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プロローグ
夢と不法侵入者
しおりを挟む暗闇の中、一人の女性が語りかけてくる。
『____と約束しては駄目よ』
いつも決まって同じ事を俺に言うこの女性は誰なのか…顔はおぼろげで見えない。
ただ、酷く懐かしい感じがするのだ
…もしかしら俺の母親だった人なのかもしれない。
微笑んだ女性がこちらに手を伸ばしてくる。
懐かしい暖かさが俺の体を包んだ、柔らかい女性らしい腕と体が強く抱きしめてくる。
(…あぁ、ずっとこのままでいたい)
なんだか離れがたい感情を胸に抱くのだ。
そんな俺の感情を知ってか知らずか、この夢はいつもこの場面で一転する。
俺を包んでた女性特有の柔らかい腕の感触がいつの間にかゴツゴツした骨ばった男の腕に置き換わるのだ。
その腕が俺の体をまさぐり、耳元に低い声で…
『_約束ですよ、時雨。』
首筋に生暖かい感触を感じた瞬間、夢は覚めるのだ。
_れ、
雨の匂い、そして雨粒が地面に打ち付ける音がする。
___しぐれ、時雨。
誰かが俺の名前を呼んでいる
俺は瞑っている両目をゆっくりと持ち上げた。
「おはよう、時雨。」
顔を声のする方向に向けると、ほんの数cmでキスできそうなぐらい近くに良く見知った男の顔があった。
「……不法侵入。」
俺は小さく呟きゆっくりと目を再び閉じ、二度寝を決め込むことにした。
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