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真実の眼

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 今日のオカ研活動は神奈の工房で行われていた。オカ研メンバー+奴隷一名に、エリゼとアリスと三大魔女も揃っていた。

「今、集まっているメンバーがブラッディ・マリー討伐隊のメンバーになるわ」
(いよいよ始まるんだ。吸血鬼退治が)
 心臓にぎゅっと縮こまるような感触がした。やっぱり怖い。

「作戦は簡単、昼の太陽が高い内に相手の工房に乗り込み、相手使徒およびブラッディ・マリーを倒し、心臓に白木の杭を打ち込み、火葬するわ」
「言うはたやすいが、難事じゃぞ、まず相手の工房を見つけなければ」
「奴は近くにいるわ」
「どうしてわかる?」
 訝しんで聞くアリスに神奈は淡々と答えた。

「明美ちゃんの首に吸血鬼のキスの痕があったわ」
「そう……襲われたのは異世界グレイルじゃなかったのね」
 どうやら明美は吸血鬼化による、吸血衝動や殺人衝動を抑えるためグレイルに逃避的に潜ったのではないか、と思われる。
「太陽の光を浴びられない以上、しっかりと準備しなければ、奴らは遠出できない。それ以外にも証拠はあるわ」
「言ってみるといい」
 神奈はエリカと目と目で合図をする。そしてコクリと頷く。

「エリカに自動書記してもらったここら辺近郊の行方不明者のリストよ。明らかに数が多すぎるうえに、ほとんどが十代の処女よ」
「ここで人狩りをしてたんだね」
「許せないわね」
 皆の顔に一様に浮かぶのは強い怒りの念だった。
「奴の工房を突き止めるためにとれる方法はいくつかあるわ」
「あたしが被害者の霊を呼ぶ?」
 梨花が手をあげる。

「それもいいんだけど、今回は千里眼の魔術の一つ真実の眼を使ってみようと思うの」
「ふ~む、上位魔術じゃの、工房の中を見た感じ準備はもう整っておるようじゃが」
「ええ、聖婚してやっとできるようになった上位魔術よ。これを使えばかなりの多重結界で守られた魔術師の工房だって発見出来るわ」
「しかし、眼は相手に見られる可能性もあるぞよ。そうなればこっちの工房も逆探知されかねんぞ」
「ここ以外にもいくつかセーフハウスを持っているわ。もしここがばれたら、そこへ逃げるわ」
 アリスが頷く、エリゼも特にいうことは無いようだ。

「カウンターマジックに備えて、仮に呪術で攻撃されても被害を受けない当摩に見てもらおうと思うんだけど」
「うん、いいよ。俺がやる」
「助かるわ。こっちに来て」
 神奈が部屋の中央に置かれた、金属のオブジェがある場所へ当摩を連れて行く。

 眼を形どったオブジェだった。材質は銀のように見えた。中央に目、瞳孔に当たる部分に黒い宝石があしらわれ、周囲にルーン文字のようなものが刻まれている。
 直径三十センチほどの魔法陣だ。それが木の台座に取り付けられている。

「正面に立って」
 神奈にうながされ、眼の前に立つと不思議な感触がした。
「まず、奴が居る場所に関連のあるものを探してみて、例えば被害者とか」

 オブジェの中央をじっと見ると、視界が開けて、一気に色んなものが見えた。
「うわっ! 何だこれっ!」
「落ち着いて、当摩。ゆっくりと自分が見たいものを探してみて」
「う、うん」

 女の子が見えた。暗い場所を手探りでライトも持たずに歩いている。地元の中学校の制服を着ている。
 酷く怯えていて、荒い息づかいが聞こえるようだ。
「女の子が見えた」
「そう、その子を追ってみて」

 女の子はどうやら出口を探しているようだ。しかし出口は見つからない。気が付けば闇の奥深い場所まで来てしまった。
「ふふふ……」
 大人の女の笑い声がする。嘲笑ちょうしょうするような聞き覚えのある嫌な笑い声だ。

 誰かが助けに来てくれたのかと、女の子は一瞬安堵する。
 しかし、女は女の子の黒髪をつかむと、地面へ引きずり倒した。
「あ゛っ! いだいっ!」
「ふふふふふ……」
「たっ……助けてっ‼」

 笑っている女は容赦なく女の子を痛めつけた。
「いっ! いやぁぁぁぁっ‼」
「苦しめば苦しんで死んだだけ、血の魔力も濃くなるのよね。可哀想に、あなたはわたくしのディナーになっちゃうの」
(ああ……ダメだっ! 助けないと)

「女の子が襲われてるっ! 助けないとっ!」
「当摩っ! 落ち着いて、あなたが見ているのは被害者の女の子の残留思念よ。今、その娘が襲われているんじゃないの」
「う、うう……そんなことって……酷過ぎるよ」
 当摩は泣きながら歯を食いしばる。

「落ち着いてその場所を特定することが大事よ。付近にはなにが見える?」
「暗い……洞窟みたいだ。女の子がこんなに悲鳴をあげているのに、周りには何もない……いやっ!」
「何か見つけたの?」
「これ……たぶん鉄骨だ……付近には車なんて一台もないけど……駐車場か?」
「そう……重要な手掛かりよ。他に見えるものは?」
 集まった面々がざわつく。

「この女の子エレベーターに乗ってきたんだ。地下五階……」
「誰か見ておるな?」
 女の子を痛めつけるのに夢中になっていたブラッディ・マリーがキョロキョロと辺りを見回し始めた。

「まずいっ! ブラッディ・マリーが気付いた」
「ちっ、時間がないわね」
「奴の魔眼も当摩にはたぶん効かない! あと一息で完全に場所を特定できる。頑張って」
「うん、エレベーターに乗る前の女の子の記憶が……追えそうだけど……」
 ブラッディ・マリーがゆっくりとこちらに視線を送ってきて、目が合った。

「真実の眼か……おろかな、使徒を一人使い潰してまで、わらわの工房を探し当てようというのか」
 ブラッディ・マリーの眼が赤く爛々らんらんと光る。
「死ぬがいい」
「うわっ!」

 バチっと音を立てて、真実の眼が割れた。膨大な魔力の奔流を当摩の特異体質が打ち消していく。
「当摩でなければ……一人死んでいたわね」
「わかったよ……場所は駅前のデパートの地下駐車場だ」
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