70 / 91
第二話 ロゼの事は、実はそんなに嫌ってません!
しおりを挟む
時は少し遡ります。
多分、他人から見たら【私は不憫な子で何でもロゼに取り上げられている】そう見えている事でしょう…ですが私は全然不憫ではありません!
決して負け惜しみでは無いですよ?
「お姉ちゃん...このバッグ、私に頂戴? これはお姉ちゃんより私みたいな可愛い子の方が似合いますわ」
ちょっとムカって来ますがその程度です。
しいて言うなら『物がとられる事』よりこの言い方に腹が少したつだけですね。
「『お姉ちゃんよりの』下りは余計だけど...欲しいならあげるからとっと出て行ってくれないかな?」
「それじゃ貰っていくわね、お姉ちゃん」
欲しい物を手に入れたのに何時もロゼは不満そうな顔をしています。
その辺りの感覚が私には解りません。
「お姉ちゃん、この蝶々のブローチ綺麗ですわね...貰いますわね」
「そんな、それは私の大事な物...返して」
「いーえ、これは私の方が似合いますから貰いますわね」
大切な物を取り上げられた...そう思うよね?
【甘いわ】アルモンドのショコラパフェより甘い!
何故なら、本当の私は元々【物】への執着が全く無い女なのよ。
だけど、人の物をとりあげた癖に嫌な顔されるのは腹が立つから《大切な物》をとりあげた。
そう感じる様に小芝居を入れている訳。
そうするとロゼは、満足そうに厭らしい笑みを浮かべる。
満足そうに笑うの、私は『気にしてない』そういうそぶりだと不満そうななのよ。
まぁどうでも良いけど、人の大切な物を奪う最低な妹、それがロゼ...そのまま【誰からも嫌われる嫌な人間】になれば良いと思うわ。
私はと言うと、実は本当に【物に執着しない】タイプなのよ。
例えば、バックや指輪が欲しいとすると【実は手に入れるまでが楽しい】そう感じるタイプ。
そして手に入れるとその途端に【欲しくなくなります】
バックも宝石も欲しいから仕事を頑張る、まぁトロフィーみたいな物。
手に入れた途端にそれは色あせていく、そしてもういいやと最後にはなってしまう。
前世で会社でOLをしている時も、友人に「このネックレスあげるわ」「このバック欲しいなら、ランチ奢ってくれたらあげるよ」と普通にあげちゃっていましたよ。
ただ一つ妹を許せないのはロゼは「お姉ちゃんありがとう」とお礼の言葉が無い事だけ。
もし、笑顔で「お姉ちゃんありがとう、にぱー」なんて可愛らしく笑ってくれるなら、多分、私の持っている物の殆どあげても笑っていられるかも知れない。
まぁ…本は別だけどね。
ロゼと私は母親が違います。
ロゼは後妻の子で、私にとっての継母のロザリーは健在なのですが。
最初はお義母さまもロゼと一緒に私を虐めてきました。
ですが、今では...「ロゼいい加減にしなさい! 貴方は沢山持っているでしょう」とロゼを怒る様になってきました。
まぁ、このお義母さまにも欲しがる物を沢山あげましたし...自分やロゼの部屋に比べて私の部屋に何もないから良心の呵責に耐え切れなくなったのでしょうね。
お義母さまが変わったのにはこんなエピソードがありました。
「ロザリー、それはマリアの母親の形見だ...何故マリアの物をお前が着ている」
「そんな、これはマリアがくれたんです...信じて下さい!」
そんな風な事件があり、継母は私に嵌められたと思ったみたいです。
ここで断罪なんかしても何も良い事はありません。
この場でお義母さまがお父様に怒られても、後で何倍もの嫌味を言われるだけですからね。
「ああ、それなら本当にお義母様に差し上げましたよ! 私にはまだ早いしドレスもお義母様が着た方が喜びますから」
まぁ前世持ちの私だからの事なかれ処世術です。
ですが…
「「マリア」」
此処まで効果があるとは思いませんでした、こんな事で、何故、2人が涙ぐんでいるのか私には解りません...ですが、これ以降、お義母さまもかなり優しくなりました。
私はどうも、物には無頓着でして、このドレスも、要らないから差し上げても良い、そう思っていた物ですから。
私は【思い出は心の中にある】派なので個人の形見にも未練がありません。
楽しかった思い出は、物なんてなくとも目をつぶれば何時でも思い出せますもん。
その事をお父様とお義母様にその事を言ったら...更に泣かれて本当に困りました。
私は物を余り持ちたいと思いません。
前世の私は最初散らかし放題の汚部屋に住んでいました。
前世の親にも心配される位でしたが、ある時ミニマリストに目覚めて、その時から、スマホとパソコンと着替え5枚位しか持ったない生活を送っていました。
これでも、私的には寧ろ物があり過ぎです。
しかも、ロゼに取られても...そこは貴族の家、必要な物はお父様やお義母様が直ぐに買ってくれますから、別に困る事はありません。
取られた所で新品で買って貰えるから生活には問題はありません。
寧ろ、新品になるから物によっては嬉しかったりしますよ。
だから、周りの人間は家族や使用人も含み、私がロゼを嫌っている様に思っているかも知れませんが。
実は周りが思っている程は嫌ってないんですよ。
だからって好きかと言われれば、好きではありません...そりゃぁ、人から物を物を無理やり取り上げながら感謝一つしない人間。
好きになんて成れませんよね?
ですが、そこは家族、勿論、不幸な目に会って欲しいとは思っていませんよ。
【ロザリーSIDE】
私事、ロザリー、ドレーク伯爵家に後妻として嫁いできました。
ドレーク家にはマリアという先妻の子が居て、私はこの子が凄く嫌いで仕方がありません。
ですが、後妻という立場ではそれを顔に出す訳にはいきません。
貧乏子爵家に生まれて貴族と言うのは名ばかりで、貧乏だった私には【マリアが凄く鼻についた】のです。
周りから、解らない様に【大切な物】を取り上げたり、お金も最低限しか渡しませんでした。
まぁ、使用人にはまるわかりですが、主人や他の貴族には絶対に解らないでしょうね。
ですが...この子は何時も、そんな事には屈せずに、泣き言すら言いません。
泣きつく姿を見たくてしているのにですが...一向に泣きついてきません。
正直言うと、少し薄気味悪く思えます。
結婚して暫くすると私は子供を身籠りました。
これで生まれてくる子が男なら、もうドレーク家は【私のお腹の子が後継ぎです】
この瞬間『勝った』と思いました。
まぁ確率は1/2ですからまだ確実ではありません、女だとしてもどうにか出来る、そんな確信があったのです。
マリアの悔しい顔が見たくて私はマリアを呼びつけました。
流石のマリアもきっと泣き出すに違いありません。
意地悪い顔を作りながら言ってやりましたわ。
「マリア、貴方も終わりね、この子が男の子ならこの家は私達の物だわ...そうしたら貴方はこの家から叩き出してあげる」
「お義母様、お体に障りますよ!今はゆっくりとお休みください...それがお義母様の望みなら別に私は構いませんよ、規定通りに【貴族家から追い出した場合の手切れ金】を頂いて此処を私は去りますから、安心して下さい、今はそれより興奮なさらずに休養をして下さい、子供が流れてしまっては、それも出来なくなるんですからね」
この子が何を言っているのか解らない。
貴族にとって家を追い出される、それ以上の屈辱は無い筈なのに。
「私は...貴方を追い出す、そう言ったのよ?」
何で、そんな顔が出来るの? 私なら絶対に耐えられない。
「はい、構いませんよ!追い出されたら、そうですね、王都にでも行って王立図書館の司書にでもなりますよかね、 私は揉めないで去りますから、推薦状は下さいね」
なんででしょう、何故だか心がチクりと痛んだ気がします。
「本気で言っているの?」
「はい、お義母様とお父様、そして生まれてくる子には【私は邪魔でしょうから】去りますから、ご安心下さいね」
「マリア」
更に、心が痛んだ...心臓がチクチクする。
自分には此処には居場所が無いから...そう言われた気がした。
だが、私は【自分の居場所とこれから生まれてくる子の為】この子を犠牲にしなくてはいけない。
だから同情なんかしてはいけないわ。
だけど...この子は、駄目、マリアの事なんて考えては駄目だ。
それから暫くして、赤ちゃんが生まれてきた。
残念な事に女の子だった。
綺麗な私に似た赤髪だったから、主人と話しあって【ロゼ】と名前をつけたわ。
女の子だから本当は悔しがる筈なのに。
不思議な事に、私は...何故かホッとしていた。
【これならマリアを追い出せない】
それなのに...本当に可笑しいわね。
勿論、当たり前のように自分の子ロゼを優先して可愛がっていた。
自分が欲しい物は勿論、ロゼが欲しがった物は全部マリアから取り上げた。
主人は仕事が忙しく家の事は全部私任せだから、気がついていないと思うわ。
使用人も私やロゼの味方だから...大丈夫だ。
だが、ある時、マリアから奪ったお気に入りのドレスを着ていた時だ...主人に気がつかれました。
「ロザリー、それはマリアの母親の形見だ...何故マリアの物をお前が着ている」
嘘、このドレスはあの子の親の形見だったの?
あの子、そんなに悲しい顔なんてして無かったのに。
もう、完全に詰んだかも知れない。
貴族の夫人なんて立場は離婚されれば、それで終わりだわ。
例え見苦しくても、誤魔化せるなら誤魔化さないと。
「そんな、これはマリアがくれたんです...信じて下さい!」
主人は未だに前妻を愛していた。
これがあの子が考えていた罠なのかも知れない。
今迄黙って【差し出していた】のはこの為だったのね...流石にこれは言い逃れできないわ。
これで私は追い出されるわ、娘共々貧乏に逆戻りだわ。
だが、違った。
「ああ、それなら私がお義母様に差し上げましたよ! 私にはまだ早いしドレスもお義母様が着た方が喜びますから」
嘘よ...これは私が無理やり奪った物でしょう。
貴方がくれた物じゃ無いわ、お母様の形見だったのでしょう?
大切な物じゃない...
貴方が、私が脅して取り上げた、盗んだ...そう言うだけで私達は追い出されるかも知れないのに...
それでも庇うと言うの?
自分とマリアを見比べたら....マリアはまるで昔の私だ。
貧乏だったから貴族なのに何も持って無かった私みたいに見えた。
私が、ロゼが取り上げたから
それに対して...今の私はあの頃、私を馬鹿にしていた令嬢みたいな事をしている。
私は...自分が【一番嫌いな人間】になってしまっていたのね。
この子は凄いな、多分私なんて、大嫌いな筈なのに【堪えて庇ってくれたんだ】
もう、この子に意地悪するのは止めよう...ちゃんと娘を扱う様にロゼを愛するようにマリアも愛してあげよう...そう考えた。
涙が出て来た...この涙は、自分の不甲斐なさから来た物だと思う。
多分、横の主人の涙とは違う涙だと思う。
この時から私は、マリアの本当の母親になろうと決意しました。
多分、他人から見たら【私は不憫な子で何でもロゼに取り上げられている】そう見えている事でしょう…ですが私は全然不憫ではありません!
決して負け惜しみでは無いですよ?
「お姉ちゃん...このバッグ、私に頂戴? これはお姉ちゃんより私みたいな可愛い子の方が似合いますわ」
ちょっとムカって来ますがその程度です。
しいて言うなら『物がとられる事』よりこの言い方に腹が少したつだけですね。
「『お姉ちゃんよりの』下りは余計だけど...欲しいならあげるからとっと出て行ってくれないかな?」
「それじゃ貰っていくわね、お姉ちゃん」
欲しい物を手に入れたのに何時もロゼは不満そうな顔をしています。
その辺りの感覚が私には解りません。
「お姉ちゃん、この蝶々のブローチ綺麗ですわね...貰いますわね」
「そんな、それは私の大事な物...返して」
「いーえ、これは私の方が似合いますから貰いますわね」
大切な物を取り上げられた...そう思うよね?
【甘いわ】アルモンドのショコラパフェより甘い!
何故なら、本当の私は元々【物】への執着が全く無い女なのよ。
だけど、人の物をとりあげた癖に嫌な顔されるのは腹が立つから《大切な物》をとりあげた。
そう感じる様に小芝居を入れている訳。
そうするとロゼは、満足そうに厭らしい笑みを浮かべる。
満足そうに笑うの、私は『気にしてない』そういうそぶりだと不満そうななのよ。
まぁどうでも良いけど、人の大切な物を奪う最低な妹、それがロゼ...そのまま【誰からも嫌われる嫌な人間】になれば良いと思うわ。
私はと言うと、実は本当に【物に執着しない】タイプなのよ。
例えば、バックや指輪が欲しいとすると【実は手に入れるまでが楽しい】そう感じるタイプ。
そして手に入れるとその途端に【欲しくなくなります】
バックも宝石も欲しいから仕事を頑張る、まぁトロフィーみたいな物。
手に入れた途端にそれは色あせていく、そしてもういいやと最後にはなってしまう。
前世で会社でOLをしている時も、友人に「このネックレスあげるわ」「このバック欲しいなら、ランチ奢ってくれたらあげるよ」と普通にあげちゃっていましたよ。
ただ一つ妹を許せないのはロゼは「お姉ちゃんありがとう」とお礼の言葉が無い事だけ。
もし、笑顔で「お姉ちゃんありがとう、にぱー」なんて可愛らしく笑ってくれるなら、多分、私の持っている物の殆どあげても笑っていられるかも知れない。
まぁ…本は別だけどね。
ロゼと私は母親が違います。
ロゼは後妻の子で、私にとっての継母のロザリーは健在なのですが。
最初はお義母さまもロゼと一緒に私を虐めてきました。
ですが、今では...「ロゼいい加減にしなさい! 貴方は沢山持っているでしょう」とロゼを怒る様になってきました。
まぁ、このお義母さまにも欲しがる物を沢山あげましたし...自分やロゼの部屋に比べて私の部屋に何もないから良心の呵責に耐え切れなくなったのでしょうね。
お義母さまが変わったのにはこんなエピソードがありました。
「ロザリー、それはマリアの母親の形見だ...何故マリアの物をお前が着ている」
「そんな、これはマリアがくれたんです...信じて下さい!」
そんな風な事件があり、継母は私に嵌められたと思ったみたいです。
ここで断罪なんかしても何も良い事はありません。
この場でお義母さまがお父様に怒られても、後で何倍もの嫌味を言われるだけですからね。
「ああ、それなら本当にお義母様に差し上げましたよ! 私にはまだ早いしドレスもお義母様が着た方が喜びますから」
まぁ前世持ちの私だからの事なかれ処世術です。
ですが…
「「マリア」」
此処まで効果があるとは思いませんでした、こんな事で、何故、2人が涙ぐんでいるのか私には解りません...ですが、これ以降、お義母さまもかなり優しくなりました。
私はどうも、物には無頓着でして、このドレスも、要らないから差し上げても良い、そう思っていた物ですから。
私は【思い出は心の中にある】派なので個人の形見にも未練がありません。
楽しかった思い出は、物なんてなくとも目をつぶれば何時でも思い出せますもん。
その事をお父様とお義母様にその事を言ったら...更に泣かれて本当に困りました。
私は物を余り持ちたいと思いません。
前世の私は最初散らかし放題の汚部屋に住んでいました。
前世の親にも心配される位でしたが、ある時ミニマリストに目覚めて、その時から、スマホとパソコンと着替え5枚位しか持ったない生活を送っていました。
これでも、私的には寧ろ物があり過ぎです。
しかも、ロゼに取られても...そこは貴族の家、必要な物はお父様やお義母様が直ぐに買ってくれますから、別に困る事はありません。
取られた所で新品で買って貰えるから生活には問題はありません。
寧ろ、新品になるから物によっては嬉しかったりしますよ。
だから、周りの人間は家族や使用人も含み、私がロゼを嫌っている様に思っているかも知れませんが。
実は周りが思っている程は嫌ってないんですよ。
だからって好きかと言われれば、好きではありません...そりゃぁ、人から物を物を無理やり取り上げながら感謝一つしない人間。
好きになんて成れませんよね?
ですが、そこは家族、勿論、不幸な目に会って欲しいとは思っていませんよ。
【ロザリーSIDE】
私事、ロザリー、ドレーク伯爵家に後妻として嫁いできました。
ドレーク家にはマリアという先妻の子が居て、私はこの子が凄く嫌いで仕方がありません。
ですが、後妻という立場ではそれを顔に出す訳にはいきません。
貧乏子爵家に生まれて貴族と言うのは名ばかりで、貧乏だった私には【マリアが凄く鼻についた】のです。
周りから、解らない様に【大切な物】を取り上げたり、お金も最低限しか渡しませんでした。
まぁ、使用人にはまるわかりですが、主人や他の貴族には絶対に解らないでしょうね。
ですが...この子は何時も、そんな事には屈せずに、泣き言すら言いません。
泣きつく姿を見たくてしているのにですが...一向に泣きついてきません。
正直言うと、少し薄気味悪く思えます。
結婚して暫くすると私は子供を身籠りました。
これで生まれてくる子が男なら、もうドレーク家は【私のお腹の子が後継ぎです】
この瞬間『勝った』と思いました。
まぁ確率は1/2ですからまだ確実ではありません、女だとしてもどうにか出来る、そんな確信があったのです。
マリアの悔しい顔が見たくて私はマリアを呼びつけました。
流石のマリアもきっと泣き出すに違いありません。
意地悪い顔を作りながら言ってやりましたわ。
「マリア、貴方も終わりね、この子が男の子ならこの家は私達の物だわ...そうしたら貴方はこの家から叩き出してあげる」
「お義母様、お体に障りますよ!今はゆっくりとお休みください...それがお義母様の望みなら別に私は構いませんよ、規定通りに【貴族家から追い出した場合の手切れ金】を頂いて此処を私は去りますから、安心して下さい、今はそれより興奮なさらずに休養をして下さい、子供が流れてしまっては、それも出来なくなるんですからね」
この子が何を言っているのか解らない。
貴族にとって家を追い出される、それ以上の屈辱は無い筈なのに。
「私は...貴方を追い出す、そう言ったのよ?」
何で、そんな顔が出来るの? 私なら絶対に耐えられない。
「はい、構いませんよ!追い出されたら、そうですね、王都にでも行って王立図書館の司書にでもなりますよかね、 私は揉めないで去りますから、推薦状は下さいね」
なんででしょう、何故だか心がチクりと痛んだ気がします。
「本気で言っているの?」
「はい、お義母様とお父様、そして生まれてくる子には【私は邪魔でしょうから】去りますから、ご安心下さいね」
「マリア」
更に、心が痛んだ...心臓がチクチクする。
自分には此処には居場所が無いから...そう言われた気がした。
だが、私は【自分の居場所とこれから生まれてくる子の為】この子を犠牲にしなくてはいけない。
だから同情なんかしてはいけないわ。
だけど...この子は、駄目、マリアの事なんて考えては駄目だ。
それから暫くして、赤ちゃんが生まれてきた。
残念な事に女の子だった。
綺麗な私に似た赤髪だったから、主人と話しあって【ロゼ】と名前をつけたわ。
女の子だから本当は悔しがる筈なのに。
不思議な事に、私は...何故かホッとしていた。
【これならマリアを追い出せない】
それなのに...本当に可笑しいわね。
勿論、当たり前のように自分の子ロゼを優先して可愛がっていた。
自分が欲しい物は勿論、ロゼが欲しがった物は全部マリアから取り上げた。
主人は仕事が忙しく家の事は全部私任せだから、気がついていないと思うわ。
使用人も私やロゼの味方だから...大丈夫だ。
だが、ある時、マリアから奪ったお気に入りのドレスを着ていた時だ...主人に気がつかれました。
「ロザリー、それはマリアの母親の形見だ...何故マリアの物をお前が着ている」
嘘、このドレスはあの子の親の形見だったの?
あの子、そんなに悲しい顔なんてして無かったのに。
もう、完全に詰んだかも知れない。
貴族の夫人なんて立場は離婚されれば、それで終わりだわ。
例え見苦しくても、誤魔化せるなら誤魔化さないと。
「そんな、これはマリアがくれたんです...信じて下さい!」
主人は未だに前妻を愛していた。
これがあの子が考えていた罠なのかも知れない。
今迄黙って【差し出していた】のはこの為だったのね...流石にこれは言い逃れできないわ。
これで私は追い出されるわ、娘共々貧乏に逆戻りだわ。
だが、違った。
「ああ、それなら私がお義母様に差し上げましたよ! 私にはまだ早いしドレスもお義母様が着た方が喜びますから」
嘘よ...これは私が無理やり奪った物でしょう。
貴方がくれた物じゃ無いわ、お母様の形見だったのでしょう?
大切な物じゃない...
貴方が、私が脅して取り上げた、盗んだ...そう言うだけで私達は追い出されるかも知れないのに...
それでも庇うと言うの?
自分とマリアを見比べたら....マリアはまるで昔の私だ。
貧乏だったから貴族なのに何も持って無かった私みたいに見えた。
私が、ロゼが取り上げたから
それに対して...今の私はあの頃、私を馬鹿にしていた令嬢みたいな事をしている。
私は...自分が【一番嫌いな人間】になってしまっていたのね。
この子は凄いな、多分私なんて、大嫌いな筈なのに【堪えて庇ってくれたんだ】
もう、この子に意地悪するのは止めよう...ちゃんと娘を扱う様にロゼを愛するようにマリアも愛してあげよう...そう考えた。
涙が出て来た...この涙は、自分の不甲斐なさから来た物だと思う。
多分、横の主人の涙とは違う涙だと思う。
この時から私は、マリアの本当の母親になろうと決意しました。
33
あなたにおすすめの小説
私を溺愛している婚約者を聖女(妹)が奪おうとしてくるのですが、何をしても無駄だと思います
***あかしえ
恋愛
薄幸の美少年エルウィンに一目惚れした強気な伯爵令嬢ルイーゼは、性悪な婚約者(仮)に秒で正義の鉄槌を振り下ろし、見事、彼の婚約者に収まった。
しかし彼には運命の恋人――『番い』が存在した。しかも一年前にできたルイーゼの美しい義理の妹。
彼女は家族を世界を味方に付けて、純粋な恋心を盾にルイーゼから婚約者を奪おうとする。
※タイトル変更しました
小説家になろうでも掲載してます
幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ
猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。
そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。
たった一つボタンを掛け違えてしまったために、
最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。
主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?
婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!
志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。
親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。
本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。
【完結】私のことを愛さないと仰ったはずなのに 〜家族に虐げれ、妹のワガママで婚約破棄をされた令嬢は、新しい婚約者に溺愛される〜
ゆうき
恋愛
とある子爵家の長女であるエルミーユは、家長の父と使用人の母から生まれたことと、常人離れした記憶力を持っているせいで、幼い頃から家族に嫌われ、酷い暴言を言われたり、酷い扱いをされる生活を送っていた。
エルミーユには、十歳の時に決められた婚約者がおり、十八歳になったら家を出て嫁ぐことが決められていた。
地獄のような家を出るために、なにをされても気丈に振舞う生活を送り続け、無事に十八歳を迎える。
しかし、まだ婚約者がおらず、エルミーユだけ結婚するのが面白くないと思った、ワガママな異母妹の策略で騙されてしまった婚約者に、婚約破棄を突き付けられてしまう。
突然結婚の話が無くなり、落胆するエルミーユは、とあるパーティーで伯爵家の若き家長、ブラハルトと出会う。
社交界では彼の恐ろしい噂が流れており、彼は孤立してしまっていたが、少し話をしたエルミーユは、彼が噂のような恐ろしい人ではないと気づき、一緒にいてとても居心地が良いと感じる。
そんなブラハルトと、互いの結婚事情について話した後、互いに利益があるから、婚約しようと持ち出される。
喜んで婚約を受けるエルミーユに、ブラハルトは思わぬことを口にした。それは、エルミーユのことは愛さないというものだった。
それでも全然構わないと思い、ブラハルトとの生活が始まったが、愛さないという話だったのに、なぜか溺愛されてしまい……?
⭐︎全56話、最終話まで予約投稿済みです。小説家になろう様にも投稿しております。2/16女性HOTランキング1位ありがとうございます!⭐︎
私だってあなたなんて願い下げです!これからの人生は好きに生きます
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のジャンヌは、4年もの間ずっと婚約者で侯爵令息のシャーロンに冷遇されてきた。
オレンジ色の髪に吊り上がった真っ赤な瞳のせいで、一見怖そうに見えるジャンヌに対し、この国で3本の指に入るほどの美青年、シャーロン。美しいシャーロンを、令嬢たちが放っておく訳もなく、常に令嬢に囲まれて楽しそうに過ごしているシャーロンを、ただ見つめる事しか出来ないジャンヌ。
それでも4年前、助けてもらった恩を感じていたジャンヌは、シャーロンを想い続けていたのだが…
ある日いつもの様に辛辣な言葉が並ぶ手紙が届いたのだが、その中にはシャーロンが令嬢たちと口づけをしたり抱き合っている写真が入っていたのだ。それもどの写真も、別の令嬢だ。
自分の事を嫌っている事は気が付いていた。他の令嬢たちと仲が良いのも知っていた。でも、まさかこんな不貞を働いているだなんて、気持ち悪い。
正気を取り戻したジャンヌは、この写真を証拠にシャーロンと婚約破棄をする事を決意。婚約破棄出来た暁には、大好きだった騎士団に戻ろう、そう決めたのだった。
そして両親からも婚約破棄に同意してもらい、シャーロンの家へと向かったのだが…
※カクヨム、なろうでも投稿しています。
よろしくお願いします。
お姉さまに婚約者を奪われたけど、私は辺境伯と結ばれた~無知なお姉さまは辺境伯の地位の高さを知らない~
マルローネ
恋愛
サイドル王国の子爵家の次女であるテレーズは、長女のマリアに婚約者のラゴウ伯爵を奪われた。
その後、テレーズは辺境伯カインとの婚約が成立するが、マリアやラゴウは所詮は地方領主だとしてバカにし続ける。
しかし、無知な彼らは知らなかったのだ。西の国境線を領地としている辺境伯カインの地位の高さを……。
貴族としての基本的な知識が不足している二人にテレーズは失笑するのだった。
そしてその無知さは取り返しのつかない事態を招くことになる──。
妃殿下、私の婚約者から手を引いてくれませんか?
ハートリオ
恋愛
茶髪茶目のポッチャリ令嬢ロサ。
イケメン達を翻弄するも無自覚。
ロサには人に言えない、言いたくない秘密があってイケメンどころではないのだ。
そんなロサ、長年の婚約者が婚約を解消しようとしているらしいと聞かされ…
剣、馬車、ドレスのヨーロッパ風異世界です。
御脱字、申し訳ございません。
1話が長めだと思われるかもしれませんが会話が多いので読みやすいのではないかと思います。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる