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縮まる距離

新しい命と

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 大学の帰り、俺と四月一日さんはイルミネーションの飾り付けをし始めている町中を歩く。
今は昼間だから輝くとこを見られないが、夜になればそこら中の木がライトアップされ輝き始めるだろう。

 隣で歩く四月一日さんに俺は視線をうつした。四月一日さんは、俺と同じ大学を受け一緒に受かっている。

その時、持っていたスマホが鳴る

「…四月一日さん、ちょっとごめんね」

スマホをポケットから出し、画面を見る。

すると連からLINE通知が来ていた。
内容を見ると、
『いつものカラオケ店で待つ。部屋は2階206号室』

なんとも投げやりな内容だ…

俺は四月一日さんをチラ見し

「…四月一日さん」

「はいっ!なんでしょう」

「歌うの好き?」

「えっ…。えーっと、はい」

「今からカラオケ一緒に行かない?」

「!!」

「嫌なら良いんだけどさ…どうかな?」

「行きます!歌うの大好きです!!」

四月一日さんの嬉しそうな顔を見てホッとした。流石に、同じ高校の同級生仲間を一人だけ仲間はずれにするのは可愛そうだろう。

四月一日さんと二人で連が待つカラオケ店へ急いだ。






 カラオケに着くと、部屋の中から大音量で歌ってる連の声が聞こえた。

俺は扉を開け、

「久しぶり連……と黒沼さん」

スーツ姿の連の隣にはラフな姿をした黒沼さんが居た。
連は歌うのを中断し、
「よっ!時雨」
と俺の肩を組んできた。

連は入れてる曲を消し、俺たちを部屋に招き入れた。
四月一日さんは状況について行けてないのか、ワタワタしながら後をついてくる。

扉を閉め、俺と四月一日さんを空いてるソファーに座らせると、連と黒沼さんは俺達の前に立った。

「俺達、先程、結婚しました!」

ニコニコ顔でとんでもない事を報告してきた。

「「……‥…」」

その言葉が理解できず無言で連と黒沼さんを見つめてしまう俺達二人


「実はさ、雫のお腹の中に俺の子供ができたんだ」

「…ッ!おめでとうございます!!」
四月一日さんは連に祝の言葉をかけ小さくパチパチと手を叩いて喜んでいる。



喜ばしいことだけど、俺は素直に祝えなかった。
「お前、大学はどうするんだよ…。めでたいかもしれないけど、子供を育てるのは大変なことだろ。なんでそんなにあっけらかんとしてるんだよ」


「大学は辞めることにした。で、雫とこれから生まれてくる子の為に働きます!」

連じゃ埒が明かないと思った俺は黒沼さんに声をかけ
 
「…黒沼さん、いえ、雫さん」

「はい」

「雫さんは、それでいいんですか?」

「えぇ、二人で考えたことだから…。周りにも迷惑かけるけど、私はこの子を産んで育てたいの」

雫さんの真剣な表情に

(あぁ、この人はもう決めてるんだな)

それなら他人である俺がとやかく言うことはないだろう。

ただ、
「連、お前もう父親になるんだろ。なら妊婦である雫さんをもっと労れよ。妊婦さんいる中でカラオケで熱唱するとか頭湧いてんのか。アホか、子供を流産させる気か??あ"?」

それから、連に説教をしつつこれまれの経緯などを俺達はカラオケの個室で聞いたり話したりした。



「_____で、スーツ姿ってわけ」

「お前、よく縁切られなかったな」

「それな~、俺もさ殴られるのかな~お前に娘はやらんって言われるかな~とか思ったんだけど案外、雫の両親は許してくれたよ」

なんと、連は本当に先程まで雫の両親に結婚について報告し、終いには子供のこともそこで話したという…

(コイツ、いろいろと"思い立ったが吉日"を得に描いたようなことし過ぎだろ)

「雫さん泣かせんなよ」

「残念~、もう泣かせちゃった!嬉し泣きだけどな。これからもたくさん泣かせるつもり」

「はぁ…心配だ」

雫さんは四月一日さんと何やら楽しそうに話していた。

「…で、子供の名前は決まってんのか?」

「もちろん!女の子なら春で、男の子なら春馬だな」

「ふーん」

「ふーんってなんだよ、もっと他に反応の仕方があるだろお前」

「連がパパねぇ」

「…パパ。そうだな早く呼ばせたいな」

「早えよ、まだ生まれてないだろ…」

そんな会話をして時間は過ぎていった











「じゃあなぁ~」

「ああ、連絡は寄越せよ」

「雫ちゃん、体お大事にしてくださいね!元気な赤ちゃん産んでください」

「ありがとう~」

それぞれが別れの言葉を言っていく。

 連と雫さんが肩を寄せ合い町中に消えていく。



俺と四月一日さんも家へ帰ろうと足を進める。

外はすっかり日が沈み暗くなっていた。
(あっ、イルミネーションだ)

キラキラとライトアップされた木が町中を照らして続いていた。

(爺ちゃんの死んだ日もこうやって輝いてたのかな…全然覚えてないな。)
あの時は周りなんか気にできないほど気持ちが急いでいた。

そんな事を思い出していると四月一日さんから声がかけられる


「時雨くんッ!」

「ん?どうしたの」

四月一日さんに目を向けたら、四月一日さんは凄く凄く真っ赤になった顔で俺と一生懸命に目をあわせようとしていた。

「…あのね、ずっと時雨くんに私ね、言おうと思ってたことがあるの」

「?」

「私、四月一日 なな は、御神 時雨くんのことが好きです。」

その言葉に俺は驚で口を少しひらいてしまった。


「…もっと前に言うつもりだったの。でも時雨くんお爺さん亡くなられて凄くすごく落ち込んでたし、それでも大学受験に向けて頑張ってた時雨くん見て何も言えなくなっちゃったの」 


「……」

「…答えは今じゃなくていいから、だから」


「四月一日さん」

「…」


「ごめん」


俺の言葉に泣きそうな表情を見せたけど、四月一日さんは微笑んで

「知ってたよ…知ってたのアタシ」

「ごめん」

「うぅん…、いいの」

二人の間に雪が舞ってくる 

「初雪だね…」

「…うん、そうだね」

「私、ここからは一人で帰るね」

「うん」


「…またね」


「またね」



俺は四月一日さんの背中を見送った。



________________________________________
"四月一日視点" 

 あたしは、イルミネーションが輝く町中を歩きながら声を出さず泣いた。
恋人たちが手をつなぎ、私の横を幸せそうに二人で通り過ぎていく。

「…バイバイ、あたしの初恋」

初雪降る中、あたしの恋は終わりを告げた
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