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「エリス、君のような退屈な女とは、もうやっていけない」
その声は、広間中に響き渡っていた。まるで、私を笑いものにするために、わざと大きな声を出しているかのように。
アルベルト様が私に向かって、そう言い放った瞬間、私は世界から色が消えたように感じた。ここは、社交界で最も華やかな舞踏会のはずなのに。きらびやかなシャンデリアも、楽しそうな人々のざわめきも、何もかもが遠い世界の出来事のようだった。
彼は、私の目の前に立っている。私の婚約者である、名門貴族のアルベルト・グランディエ侯爵。その顔は、いつものように整っていて、まるで彫刻みたいに美しい。でも、その瞳には、私への冷たさしか見えなかった。
「退屈、ですか……?」
震える声で尋ねると、アルベルト様はふっと鼻で笑った。
「そうだ。君はいつも同じような地味なドレスを着て、同じような本ばかり読んでいる。話すこともないし、笑うこともしない。そんな君といても、私は何も満たされないんだ」
その言葉が、私の胸に鋭いナイフのように突き刺さる。そう、私は幼い頃から、目立たないように生きてきた。派手なドレスは似合わないと母に言われ、流行りの社交ダンスも苦手だった。唯一の楽しみは、図書館で古い本を読みふけること。でも、それはアルベルト様にとって、ただの「退屈な女」でしかなかったのだ。
「それに、君と結婚しても、我が家の名声は上がらない。君の実家は侯爵家と言っても、社交界では地味な家柄だ」
彼の口から、さらに冷酷な言葉が続く。私は、もう何も言えなかった。ただ、唇を噛み締め、俯くことしかできなかった。
そのとき、アルベルト様の隣に、一人の女性が立つ。彼女は、まばゆいほどに華やかなドレスを身にまとい、その美しい金髪は、まるで太陽の光を閉じ込めたかのように輝いていた。
「アルベルト様、そんな退屈な方のお相手をされていたなんて、大変でしたわね」
彼女は、まるで私を嘲笑うかのように、甘く囁いた。その声は、社交界で最も愛らしいと言われる、大公令嬢セレスティーヌ様のものだった。私は、彼女とアルベルト様が親密な関係にあることを、薄々感じてはいた。でも、まさか、こんな形で、目の前で突きつけられるなんて……。
「セレスティーヌ。これからは、君と私の新しい人生が始まる」
アルベルト様は、私のことなど最初から存在しなかったかのように、セレスティーヌ様の手を優しく取った。二人は、広間の中心へと向かっていく。そして、私の目の前で、人々に向かって高らかに宣言した。
「私、アルベルト・グランディエは、エリスとの婚約を破棄し、セレスティーヌ・ド・ヴァレンティーノ大公令嬢と、新たに婚約することをここに誓います!」
その言葉に、広場はどよめきに包まれた。そして、やがて、私のことを嘲笑うかのような、ひそひそ話が聞こえてくる。
「やっぱりね。あの地味な侯爵令嬢じゃ、アルベルト様には似合わないわ」
「お父様の力を使って無理やり婚約したって噂だったものね。これで一件落着だわ」
私の耳に届くのは、そんな心ない言葉ばかり。私は、耐えきれずに、その場から逃げ出した。誰もいない廊下を走り、そして、広場の隅にある、私の馬車に乗り込んだ。
「馬車を出して。いますぐ、この屋敷から離れて……!」
御者に震える声で頼むと、馬車はゆっくりと動き出した。ガタガタと揺れる馬車の中で、私はただただ泣いていた。涙が止まらなかった。
侯爵家に戻ると、父は私を冷たく迎えた。
「お前という娘は、いったい……。グランディエ家との縁談を壊すとは、いったいどういうつもりだ!」
「ですが、父上……」
「黙れ! お前は明日から、もうこの屋敷にはいられない。もう好きにしなさい」
そう言って、父は私を部屋に閉じ込めた。私は、その夜、一睡もできなかった。父にまで見放された私は、もう、どこにも行く場所がなかった。
でも、夜が明けて、私は一つの決意を固めた。
こんな惨めな人生は、もう嫌だ。もう二度と、誰にも馬鹿にされたくない。
私は、部屋にあった小さな鞄に、必要最低限の荷物を詰め込んだ。母の形見の小さなペンダントと、お気に入りの本を数冊。そして、自分の全財産である、わずかな金貨。それだけを持って、私は夜明け前の薄暗い屋敷をこっそりと抜け出した。
街はまだ静かで、誰もいない。私は、人目につかないように、大通りを避けて歩いた。そして、街の外れにある、馬車の乗り合い場へと向かった。
「どこまで行かれるので?」
乗り合い馬車の御者が、私に尋ねた。
私は、少し考えてから、答えた。
「……できるだけ遠くへ。誰も、私のことを知らない場所へ」
その声は、自分でも驚くほど、決意に満ちていた。
馬車は、ガタゴトと音を立てながら、街を離れていく。窓の外には、見慣れた景色が遠ざかっていく。私は、これまで生きてきた場所を、もう二度と振り返らなかった。
私は、侯爵令嬢エリス・ロザリア・グランディエではなく、ただの旅人エリスになったのだ。
馬車の揺れに身を任せ、私はこれまでの人生を振り返った。地味で目立たない、まるで影のような存在だった私。そんな自分を、私は嫌いだと思っていた。でも、本当は、ただ、ありのままの自分を受け入れてくれる人が、一人もいなかっただけなのかもしれない。
頬を伝う涙を、私はもう拭わなかった。この涙が、これまでの自分への決別だと、そう信じたかったから。
遠くに見える、故郷の街。その街には、もう、私の居場所はない。でも、この世界のどこかに、きっと、私の居場所はあるはずだ。そう信じて、私は、新しい旅に出る。
この旅の先に、どんな未来が待っているのか、私にはまだわからない。でも、もう、怖くはない。だって、もう、これ以上、失うものなんてないのだから。
私は、静かに、そして力強く、心の中で誓った。
いつか、必ず、あの人たちを見返してやる。
そして、最高の幸せを、自分の手で掴んでみせる。
馬車は、朝焼けに染まる道を、ひたすら進んでいく。
その声は、広間中に響き渡っていた。まるで、私を笑いものにするために、わざと大きな声を出しているかのように。
アルベルト様が私に向かって、そう言い放った瞬間、私は世界から色が消えたように感じた。ここは、社交界で最も華やかな舞踏会のはずなのに。きらびやかなシャンデリアも、楽しそうな人々のざわめきも、何もかもが遠い世界の出来事のようだった。
彼は、私の目の前に立っている。私の婚約者である、名門貴族のアルベルト・グランディエ侯爵。その顔は、いつものように整っていて、まるで彫刻みたいに美しい。でも、その瞳には、私への冷たさしか見えなかった。
「退屈、ですか……?」
震える声で尋ねると、アルベルト様はふっと鼻で笑った。
「そうだ。君はいつも同じような地味なドレスを着て、同じような本ばかり読んでいる。話すこともないし、笑うこともしない。そんな君といても、私は何も満たされないんだ」
その言葉が、私の胸に鋭いナイフのように突き刺さる。そう、私は幼い頃から、目立たないように生きてきた。派手なドレスは似合わないと母に言われ、流行りの社交ダンスも苦手だった。唯一の楽しみは、図書館で古い本を読みふけること。でも、それはアルベルト様にとって、ただの「退屈な女」でしかなかったのだ。
「それに、君と結婚しても、我が家の名声は上がらない。君の実家は侯爵家と言っても、社交界では地味な家柄だ」
彼の口から、さらに冷酷な言葉が続く。私は、もう何も言えなかった。ただ、唇を噛み締め、俯くことしかできなかった。
そのとき、アルベルト様の隣に、一人の女性が立つ。彼女は、まばゆいほどに華やかなドレスを身にまとい、その美しい金髪は、まるで太陽の光を閉じ込めたかのように輝いていた。
「アルベルト様、そんな退屈な方のお相手をされていたなんて、大変でしたわね」
彼女は、まるで私を嘲笑うかのように、甘く囁いた。その声は、社交界で最も愛らしいと言われる、大公令嬢セレスティーヌ様のものだった。私は、彼女とアルベルト様が親密な関係にあることを、薄々感じてはいた。でも、まさか、こんな形で、目の前で突きつけられるなんて……。
「セレスティーヌ。これからは、君と私の新しい人生が始まる」
アルベルト様は、私のことなど最初から存在しなかったかのように、セレスティーヌ様の手を優しく取った。二人は、広間の中心へと向かっていく。そして、私の目の前で、人々に向かって高らかに宣言した。
「私、アルベルト・グランディエは、エリスとの婚約を破棄し、セレスティーヌ・ド・ヴァレンティーノ大公令嬢と、新たに婚約することをここに誓います!」
その言葉に、広場はどよめきに包まれた。そして、やがて、私のことを嘲笑うかのような、ひそひそ話が聞こえてくる。
「やっぱりね。あの地味な侯爵令嬢じゃ、アルベルト様には似合わないわ」
「お父様の力を使って無理やり婚約したって噂だったものね。これで一件落着だわ」
私の耳に届くのは、そんな心ない言葉ばかり。私は、耐えきれずに、その場から逃げ出した。誰もいない廊下を走り、そして、広場の隅にある、私の馬車に乗り込んだ。
「馬車を出して。いますぐ、この屋敷から離れて……!」
御者に震える声で頼むと、馬車はゆっくりと動き出した。ガタガタと揺れる馬車の中で、私はただただ泣いていた。涙が止まらなかった。
侯爵家に戻ると、父は私を冷たく迎えた。
「お前という娘は、いったい……。グランディエ家との縁談を壊すとは、いったいどういうつもりだ!」
「ですが、父上……」
「黙れ! お前は明日から、もうこの屋敷にはいられない。もう好きにしなさい」
そう言って、父は私を部屋に閉じ込めた。私は、その夜、一睡もできなかった。父にまで見放された私は、もう、どこにも行く場所がなかった。
でも、夜が明けて、私は一つの決意を固めた。
こんな惨めな人生は、もう嫌だ。もう二度と、誰にも馬鹿にされたくない。
私は、部屋にあった小さな鞄に、必要最低限の荷物を詰め込んだ。母の形見の小さなペンダントと、お気に入りの本を数冊。そして、自分の全財産である、わずかな金貨。それだけを持って、私は夜明け前の薄暗い屋敷をこっそりと抜け出した。
街はまだ静かで、誰もいない。私は、人目につかないように、大通りを避けて歩いた。そして、街の外れにある、馬車の乗り合い場へと向かった。
「どこまで行かれるので?」
乗り合い馬車の御者が、私に尋ねた。
私は、少し考えてから、答えた。
「……できるだけ遠くへ。誰も、私のことを知らない場所へ」
その声は、自分でも驚くほど、決意に満ちていた。
馬車は、ガタゴトと音を立てながら、街を離れていく。窓の外には、見慣れた景色が遠ざかっていく。私は、これまで生きてきた場所を、もう二度と振り返らなかった。
私は、侯爵令嬢エリス・ロザリア・グランディエではなく、ただの旅人エリスになったのだ。
馬車の揺れに身を任せ、私はこれまでの人生を振り返った。地味で目立たない、まるで影のような存在だった私。そんな自分を、私は嫌いだと思っていた。でも、本当は、ただ、ありのままの自分を受け入れてくれる人が、一人もいなかっただけなのかもしれない。
頬を伝う涙を、私はもう拭わなかった。この涙が、これまでの自分への決別だと、そう信じたかったから。
遠くに見える、故郷の街。その街には、もう、私の居場所はない。でも、この世界のどこかに、きっと、私の居場所はあるはずだ。そう信じて、私は、新しい旅に出る。
この旅の先に、どんな未来が待っているのか、私にはまだわからない。でも、もう、怖くはない。だって、もう、これ以上、失うものなんてないのだから。
私は、静かに、そして力強く、心の中で誓った。
いつか、必ず、あの人たちを見返してやる。
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馬車は、朝焼けに染まる道を、ひたすら進んでいく。
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