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王子様は一途という話 1

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「こちらでお待ちください」

王子の部屋の前、小さな待合室のようなところで、メイドが言う。

そして王子の部屋の扉を開け、私が来たことを知らせるために中へ入っていった。

しばらくして、その扉が開く。
しかし、出てきたのはメイドではなく、もちろん王子でもなかった。
ドレスを身にまとった、可愛らしい金髪の姫だった。

彼女は顔を伏せ、こちらに一礼だけすると、目元を隠しながらうつむいて、走り去るようにして行ってしまった。

横顔が少し見えただけだったが、泣いているように見えた。

さらにしばらくして、今度はメイドが扉を開けて出てきた。

「お入りくださいませ」

中に入ると、ユーリン王子がいた。

「やあ、素晴らしいね。やはり君は美しい」

王子は私を見ると、太陽のような微笑みを浮かべた。両手を広げて、優しく抱きしめてくれる。その抱きしめ方ひとつとっても、私を大切にしてくれていることが感じられた。

「ありがとうございます。腕の良い美容師さんたちのおかげです」

「いいや、素材の素晴らしさがあってこそ、輝くものさ」

王子は自ら私をもてなしてくれた。
高級なお茶とケーキが出た。
どちらも、昨日までの私なら一生のうちに一度すら食べられないものだ。

二人で、結婚式の内容を話し合った。

飾る花の種類だとか、料理の内容だとか、登場時の演出だとか。
王子は私の話を嬉しそうに聞いてくれた。

希望に満ちた、夢のように幸せなひとときだった。

やがて夕刻になり、日が落ちる頃に、私は王子の部屋を退室した。

自分の部屋に帰る途中、メイドに、先程の金髪の女性のことを尋ねてみた。

「あれは、ナース姫です。ユーリン王子殿下の又従姉妹にあたられます」

「様子がおかしかったようですけど」

「ナース姫は、ユーリン王子を好いておられましたので。先ほどは、思いの丈を伝えに来られたようです。それを、ユーリン王子がきっぱりとお断りされたので、ショックだったのでしょう」

王族であれば、又従姉妹との結婚もよくある話である。
あの姫は私から見ても可愛らしい容姿をしていた。
それを、断ったのだ。
私のために。

「ユーリン王子の元には、他にも国内外の姫様方から様々なプレゼントが届くのですが、王子殿下は何一つとして受け取られません。自分には心に決めた人がいるから、と」

「そう……」

メイドは私を見て、笑いかけてくれた。

「エマ様は、幸せ者ですね。私もいつか、そんな殿方と結婚したいものです」

「ありがとう」

私も微笑みを返した。



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