなければ…。
政略結婚かもしれないけれど、仲の良い夫婦になれたのかもしれません。
本当に小さな声で、お義母様は呟いた。
「どうする?レナード。会いに、いく?」
レナードは首を振る。
「母の墓参りにくらいは行く。」
そうだね。
小さい頃から命を狙われて、陛下は関係なかったとしても、何もしなかった。
レナードの中では、『父親』ではないのかもしれない。
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