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第四章 三つの世界の謎

優しすぎる愛撫

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  京は後ろ手にされたリオの両手を開放すると、汗ばんだ脇の下に両手を入れて抱きあげようとした。
「やめて……ちょっと待って!」
 リオは男の肩にしがみつく。
「どうした」
「怖い……京ちゃん……これ、抜くの……」
 がたがたと震えながら、リオは訴える。巨大なものは、今や微かな痛みを伴うものの、それなりに身体に馴染んでいる。それを抜くとなると、また大きな衝撃を受ける事くらい、簡単に想像できた。   
「大丈夫だよ。ほら、行くぜ」
「嫌っ、待って!」
 懸命の懇願をあっけなくいなし、京はリオをひょいと持ち上げ横抱きにした。
「え……?」
 不思議なほどに何も感じず、リオは問いかけるような眼差しを男に向ける。
「お前は、ただ縛られてただけだよ。見てみろ。あんなのにやられたら、今頃天国行ってるぜ」
 しっかりと腰を支えながら、ほら、と京は顎で後ろを示す。
 振り向けば、さっきまでそこにいたはずの台座は、少し離れた場所にあった。そして足元には、麻縄が無造作に転がっている。腰布を巻いた像の、大きすぎる男根はぬらぬらと光って天を向いてそびえている。確かに尋常なサイズではない。
「催眠術だよ。キムはあれでも医者だからな」
 男はリオを抱いたまま階段を下り、カーペットの道を、ドアに向かって歩いていく。部屋中を満たしていた蝋燭は跡形もなく消えていた。木造りの椅子が、祭壇に向かって、整然と並んでいるだけである。
 廊下に出ると、安堵と共に、今までの疲労と恐怖が、どっとのしかかってきた。
「怖かった……」
 縋り付きながら、リオは言った。
「うん」
 京は頷く。
「痛かったし……俺、本当に死ぬかと思った……」
「わかってる。ごめんな。リオ」
 くったりと身を預けながら、リオはそっと目を瞑る。京の男っぽい匂いに包まれて、胸の中が、温かいもので満たされていく。夜が明ければ、また新たな試練が待っているのかもしれない。でも、今この時だけは、束の間の平和に浸っていたい。
「今までどこにいたの?」
 リオは尋ねた。
「沙蘭を見つけた場所だ」
 京は答える。
「覚悟はしていたつもりだったのに、いざお前が初夜を迎えるとなると、気が狂いそうになっちまってな、やばい事しでかす前に、しばらく姿くらまそうと思ったんだ。だけど、次元を越える手前で、一星に見つかっちまった」
「一星に……?」
「ああ。肝心なところで逃げるなと言われたよ。まだ間に合うから早く迎えにいけって」
 とくとくと心臓が鼓動を速める。京はまだ、自分の事が好きなのだろうか。石像に攻められている間中、京の事を考えていたと、伝えようとして、思いとどまる。もう、今は何も考えたくない。優しく逞しい胸に抱かれて、一晩中、あやされていたい。彼ならきっと、そうしてくれるはずだ。
 部屋につくと、京は素早くバスタブに湯をはった。そして服を着たまま、リオの身体に湯をかけ、抱いて湯船に入れてやる。そして出ていった。
 バスタブの中で、リオは自分の身体を両手で抱えた。ぶるぶるとまた、震えが戻ってくる。白い靄の向こう側に、石像とそして沙蘭が潜んでいる気がして、恐怖に目がくらみそうになった。
 叫びそうになった時、ドアが空き、全裸の京が入ってきた。
「京ちゃんっ……」
 はじかれたように少年は立ち上がり、大量の湯が、バスタブから溢れだす。
「来いよ。俺が綺麗にしてやる」
 男は言い、少年は従った。

 ※ ※ ※ ※ ※ ※

「あっ……ふうっ……はっ……ああっ……」
「おい、もっと足開けよ。隅々まで洗ってやるから」
「んん……そこっ……」
「恥ずかしがるな。力抜いとけ」
 京は、両手にボディソープをたっぷりとつけ、掌全体を使って、幼い身体を清めている。少年はマットの上に無防備な様で横たわり、目を閉じて、刺激に満ちた洗浄を受けていた。
 ただ洗っているだけとはいえ、普段官能を高めるためにされていた事とほぼ同じ動きである。白い太股の内側を円を描くようにしてシャボンをまぶされ、リオは、腰をくねらせた。もう片方の手が、乳首の回りを撫で回す。洗ってやると言いながら、明らかに別な意図をもった手技に、しかしどこかほっとしている自分がいた。
 一人になると、また悪夢が蘇る。だけど、優しい指で弄られていれば、甘い快感に、恐怖が少しだけ薄れていく。身体を裏返され、蕾を大きく広げられても、リオは抵抗しなかった。京は、指の先で、入り口をそっとなぞり、
「よっぼど、怖かったんだな。擦りむけてる」
 独り言みたいに呟くと、少量の湯で石鹸を落した後、徐に舌でべろりと舐めあげた。
「な、嫌……」
「じっとしてろ。俺がほぐしてやる」
 低い声でそう言うと、京はうむを言わせず、敏感な部分に口をつける。
「やっ……やっ……」
 退こうとしたか細い腰を、京は少し強引に引き戻す。
「嫌じゃないだろ? おい、逃げるな。綺麗にしてやるだけだ」
 ざらりとした感触が、下腹に戻る。
 京は、両手で小さな尻を割り広げ、小穴の周辺を取り巻く皺を伸ばした。そして、先端を内部に侵入させていく。
「ああ……」
 男の吐息と、そして舌の熱さが、下腹を甘く痺れさせ、いつしか強張った心までもほぐしていく。このまま、何もかも忘れさせて欲しい。リオは差し出された快感に縋った。
「ああん……はっ……そこ……ああ……」
 立ち上がりかけた茎を、京は後ろからサポートした。両手でそっと包み込み、皮をめくるように上下させる。
「あっ、あっ……」
 前と、そして後ろを攻められて、リオは発情した猫のような、卑猥な声をあげてもだえた。長く繊細な指の隙間から、白い精液が零れていく。あたりが、いやらしく濡れていく。
 再び仰向けられ、ウエストのあたりを洗われた時には、リオは、身体を桃色にそめて、荒い息をついていた。
「終わったぜ」
 男は少年の半身を起こし、肩から、そっと湯をかけた。
「……」
 物問いたげな視線が、京を見上げる。男はくすりと笑い、バスタブのへりに腰掛けると、少年を膝の上に抱きあげた。
「心配すんな。これで終わりじゃねえよ。まだ全然足りないんだろ? お前相手に今更駆け引きなんかする気はない……ちゃんと最後まで達かせてやるから」
 そう言うと京はリオを上向かせ、小さな唇を激しく奪った。歯列を割り、生暖かい舌が入ってくる。リオはびくつきながらも、自身の舌を絡めて応えた。性器が、再び握りこまれ、扱かれる。

 あ……ああ……

 はっきりと、目的を持った愛撫は、さっきまでのそれとは桁違いの快感を呼び覚ました。塞がれた唇からは、声にならない喘ぎ洩れる。男は、乳首をそっとつまみ、指と指の間で柔らかく挟む。
 頭の中が白くなり、リオは息を継ごうとした。だが、男は許さず、大量の唾液が送りこまれる。無理やり嚥下させられた時、リオの下腹は決壊した。
「ん……っ、んんんっ……」
 無数の星が頭の中に瞬き、噴き出したものが、男の手を汚していく。最初に大きな波がきて、そして、糖度の高い小波が、リオの背中を痙攣させる。なのに、キスは終わらない。
「はあっ……!」
 やっと口を開放され、リオは大きく息をつく。京は、まだ性器を揉みながら、愛らしい反応を見せる腕の中の少年に目を細めた。
「お前の事が、本当に好きだよ」
 まっすぐな目で見つめられ、リオの心臓は、再び鼓動を速めてしまう。
「京ちゃん……」
 リオは、男の胸に顔を埋めた。一度達ったのに、男はまだ愛しげに、リオの性器に触れている。あんな風に見つめられ、こんなに優しく触れられたら、きっと何度だって、気持よくなってしまう。もう既にじわじわと掘り起こされていく快感の芽を感じながら、リオはそっと目を瞑った。
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