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幼少期の思い出と記憶
交わされた約束 後編:天人視点
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「もよう…、床の模様ですか?」
幼子の言ったことに困惑しながら聞き返してしまう。
幼子は天人の言葉に頷くだけで、もう天人の顔を見ようともしない。
(床に…床の模様に負けた)
当時、3歳であった時雨には、天人より床の模様の方が面白かったのだ。
天人は幼子の言動に小さくショックを受けながらも、賢明に目の前の幼子がどうしたら自分へ意識、興味を向けてくれるのかと考えた。
(この手は奥の手ですが仕方ありません、この子が私に興味を持ってくれるためなら何も困ることなど無いのですから。…後で怒られるかもしれませんがこの子の為です)
後に天人はこの事で四方八方から苦言を申されることになる一つだ。長らく本人は笑顔で受け流すことになる。
「魔法に興味はありますか?」
天人のその言葉に漸く幼子は床から目を離して天人に目を向け
「まほう?」
(なんて可愛いのでしょう…)
幼子のキラキラした目に興奮しながら、それを悟らせないように落ち着いて言葉を続けた
「はい、魔法です。今からとっておきの魔法を貴方にプレゼントしましょう。」
そして片手を天に掲げ舞うように払った
その瞬間、天気は晴天なのに小雨が伝い始めたのだ。
雨粒が反射してキラキラと輝く、そしてお天道様の近くに美しいリングがかかった。
それはまるで指輪の様で、そして幻想的に見える光景が庭一面を覆うように広がった
幼子はその様子に驚き
「すごい!まほう使いみたい!!」
そして、頬を染めて喜んだのだ。
幼子は床から起き上がりおぼつかない足取りで庭に出ようとした。
(ああッ危ない、転びそうで見てられません…こういう時、人間に触れて良いものなのでしょうか。…というか、この無垢な生物に触れても良いものなのでしょうか)
と天人は幼子の様子に慌てる、そして案の定
「あわっ!」
縁側の縁に足を取られ、そのまま硬い土の上に打ち付けられようとした瞬間
天人は無意識に体が動いた
(………やってしまった。)
幼子を抱きとめたのだ。
幼子も転ぶと思っていたので天人に抱きとめられる状況に理解が追いつかず硬直したままだ。
天人は幼子の無事な様子を確認し安心するとともに
(…私に触れられても何とも無さそうですね。嫌でも無さそうだし、このまま抱いて庭に連れていきましょう。うん、それが良いですね。)
都合良く解釈した天人は幼子を抱きかかえ二人で庭を散歩する。
「…ん!」
「どうしたんですか?」
幼子は漸く天人に抱きかかえられる状況に頭が追いつき、小さな手で天人の胸を押しコクリ、イヤイヤと頭を振った。
「困りましたね…私に触れていないと雨に濡れてしまいますよ?」
そう言われ、幼子は周囲を見渡した。
「?」
二人を小雨が避けるように降っているのだ。
天人の腕の中で幼子は雨に向かい手を伸ばす
そしたらちゃんと雨が手に伝ってくる。
「ほら、綺麗ですね」
天人は幼子に微笑む…その微笑みに近くの紫陽花が満開になった。
その様子に天人を押しコクっていたのを忘れ幼子も笑顔を返す
「ッ!!!」
幼子の紛れもなく天人に向けられた笑顔に天人は目を見開き口にしてはいけないはずの言葉を紡いでしまったのだ。
「…貴方の名前を私に教えてくれませんか?」
無意識に神としての力も使っていた
天人の問に虚ろ気な目をした幼子は名前を小さな唇から紡いでいく
「しぐれ」
「しぐれですか…いい名前ですね。」
幼子の、時雨の名前を聞き天人は嬉しそうに時雨に向かいまた微笑む。
そして
「時雨、私と約束をしましょう____?」
_______________
あの日、時雨と約束を交わしてから長らく時雨の元に通えてない…
時雨に魔法と称して使った力で、あちらこちらからお小言を食らう羽目になり時間を浪費したのだ。
(時雨…時雨…時雨不足です。鏡で様子を伺えますが、それも断片的なもの…。あの時雨の感触と鼓膜を揺らす声を私は忘れられないのです)
思いに耽る天人の様子を見た宮仕えの者はため息を吐き
「そろそろ、あの人間の元へ行くのでしょう…帰りは気おつけて下さいね。」
仕事に磨か入らないままで居るよりは、羽を伸ばした後、しっかり仕事してもらうほうが効率が良いと考えた使いの者はあっけらかんと天人に現世へ行くことを提案した。
「おや!おやおやおや、私の使えらしくなってきたではないですか、後は任せましたよ。」
ものすごい速さで現世に消えていく主人を眺め
「____様の宮仕えをしていただけはある…あの方の良くない部分を受け継いでて困ったものです。」
そんな呆れ声が誰も居なくなった書斎に響いたが、一人の零した愚痴を聞くものは居ない。
久しぶりに降り立った庭は何一つ変わっていない…
何処からか幼子の、時雨の笑い声が聞こえる。
時雨に叫ばれるまで後、数分の出来事だ
幼子の言ったことに困惑しながら聞き返してしまう。
幼子は天人の言葉に頷くだけで、もう天人の顔を見ようともしない。
(床に…床の模様に負けた)
当時、3歳であった時雨には、天人より床の模様の方が面白かったのだ。
天人は幼子の言動に小さくショックを受けながらも、賢明に目の前の幼子がどうしたら自分へ意識、興味を向けてくれるのかと考えた。
(この手は奥の手ですが仕方ありません、この子が私に興味を持ってくれるためなら何も困ることなど無いのですから。…後で怒られるかもしれませんがこの子の為です)
後に天人はこの事で四方八方から苦言を申されることになる一つだ。長らく本人は笑顔で受け流すことになる。
「魔法に興味はありますか?」
天人のその言葉に漸く幼子は床から目を離して天人に目を向け
「まほう?」
(なんて可愛いのでしょう…)
幼子のキラキラした目に興奮しながら、それを悟らせないように落ち着いて言葉を続けた
「はい、魔法です。今からとっておきの魔法を貴方にプレゼントしましょう。」
そして片手を天に掲げ舞うように払った
その瞬間、天気は晴天なのに小雨が伝い始めたのだ。
雨粒が反射してキラキラと輝く、そしてお天道様の近くに美しいリングがかかった。
それはまるで指輪の様で、そして幻想的に見える光景が庭一面を覆うように広がった
幼子はその様子に驚き
「すごい!まほう使いみたい!!」
そして、頬を染めて喜んだのだ。
幼子は床から起き上がりおぼつかない足取りで庭に出ようとした。
(ああッ危ない、転びそうで見てられません…こういう時、人間に触れて良いものなのでしょうか。…というか、この無垢な生物に触れても良いものなのでしょうか)
と天人は幼子の様子に慌てる、そして案の定
「あわっ!」
縁側の縁に足を取られ、そのまま硬い土の上に打ち付けられようとした瞬間
天人は無意識に体が動いた
(………やってしまった。)
幼子を抱きとめたのだ。
幼子も転ぶと思っていたので天人に抱きとめられる状況に理解が追いつかず硬直したままだ。
天人は幼子の無事な様子を確認し安心するとともに
(…私に触れられても何とも無さそうですね。嫌でも無さそうだし、このまま抱いて庭に連れていきましょう。うん、それが良いですね。)
都合良く解釈した天人は幼子を抱きかかえ二人で庭を散歩する。
「…ん!」
「どうしたんですか?」
幼子は漸く天人に抱きかかえられる状況に頭が追いつき、小さな手で天人の胸を押しコクリ、イヤイヤと頭を振った。
「困りましたね…私に触れていないと雨に濡れてしまいますよ?」
そう言われ、幼子は周囲を見渡した。
「?」
二人を小雨が避けるように降っているのだ。
天人の腕の中で幼子は雨に向かい手を伸ばす
そしたらちゃんと雨が手に伝ってくる。
「ほら、綺麗ですね」
天人は幼子に微笑む…その微笑みに近くの紫陽花が満開になった。
その様子に天人を押しコクっていたのを忘れ幼子も笑顔を返す
「ッ!!!」
幼子の紛れもなく天人に向けられた笑顔に天人は目を見開き口にしてはいけないはずの言葉を紡いでしまったのだ。
「…貴方の名前を私に教えてくれませんか?」
無意識に神としての力も使っていた
天人の問に虚ろ気な目をした幼子は名前を小さな唇から紡いでいく
「しぐれ」
「しぐれですか…いい名前ですね。」
幼子の、時雨の名前を聞き天人は嬉しそうに時雨に向かいまた微笑む。
そして
「時雨、私と約束をしましょう____?」
_______________
あの日、時雨と約束を交わしてから長らく時雨の元に通えてない…
時雨に魔法と称して使った力で、あちらこちらからお小言を食らう羽目になり時間を浪費したのだ。
(時雨…時雨…時雨不足です。鏡で様子を伺えますが、それも断片的なもの…。あの時雨の感触と鼓膜を揺らす声を私は忘れられないのです)
思いに耽る天人の様子を見た宮仕えの者はため息を吐き
「そろそろ、あの人間の元へ行くのでしょう…帰りは気おつけて下さいね。」
仕事に磨か入らないままで居るよりは、羽を伸ばした後、しっかり仕事してもらうほうが効率が良いと考えた使いの者はあっけらかんと天人に現世へ行くことを提案した。
「おや!おやおやおや、私の使えらしくなってきたではないですか、後は任せましたよ。」
ものすごい速さで現世に消えていく主人を眺め
「____様の宮仕えをしていただけはある…あの方の良くない部分を受け継いでて困ったものです。」
そんな呆れ声が誰も居なくなった書斎に響いたが、一人の零した愚痴を聞くものは居ない。
久しぶりに降り立った庭は何一つ変わっていない…
何処からか幼子の、時雨の笑い声が聞こえる。
時雨に叫ばれるまで後、数分の出来事だ
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