悪徳貴族になろうとしたが

石のやっさん

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【閑話】まとめ

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【閑話】冥界にてアマンダに再開


頭が痛い。

あと、俺がやり残した事と言えば、この世界で家族だった者の事だ。

俺には...神としてのパパやママから貰った能力があり冥界に行ける。

本当は親父とかお袋と言いたいが、呪いの様にそう思うと悲しい顔が見えてくる。

俺には凄く似合わないが仕方ない。

ラファエルに冥界への行き方を聴いてみたら、

「それなら、イストリア様に頼んでみますね」と笑顔で答えた。

ある意味天使って万能秘書も兼ねている。

そう思える。

所が、ラファエルが何か行動を起こす前に、目の前に凄く豪華なゲートが現れた。

「ルディウス、見ていましたわ、冥界に行きたいのですね、早速参りましょう」

「イストリア様、早いですね? まさか女神ともあろう者が覗き見してたんですか? ストーカー女神とか受けるんですが」

「そんな事してないわ」


「その割には随分早いですね」


「そんな駄天使は置いておいて行きましょう」

「駄天使? 文字が違うし、今の私はちゃんとした天使長ですよ」

「天使なら私を敬いなさい」

「あ~そういうのはちょっと、私やトールが仕えているのはルディウス様であって貴方じゃないわ」

「私だって女神です」


「何いっているのかな? それってルデイウス様の記憶の世界じゃ、直接勤めても居ないのに《私だって社長なのよ》とか言い出す痛い女じゃないかな? 私もトールもルデイウス様という優良企業に入社しているんであって、合同会社イストリアなんて変な会社に勤めているわけじゃないの? 解りますか? まぁ社長同士多少の付き合いがあるから、融通位利かせてあげようかな、その程度の存在よ」


「言わせて置けば...まぁ良いわ、ルデイウス、こんなアホな天使は置いておいて行きましょう? ゲートを繋げたからさぁ」

「ちょっと私も行く」

「今回は留守番してなさいな、ラファエルちゃん」

「そんな、意地悪しなくても良いじゃ無いですか」


「ちっ、ボソ《あんたは私の恋敵、連れて行くわけ無いでしょう》」


《何で女神の癖にそこ迄心が狭い訳? まさかルデイウス様の他の女性にも意地悪して》

《しないわよ...皆私の子みたいな者だからね、それに人間の寿命は60年前後、そしてこの神界に来るまでにルディウスは何百年、もしかしたら何千年掛るわ、そういう意味では女神の私にとっては僅かな時間だけ、ルデイウスがこちらに来るまでの僅かな時間だけ過ごす人だもん、心の広い私は赦してあげるわ》


《その広い心で、私も許して下さいよ~」

《駄目よ? 私と同じ様に不老不死の貴方はルディウスに纏わりつく寄生虫...赦す訳ないでしょう》

《....》




「おーい、2人してどうした?」

「何でもないですよ、ルディウス」

「そうですよ、行ってらっしゃい」


「どうしたんだ、ラファエル? 今回はついて来ないのか?」

「そうですよね、私がついて行かないと不便でしょうからついて行きます」

「...(チッ)」




【冥界にて】


「私がこの世界で冥界神をしているカムラと申します...ですが凄いですねケイン様の魂の息子様ですか...はははっ正直言いまして雲の上のその又上の世界の神ですね...あっルディウス様も、今の段階でもう私より数十倍の能力をお持ちです」

「自分では実感が無いですが」

「望まれたら、此処を譲って私が補佐官に落とされる位の差が...あっしないで下さいね」

「そんな事はしませんよ」

「助かります」

「それでは、先に事前情報をお話ししましょうか?」

「はい」

「まず、ヘンドリックの魂ですが、此処にはいません」

「どういう事ですか?」

「御存じかと思いますが、此処に居るのは転生する間の僅かな期間だけです、もうとっくに他の世界に転生させました」

「そうですか...ですが、何でこの世界じゃないのでしょうか?」

「実は」




【転生神 カムラの話し】


【ヘンドリック】


「ヘンドリックの魂を譲り渡せですって」

「そうだ」

「何で、只の子供の魂を態々他の世界に持って行くのですか?」

「実はその世界には《やんごと事無き御方》が誕生するかも知れないんだ、その方に知らないうちにあだをなした、だから引き離そうという考えだ」


「会わないから大丈夫なのでは」

「そうかも知れないが、その方が神になった時に《憎しみ》が湧くかも知れない、そうなったらその魂も可哀想だし、その方も愉快には暮らせまい」


「そう言う事なら仕方ないですね...それでこの魂はどちらに」

「上級世界 エルザ―ド、私の世界に持っていく」

「なななな、何も活躍しなかった魂が1階上の世界に行く...あり得ない」

「その代わり、セミからスタートだ」

「人なのにセミ....虫からですか」

「ああっ 魂でいうなら、この世界で聖人で、その中でも活躍した者のみが上の世界に行ける、その位の徳が必要なのだ」

「それは解ります」

「セミは殆ど害をなさないから、徳が溜まりやすい、だから、数万回セミとして生きて貰い必要な徳が溜まったら記憶を消して人として生きて貰うつもりだ」

「褒美なのか罰なのか解りませんね」

「まぁ、後に神になる存在を傷つけた、だがその人物に殺された...プラマイゼロって所だな、人では無くなるがセミからスタートは苦しいが上の階層の世界に行くという栄誉が貰えたんだ、良いんじゃないか...先々は人間に成れる保証付きで」

「成程」





「と言う訳で、ヘンドリックは上の階層の世界でセミに転生しました」


「ヘンドリックはセミに成ったんですか...」

まさかセミなんて結構酷く無いか...

「あの、ルディウス様勘違いしないで下さいね、貴方の様な方は別ですが、優れた世界に転生するのは魂的には凄く幸せなのです」

「そうですか...」

「はい」

まぁ、幸せと言う事なら良いか。


【アベル】


「アベル様は、異世界で勇者になってますよ」

そうかアベルは勇者になったのか...

「ですが、余り幸せでは無いですね」

「何故でしょうか?」


「いや、転生する時にある程度、要望を聞くのですが、元は英雄です、ルディウス様に失礼な事はしましたが、庇った事や詫びた事もあり、かなりプラスの人生が送れるはずでした」


「ならば何故」

はっきり言ってアベルには嫌な思い出も多いが、良い思い出もある。

そして、俺は父親であるのにアベルを殺そうと思った。

まぁ、俺が手を下す前に《死んでしまったが》それは恐らく...まぁ知るのは止めよう。


「はっきり言いまして《英雄》《魔法剣士》その辺りのジョブで貴族に成って成功して幸せな結婚出来る可能性が高い能力もあげられたのですが..」


「普通に良い人生だと思いますが」

「ですが、どうしても勇者になりたいという要望で、他の世界で空きがあったので廻してあげましたが、その世界の魔王はかなり強く、勇者は勝てないのが確実という世界でした」

「それじゃ、不幸になる確率は高いですね」


「あっ、でも死んじゃうけど幸せですよ! 勇者パーティーは美少女揃い、そして魅力値が高いからハーレム状態、魔族の幹部は弱いからそこまで勝てる、金も地位も女も全部手に入りますね...ただ20歳位で多分魔王に挑んで死にますが...ただこれはあくまで私の予想ですから、確実じゃありません...見て見ますか」


見れるのか?

なんだ、まだガキだな。


「あっ...」

「どうしたんですか?」

「これ、邪神ゲストリア..」

女神イストリアの言う事では、自分が戦った邪神ゲストリアがその世界の魔王を殺して魔王に居座ったそうだ。

「これ無理ですね」

「あの、戦って死んだ後のアベルはどうなるのですか?」

「まだ、英雄時代の貯金もあるし此処でも勇者としての徳の貯金も溜まるからその次までは幸せが約束されると思います」

「それなら良いか」

アベルは親として未熟なだけだった。

恨みもそんなに無い。

見知らぬ誰かとアベルなら、アベルを助ける位の気持ちはある。

だが...ルドルの方が100倍大切だけどな...



【アマンダ】

「久しぶり、ルディウス」

「久しぶりだね、ママ、アマンダ」

やばいな...ママ何て呼んでしまった。

これは、あの神たちのせいだ...

「ママ、随分甘えん坊になったのね神にまでなったのに」

「まぁな、アマンダは俺のマ...母さんだったし、この世界の初めての相手だった...最愛の人だったよ」

「そう...ありがとう、私ね神を産んだから《聖母》という特典で来世は幸せが約束されているんだって」

「そうなんだ」

「うん、聖女のジョブ貰って、王家の第一王女に生まれてね、確実に幸せになれる運の底上げもしてくれて、結婚適齢期には最高の王子様と出会えるんだって」

「良かったじゃないか」

「そうね...でもね、でもね私、そんな幸せより貧乏な農家の娘でも良い、魔法なんて使えなくても良い、ルディウス、貴方の傍に居たい..だけど無理なんだって...」

「ありがとう、アマンダ」

「無理なのは解っているわ...ごめんなさい、今日こうして会えたのも特別なのは解るわ...最後に会えて良かったわ、ルデイウス、最愛の息子、そして最愛の人」

「アマンダ」

「ルデイウス」


「ちょっと良いかしら」

「貴方は?」

「女神イストリア」

「めめめ女神様...」

「そんな恐縮しないで良いわよ、貴方は私の大切な方を産んでくれた方ですからね《女神の祝福》《眷属の種》」

「偉大なる女神イストリア様、何を....」

「貴方が転生する世界は私の縁のある女神の世界(まぁ二人して出来は良くなかったんだけど、負け犬女神二人組なんて言われて良く慰め合っていた位仲は良かったわ)だから祝福をあげたの、ちょっとした力とルディウスが好きな記憶が消えない様に...そして眷属の種をあげたから頑張れば天使に成れるかも知れない(ただ、私は未熟で眷属になれた人や天使になれた人はゼロなですけどね)これは可能性、本当に藁に縋る位の確率でしかない...もしルデイウスにもう一度会いたいなら、その僅かな可能性を手繰り寄せてきなさい、天使になりなさい、そうすれば会えますよ...人間には気の遠くなる位先だけどね」

「イストリア様...ありがとう、ありがとうございます」


「ありがとうイストリア」

「良いのよ、ある意味、あの方は私のとっても母ですから、ラファエルこれが女神と貴方の差...何しているの」


「天使の羽を広げて...アマンダに祝福を~ 天使長の名の元に天使長の祝福を~ ラララらぁ~これで良しと」

「あっあっあっ...ああーーーっ」

「何しているのよーーっ」


「貴方様は一体」

「私の名前は天使長ラファエル...今は理由がありルディウス様に仕えています」


「天使長ラファエル様って、あの太古の時代に邪神を退けて散ったという戦天使様」

「そうとも言いますね(本当は堕天してたんだけどね)」

「それで、そんな天使長様が私に一体何を?」

「アマンダお母さま、お母さまとなら私一緒に《ルディウス様を愛せる》と思うのよ...だからね天使にしちゃったの、天使の任命権は女神じゃなくて天使長の方が強いの、才能のある者を天使にできる...輪廻の輪はどうする事も出来ないけど、だから、あっちの世界でちゃっちゃと人生全うしたらこっちに来なさいね、待っているわ、まぁ人生60年ちゃんと頑張りなさいね...さっき女神が馬鹿してたけど《好きな男の記憶を持って他の男に抱かれる》なんて出来ないよね...だから処女こじらした女神は駄目なのよ、人生が終わったら記憶が蘇り天使に成れるようにしたわ...そしたらその羽で羽ばたいて此処に来なさい...それまで貴方の息子は私が責任もって預かるわ...待っているわ」


「ラファエル様...本当に有難うございます、このご恩は決して忘れません」

「そう、それじゃ手を..はい」

ラファエルは手をアマンダに差し出しそのまま俺の所まで連れて来た。


「ルディウス様、60年の別れですよ」

「ラファエルありがとう」

「仕えるのが天使です」

俺はアマンダを思いっきり抱きしめた。


「そろそろ良い?」

「はい」

ラファエルはそう言うとアマンダの手を引きゲートに送り出した。

「それじゃ60年後待っているわ」

「はい」


こうしてアマンダはゲートを潜った。



メイドを含み他の人間は既に転生した後だった。

それぞれ、皆ある程度の底上げがあり幸せになれるようだった。

特に俺の傍に居て俺を庇ってくれた使用人は、もれなく《魔法の才能》を後からつけたそうだ。


これでもう良い、家族の事も知れたしこれからは未来を見ようと思う。

王国?...知らないな...別にもうどうでも良いし。



【冥界】


「ありがとう、ラファエル、アマンダに」

「あははっ私は天使ですよ? ルディウス様に仕える者です、ルディウス様の為ならあの位...」

《早いうちに母親を味方につけておけば、将来は2人で抱え込む事も可能ですね...どうせ独占は無理ですから人数は少数、強い者とは手を組む、もう戦いは始まっているのですよ...イストリア様》


「あああっ何しているんですか...転生前の魂にしかも他の世界に行く魂に..こんな加護を与えるなんて」

「ラファエル、貴方なにしているのよ、天使の祝歌まで使う何て」

「私は天使です、知りませんよ? 責任をとるのは神です、まさかイストリア様はルディウス様に責任を押し付けたりしないですよね?」

「うぎぎぎぎ...まさかラファエル、最初からそのつもりで」

「天使とは神に仕える者なのです、私の唯一絶対神ルディウス様のお母様の為なら何でもします...ええっルディウス様が幸せなら他はどうでも良い事...と言う訳で、この責任はそこの女神イストリア様が責任とりますから、心配しないで下さいね冥界神様」


「それじゃ、その様に創造神様に報告しておきます」

「そんな」


ちなみに創造神は最初怒っていたが、ルディウス絡みだと聞いた為、イストリアは怒られなかった。






【閑話】人類最強?
私はアイナ、スラングラム貧乏子爵家の三女として生まれた。

貴族とはいえ、貧乏だから生活は楽ではない。

この世界は魔法が全てだ。

例えスラム出身であろうが、娼婦の息子であろうが、魔法が使えるだけで良い仕事が出来る。

うちの家系は、魔法が本来は使える家系だけど、兄は1種、姉も1種、そして私は0種。

この1種、0種というのは何種類魔法が使えるかという事だ。

1種は1種類、つまり、火や水等の属性の魔法を1種類使えると言う事だ。

兄は火の属性の魔法を、姉は水の属性魔法を使える。

私は0、つまり、何も魔法が使えない。

父や母は2種、スラングラムの家系は魔法に優れ、貴重な2種以上の者が生まれることが多い。

だから、兄や姉の実力でも親は不満なのだ...

まして0種の私は...


「あんたみたいな子がなんでスラングラムの家に生まれたのかしら? 出来損ないだわね」

「お前、浮気でもしたんじゃないだろうな? お前から生まれた三人は全員が出来損ないだ...しかもこのクズは魔法が全く使えない」

「そんな訳ないでしょう...お前のせいで恥をかいたわ、本当に腹がたつ」


この世界には魔法が使える人間は少ない。

だが、貴族は魔法が使える家系が殆ど、私の様に貴族で魔法が使えない人間は凄く少なく滅多にいない。


この屋敷で私を貴族の娘として扱う人間は居ない。

だから使用人として扱われる。

まぁ、魔法が使えないからか、使用人が仲間として扱ってくれて、虐めが無いのがせめてもの幸いかな。


「アイナ、お前は来月で8歳になるから、この家から出て行って貰う」

「役立たずを8歳まで育ててあげたんだから感謝する事ね...可哀想だからその時に銀貨5枚あげます、それで当家と関わりは無くなるからそのつもりで」


貴族に産まれると8歳までは基本面倒見て貰える。

それは遅咲きで才能が芽生える者がいるからに他ならない。

決して善意からのきまりじゃない。

才能0の私が言い返せる訳もなく...

「解りました」

それしか言えなかった。

悔しくて、悔しくて、何度、この世界の女神ナクア様に祈ったか解らない。

だけど、そんな事で奇跡は起こらない。


「アイナ、お前は寧ろここから出て行かれて幸せかも知れないな」

「そうよ、劣等生呼ばわりされて永遠にこんな所に居るよりは幸せよ」


兄も姉もこうは言っているが...

裏で「彼奴よりはましだ」と影口叩いているのを知っているわ。

まぁ、虐めをしないだけ、ましだわ...偶にお菓子とかくれるし。

だけど、これは同情とかですら無い。

自分より下の者がいる優越感からしている事、自分達は魔法が使える。

だから貴族で居られる、その優越感から私に施しをしているに過ぎないわ。


「ありがとう、お兄様、お姉さま、あと一月お願いします」


「ああっ」

「ええっ」


気の無い返事が返ってきた。

彼等は1種、貴族の中では一番下、恐らく、お兄様がこの家を継いだら男爵まで落とされる。

お母様は2種以上の魔法の才能のある女性を兄の婚姻相手に探したが見つからない。

子爵とはいえ貧乏な我が家に嫁いで来るような2種の女性は居ない。

1種と2種では大きな違いがあり、2種は将来が約束される。

庶民に産まれても、国に所属すれば騎士爵の地位は最低でも貰える。

そして、男でも女でも貴族から引っ張りだこなのだ...

3種となれば将来は宮廷魔術師が確定した様な者...4種なんてレベルは最早国内に数人しか居ないが雲の上の人だ。

ちなみにこの国の最高の魔法使いは「万能のネロス」5種の魔法を使えるという事で将来は王族との婚姻が約束されている。


まぁ私には関係ない事です。


私は使用人扱いなので、楽しい事は何も無い。

朝から晩まで働いて、ただ寝るだけ。

勉強もさせて貰えない。


そんな私の唯一の楽しみは寝ることだけ。

最近不思議な夢を見るの。

その夢で私はメイドだった。

夢なんだから王女でも良いと思うんだけど...何故かメイド、平凡なメイド。

いや、平凡じゃない《完全な行き遅れ》のメイドだ。

その世界の私は《アン》というメイドだった。

その夢の中にはルディウスくんという凄い美少年が居て、何故か家族に嫌われていた。

その夢を見ると必ず枕が涎だらけになる位の美少年、だけど今の私の様に才能が無い。

私はメイドだから傍に居ても何も出来ない、だけどルディウスくんに《生きていく力》を身に着けて欲しくて一生懸命仕事を教えている。

そんな感じ...夢位ヒロインにならせてよ...そう思う。

夢なら、ルディウスくんと結婚してハッピーエンドで良いんじゃないかな?

だけど、そんな事にはならない、ルディウスくんは母親と和解して、幸せそうに暮らす、そして私は奥様に信頼されルディウスくんのお世話を任される。

そこで大体夢が覚める。

ルディウスくんが本当に居たらな...まぁあんな綺麗な子はいないよね。

これは私の夢なんだ。




【1月後】


「約束の1月だ、明日には出て行って貰うぞ」

「これで貴方はスラングラムとは無関係、平民になるわ、これは手切れ金の銀貨5枚よ、大切に使いなさい」


こうしてスラングラムを私は追い出された。

知らなかった。

私は凄くあの家で嫌われていたんだな。



「出自証明はありますか?」

「それなんですか?」

「いえ、家を追い出されるにしても普通は今迄は家に居ましたという証明書が貰えるのよ、そうじゃないと何処にも勤められないよ」

そんな事は聞いてない...。

《スラングラムとは無関係》

そう言う事なの...最低限貰える、そんな書類も出さない。

そこまで、嫌われていたんだね私。

パン屋でこれじゃもう何処も働く事は出来ないんじゃないかな?


結局、私は冒険者にしかなれずに、冒険者になった。

魔法も使えない、剣も使えない私は底辺冒険者として生きていくしかない。

しかも、8歳の私に出来ることは下水掃除だけ、薬草の採取すら危ない...

「何でこんな、私になっちゃったのかな..生きていくのが辛い」

スラムで生活しながら、その日食べる物の為に下水掃除。

世界が辛くて、体を売ろうとした事もあったけど..

「顔は悪くないが、下水臭くて抱けねーよ」

下水掃除の臭いが沁み込み、スラムの男すら抱かない女にまで落ちた。

まぁ8歳で娼婦になるより良いか。

確かに自分でも下水臭くて、排せつ物の臭いがして、風呂にすら入っていない垢だらけの女、抱くはずは無いわね。


そんなある日、食事が欲しくて、ちょっと冒険心から《薬草採取》に出たら。

終わった、グレーウルフに囲まれた。

もう死ぬしかない...


《助けて女神様》


「呼んだ~ あら大変ね、女神の怒りを知りなさい...ゴッドネスアロー」

目の前のグレーウルフが一瞬で丸焼けになった。


「あああっ貴方様は女神、ナクア様...」

「良い子ね、私は天上から貴方を見てました」

「あの、助けてくれてありがとうございました...そんな女神様が助けにくるなんて」

「ねぇ..アイナ、貴方は幸せ」

「ぐすっ、幸せなんて程遠い生活です...」

「そう...あっそうだ、貴方の髪、あまり綺麗じゃないわね..水色の髪をあげる、私と同じ色の髪..ほらね」

「綺麗、これで少しは幸せになれたかしら?」

「女神様、綺麗な髪を有難うございます、だけどきっと直ぐに汚くなります」

「何で?」

「私は、真面な仕事に就けないので下水掃除していますから」

「何で、そんな事しているの?」

「魔法の才能が無くて、親からも見放されたからですよ」

「あはははっ、そうなんだ、だったら口あけて」

「どうしてですか?」

「良いから」


ナクア様の言う様に口を開けた。

すると無理やりナクア様が私の口に何かを突っ込んだ。


「く苦しい」

「少し我慢してね」

体が熱くて凄く痛いーーーーっ


「痛い、痛い、痛い、痛い」

「もうすぐだから我慢してね」

「何が起こっているんですか...」

「魔法の才能をね...あげたのよ」

「嘘、魔法の才能...本当に」

「そうよ...私って良い女神でしょう? 凄く感謝したくなったでしょう?」

「女神様ありがとう...これで死んでも..」

「馬鹿言わないでよ、死んだら困るのよ、それに体が痛いだけで、直ぐに治まる...平気だから」


「幾ら才能を頂いても、だれも私に魔法なんて教えてくれないですよ、ハァハァ」

「そんな不幸そうな顔しないで、不味いのよ...そうだ、ジャジャジャジャーン 賢者のジョブ、この世界には魔王は居ないから必要ないけど作ったの...これもあげる...ねぇ私って良い女神よね...幸せだよね」

「...ハァハァ 体が痛い、死ぬ程いたいよーーーっ」

「嘘、まだ不幸だと言うの? はぁ~仕方ないな、ジャジャジャジャーン 勇者のジョブ、これで無敵だよ! 私って素敵な女神だよね、幸せだよね..アイナ幸せでしょう? 女神が此処までしているんだよ」


「体が痛いーーっ辛いよーー誰からも愛された事も無かったし、寂しかった」

「こうなったら仕方ない、ジャジャジャジャーン、聖女のジョブーーっ! 回復魔法の頂点、皆の人気者聖女様、もうモテモテだよ、こんなジョブくれる女神様なんだよ? 凄く良い女神だよね? 幸せだよね」


「ハァハァハァ」

「嘘、まだ足りないの? それじゃジャジャジャジャーン 剣聖のジョブ、これで4職揃い踏み、この世界は魔王も居ないのに、最早人類最強はアイナだーーっ 幸せだよね? 良い女神だよね...私」


「ハァハァ...死にそうです」

「駄目、そんなの駄目なんだよ、アイナは幸せにならないと...もう大盤振る舞いだよ? 《女神ナクアの祝福》もう大丈夫だよね」


「ちが、ちが...体が死ぬ程痛いだけです」

「あっそうなんだ、パーフェクトヒール...どう?」

「有難うございます」

「良かった、それで、アイナは幸せ?」

「今迄は凄く不幸でしたが、態々、女神ナクア様が降臨してくれたなんて、私、私幸せです」

「今迄、見てあげられなくてごめんなさい、私も貴方が好きよ、アイナも私が好きよね、こうして降臨して会いに来る位貴方を愛しているわね...これからは幸せに生きなさい、そして私には感謝の祈りを捧げて、感謝してくれればそれで良いわ」


「あの、さっき私が苦しんでいた時に...」

「うん、アイナが幸せに成れるように力を貸したのよ、見て見る? ステータス はいっ」

アイナ
LV 10
HP 3200
MP 4800
ジョブ 賢者  剣聖  勇者 聖女
スキル:全ての魔法の才能(7芒星 本来はこの世界の魔法は六芒星(聖、光 火 水 土 闇)だがそれに+女神魔法が使える)

(剣補正(200%)剣を持って戦った場合は2倍の技量にあがる)  (勇補正(300%)勇気を持ち戦う場合は3倍の技量に上がる。)
(限界突破(限界が無くなる)) (賢補正 全ての魔法が望めば使えるようになる) (聖補正 全ての回復魔法が使える)

 (女神の祝福 女神に愛された人間の証し 多少の加護がありステータスがあがる)


「これは...本当ですか?」

「凄いでしょう? 私頑張っちゃったよ...今のままでも騎士団位簡単に壊滅できるし、頑張れば世界相手に喧嘩しても、負けないくらいにはなるよ? 良かったでしょうアイナちゃん」


「有難うございます、女神ナクア様」

「良いのよ、その代わり良い...一生感謝しなさいね」

「はい」

「それじゃ、もう会う事はないけど...良い、本当に感謝して祈ってね、アイナちゃん..それじゃ」



この世界に最早、アイナより強い存在は無く。

女神ナクアは神託で、アイナを勇者として教会に伝えた。


その結果...アイナは凄く幸せに...過ごせた...うんどうだろうか?

幸せだけど、迷惑も沢山掛けられたようなのでトントンの人生を送ったんだと思う。



【女神ナクアSIDE】


「ナクア、これをこの前、転生させた、アンというメイドに与えて欲しいのじゃ」

「何ですか? これ」

「魔法の才能じゃ、いやな、《アンというメイド》昔、上級世界の冥界神が人間だった時に助けた事があってな上がこれを与えるように言ってきたのじゃ」

「そ、創造神様の上」

「うむ、幾つか上の階層の神ですら顔も見たことが無い、更に上の世界の住民じゃ」

「あはははっ凄いですね」

「所で《アンの魂》は幸せかの? なんでもそこ迄の善行をしたのに報われない死に方をしたから、下層だが幸せに暮らせるようにお主の世界に送ったそうじゃよ...大丈夫かの」


「あはははっ大丈夫です、それなりの貴族の娘に転生させましたから」

「なら良い...もし不幸にしていたら」

「不幸にしていたら(ごくっ)」

「最悪、この神界事なくなる」

「冗談ですよね...」

「わははははっ冗談じゃ、優しい神だからそんな事はしないと思うから大丈夫じゃょ...それじゃ頼んだよ」


私は気になって下界を見て見た。

アンの転生したのはアイナと。

やべー、やべーじゃんこれ、不幸になって死にかけているじゃん。

ちゃんと貴族に...嘘、上の世界から来たのに魔法が使えないの...だからこんなの届いたの?

こんな上位の神から贈り物が貰えるような人を私が不幸な人生歩ませたのがバレたら...死ぬのかな私。

消滅処分....そんなの嫌よ嫌だーーーっ

まだバレていない、まだバレていなんだから、今から幸せにすればバレない。

うん、直ぐに幸せにすれば良いんだ...一刻も早く幸せにしなければ、私が危ない。

アイナ待っててね、この女神ナクアが直ぐに幸せにしてあげるわ...

こうしてばれない様にナクアは降臨した。



※ 世界によって時間の流れが違うという様に考えて下さい。
  この作品は、本編キャラクターの《アン》の話ですが、もしかしたら設定に可笑しな所があるかも知れません。
  IFの話として切り離してお考え下さい。
  半分ギャグのノリです、お許し下さい。

  (作者より)




















【閑話】戦メイド降臨 リクエスト作品
「はぁはぁ もうお仕舞ですね」

まさか王国の王宮騎士団が遠征中に謀反が起こるなんて。

此処に居るのは王と王妃、第一王子と第一王女。

魔法が使えるからと王族付きのメイド兼ボディーガードになれたけど、駄目かなこれ。

守ってくれていた騎士はもう死んだ...もう此処には味方は居ない。

終わりなのかな...

こっちの勝利条件は騎士団が到着まで王族を守り続ける事。

今はもう隣国の境界まで来ている。

あと4時間、此処を守れば勝ちだ。

逆に、此処を落とされたら負けだ。


「イザベラ、もう良い投降しよう、そうすれば...」

「王様、無理ですよ、多分投降しても皆殺しにされるだけです」


「ですが、我々を引き渡せば、貴方は助かるわ」

「お母さま」

「お母さま、私ころされるの?」


「あははっ私上等な人間じゃないけど、幼い子供は見捨てられないのよ...素で話すのは赦してね」


「ですが、貴方はもう魔力がつきて魔法が使えないのでしょう?」

「そうですね...この奥に行って下さい、此処を私が通さなければ奥にはいけない」


「無理です...相手は数百います...貴方1人じゃ死んでしまいます」

「そうですね...ですがメイドとして主人は守りたいのです....まぁ無理そうですが、私が此処を通さないのはメイドとして矜持です」



「もう止めません...ですが」

「その先を言うのはよせ...忠臣に」


「イライザ...」

「イライザ...」


「王子様と王女様が応援してくれるなら、負けないよ私...王様、もし私が守り切ったら褒美はたんまり下さいね」


「約束しよう...」

《無理だ》


「それなら頑張らないとね...それじゃ行って下さい」


「頼んだぞ」

「頼みました」


とは言ったものの、魔力は無い、ポーションも切れた。

「もうこの杖も駄目だ...あるのは王妃様と王様から分捕ったナイフ2本」

あのまま渡したら自害しそうだから無理やり貰ったけど...

終わりだわね....

まぁ今迄幸せだったから良いか...

恋人は出来なかったけど幸せだったな。


恋人は...あの夢が悪いのよ。

あんな美少年に仕えていた夢を見るから現実社会の男が好きになれなくなるじゃない。

夢の世界でもイライザというメイドだった。

年下のルディウスという名前のご主人様に仕えていた幸せな夢。


それももう終わり...もう寝ることも無く此処で死ぬ。


《あなたルディウスちゃんが好きなのね》


何だ、この声は...

《しかもメイド...》


幻聴が聞こえてくる、凄く優しい声...聴いた事無い声


《自分の子供を愛してくれた人が死ぬのは忍びない》


何だ、この声、貴方は誰...

《貴方は私を知らないし、知る必要はないですよ...だけど私は貴方に感謝している》


誰なのかな、私は死ぬ寸前に幻聴を聞いているのかな。


《今はお休みなさい、起きた時にはこの悪夢は終わる...体を借りますね》


凄く優しい声...

《私は...エスタ》


そのまま私は意識を手放した。


「居たぞ、こっちだ」


不味い....


【戦メイド降臨】


「何だ、メイドか、逃げるなら見逃してやる、その先に王族が居るんだろう?」

「メイドとは主を守る者、敵に背なんか向けませんよ」


「あはははっ騎士に敵うメイドなどこの世に居ない」

「そうでしょうか? 私の敬愛するご主人様ケイン様の世界では冥途(メイド)とは死の世界らしいですよ、メイドを怒らせると死んじゃうんですよ~」


次々と騎士が集まってきた。

「何だ、メイド1人か? とっと殺すか、倒すかしようぜ...まぁ面は良いから殺さないで弄ぶのも良いかも知れないな」

続々と騎士が集まってきた。


「騎士って言いますが、主を裏切って騎士なんですか~思わず笑っちゃいますよ~、だから王宮騎士に成れないんですよ~」


「言わせておけば、命だけは赦してやろうと思ったが殺す」


「それじゃ、行きますね、戦メイドシエスタ参ります」

黒髪のメイドは名前を名乗ると一瞬で間合いを詰めた。

そして両手のナイフを軽く振ると、騎士のクビはそのまま地面に落ちた。


「あららっ弱いですね~ そんなんじゃワイバーンに勝てませんよ」


「此奴、凄く強いぞ、油断するな..囲めーーーっ」

「か弱いメイドが強い訳ないですよ~....ケイン様の仲間で一番弱いのは私ですからね」


最早、勝負にならなかった。

シエスタがナイフを振るうと簡単に首が舞う。

だが騎士達が剣を幾ら振るっても剣は当たらない。


「まさか、剣聖なのか? メイドなのに...」

「こんな動きクルセイダーでも出来ない」


「なぁに言っているんですか~ こんな拙い動きで剣聖とか言ったらケイトさんが怒りますよ? アイシャさんにも通じません」


「だったら」

「戦メイド...それで良いじゃ無いですか?」




【王族SIDE】

幾らたっても部屋に踏み込んで来ない。

だから、様子を見に行って隠れて見ていた。

「なんじゃ、あれは」

「魔法が出来て、ある程度出来るって聞きましたが...綺麗、ナイフ一振りで騎士が倒れていく」

「勇者様なのかな...戦メイド?」

「カッコいい...私イライザのお嫁さんになりたい」





「そんなこれだけ居た騎士が..騎士が..」


「貴方で最後みたいですよ...タコ坊主さん」

「待て、私は宰相だ..欲しい物は何でもやる」

「要りませんよ」

「そうだ爵位をやろう、なななっ男爵」

「要りません」

「ごめん値切って悪かった、公爵に領地...それなら良いだろう」

「要りませんよ? 私メイドですから」


そういってシエスタは宰相の首を跳ねた。


《これで終わりですね...さようならイライザさん》


メイドは力尽きたのか...そのまま倒れた。




【寝室にて】


「おう、どうやら目を覚ましたようじゃな」


「あれっ王様..王妃様」


「ありがとうイライザ、どれ程貴方には感謝して良いか解りません」

「イライザ、カッコ良かった、まるで勇者みたいだったよ」

「イライザカッコ良かった、私と結婚して」

何が起きたのか解らない。


「あの、だったらご褒美を下されば結構ですよ、勇者あはははっそんなにカッコ良かったのかな、あと王女様、私は女ですから結婚は出来ません」


「約束したから褒美は弾ませてもらう」

「そうね、あの条件で蹴ったんだから同じ位は」

「凄くカッコ良かった...戦メイド」

「イライザが男だったらよかったのに...でも凄くカッコ良かった王子様みたい」


えっ褒美...戦メイド...王子...何?

まぁ良いや、多分頑張ったから王都のお菓子かな...金貨10枚位は貰えるかな?

うん、私頑張ったよね。



後日、イライザは....


「イライザ殿、其方には公爵の地位と宰相が治めていたリグランの土地を領土として与え王国大報奨勲章を与える」


そう聞いて目を回して気絶した。













【閑話】鏡の前で笑うのは
「このままだとルディウスがどんどん離れていっちゃうわ」

私は凄く焦っている。

完全に相思相愛だと思ったのに、なんだか相手にされてない様な気がする。

「そうだね」

「そうだねってグレーテル貴方は悔しく無いの?」


《いや、薄々勘付いていたけど、ルディウス様の私達への想いは恐らく《妹》に対する愛だと思うんだけどな》


「悔しいも何も、私だってルディウス様は好きだよ、そして間違いなくルディウス様も愛して下さっているわ!(妹としてだけどね)」


「そうよね、ルディウスもちゃんと愛してくれているわよね」

「あのね、ホワイト、ちゃんと様つけた方が良いよ」

「何でよ」

「貴方は聖女、私は賢者なんだよ? ルディウス様は《神》なんだから当たり前じゃない?」

「うぐっ」

「うぐっ、じゃないわよ...それにホワイト、貴方はもう正室にはなれないよ!」

「うぐぐーーっ」

「だってそうじゃない? 天使長のラファェル様が居るのよ? ルディウス様が居たから思わずスルーしちゃったけど...天使長よ天使長、歴史の中でも降臨したなんて話、聞いた事無いわよ、天使長なのよ、貴方にとって信仰の対象じゃない? 話せるだけで光栄だと思わなければいけない存在の筈よ」

「そんな恋愛に地位なんて関係ないわ」

「ハァ~ ホワイト、あんた馬鹿なのね」

「酷いよグレーテル」

「地位が関係ないなら、益々勝てないわ、多分ルディウス様は年上が好きなのよ、そして周りの人達は年齢が関係なければ完璧よ」

「そんな筈は無いわ」

「良い、戦力の差を教えてあげる」


【グレーテルのメモ】


奴隷のミルカさん

黒髪、黒目を除けば、凄く美人で大人な感じ。

誰にでも優しく、傍にいるだけで癒される。


奴隷のレイラさん

容姿は確かに複雑だけど、そこを気にしないなら絶世の美女。

脳内で髪の毛と目の色を普通に変えたら...こんな美女そうはいない。

しかも理知的で人に尽くすタイプ。



マリアーヌ 元王妃

言わずとしれた絶世の美女。

理知的で癒し迄持った完璧な大人の女性。

王国一と呼ばれる、その美しさは今でもその片鱗を見せる。


フランソワーズ元王女

可憐な女性、思わず守ってあげたくなるような、男なら父性をくすぐられる。

マリアーヌ王妃の教育のせいか気品があり、落ち着いた雰囲気を持つ。


エレノワール元王女

きつい印象の理知的な美女。

嫁いでいく前はアカデミーに所属して数々の論文を発表。

ジョブで持っている訳でないが、その頭の良さから、賢者と呼ばれていた。


テレジア元王女

本来は正室になる予定だった。

勇者の妻になる教育をされていた事からかなりの強敵。

まだ詳しくは分析中。



「こんな感じよ? あのさぁ、私は正直言えば、ラファェル様は別にしても人間の中でも正室は貴方じゃない方が良いと思っているわ」

「グレーテル、親友なのに裏切るの?」

「私は賢者なのよ、情報分析も仕事なの...どう考えても天使長のラファェル様が正室、人間の中でならマリアーヌさんが正しいと思う」

「そんな」



【ラファェルと」

「私が正室...グレーテル、凄く見る目あるわね、そうだ私の加護あげるわ」

こんなに簡単に加護が貰えて良いのだろうか...


「そんな、私は本当にそう思っただけです」

「うん、うん、私は天使長だから嘘は通じないのよ...その気持ちが嬉しいから加護を与えたの、だけど正室は不本意ながら決まっているわ」

「誰ですか?」

「女神イストリア様よ...本当に腹立たしいけど、あっちは女神だからね」

「そりゃそうですよね....」

「そうよ、まぁ人間の中での序列は適当に決めて良いわ...そうね、貴方かマリアーヌ辺りが妥当かな」

「私かマリアーヌさんですか?」

「そうよ...私は、そうね、その輪から外れて構わない、適当にルディウス様と楽しむから」

「良いんですか?」

「こういう事言うのは酷だけどさぁ、私は天使長だから寿命は数万年もあるのよ、ルディウスは不老...そう考えたら人の人生60年、譲るのも吝かで無いわ」

「成程」


「まぁ、ホワイト以外なら誰でも良いわ」

「ホワイト以外ですか?」

「そうよ、あの子は駄目、だってあの子は聖女なのよ、ルディウス様は元より、イスタリア様や私にも仕える義務があります、信仰に全てを捧げる、それが聖女の筈、教皇の姿を見なさい、あれこそが正しい姿だわ、それに聖女なら戦いが終わっても真の聖女なら街で、つじ治療でもしている筈よ、私が知っている他の世界の聖女たちは皆、そうしているわ。まぁルディウス様が許可したような物だから文句は言わないけど天使長から見たら、聖女失格ね」


確かにそうだ、ヒーラーであっても尊敬されている者は良くボランティアで無料で治療をしている。

聖女...確かにそれが正しい姿だ。


「解りました、これは私の考えですが、形上、人間界では、ラファエル様が正室、その代わり人間の側室の中で本来の正室の仕事をする者を、側室筆頭にする、そんな感じで如何でしょうか?」

「うん、それは名案ね...私から教皇に話しておくわ」

これで良い筈だ。

「それでグレーテルは側室筆頭に成りたいのかしら?」

「それはマリアーヌさんで良いと思います、先に進めて下さるなら、私はマリアーヌさんに話をしに行こうと思います」

「解ったわ」



【マリアーヌさんと】


「私が、側室筆頭ですか?」

「はい、元女王様で、ルディウス様の妻の中で三人は貴方の娘ですから一番相応しいかと思います」

「あの、賢者である、グレーテル様がなんでしないのですか?」

「私は男女の営みの経験もありません、正直言えば学問馬鹿ですから」

「ですが、それならホワイト様が」

「あれが平等に人を扱えると思いますか」


「確かに、それでは引き受けますがホワイト様の対応をお願い致します」

「そうね...それは引き受けたわ」



【再びホワイトと】


「と言う訳なのよ」

「グレーテルの裏切者、薄情者」

「はいはい、何とでも言いなさないね、どう考えても神や天使長が居るのに聖女の貴方が正室に成れる訳ないでしょう」

「...もう良い」

「仕方無い事だよ」


「もう、解ったよ...」


そう言いながらホワイトは部屋に引き籠ってしまった。

まぁ1週間もすれば出て来るだろうからいいや...


私だって本当はルディウス様を独り占めしたい。

だけど、ある程度ルールが出来、その中で競争しなければいけない。

そうしないとこんなハーレムみたいな付き合いでは揉め事ばかりになる。

本当はホワイト、落ち込んでいる場合じゃないのよ?

貴方は親友だけど、恋愛は別。

私の勝機は貴方とテレジアより先に動かないと意味が無い。

私の最大の武器は賢者じゃない、私には兄が居る...これが最大の武器。

テレジアにもホワイトにも兄は居ない。

そこにチャンスがある



【鏡の前、グレーテル自室】


「えへへっルディウスお兄ちゃん」

「お兄ちゃん大好き」

「流石、ルディウスお兄ちゃん凄いね」

鏡の前でポーズをとった。


ルディウス様は年上が好きなんだから仕方ない。

子供扱いされているのも解る。

なら、私は《妹》になる。

賢者になる前の私は《妹》だった。

まずは妹分になってメロメロにして...最後には一人の女として愛して貰えば良い。

あの《おはじき》もそうだし、私やホワイトの為に魔王領に行ったのは《妹》の様に思ったからだろう。

ルディウス様は年上も好きだが、子供にも優しい..まぁ11歳の姿なのに。

だから、私は賢者から妹に戻る。


「妹はきっと最強だよ...覚悟してねルディウスお兄ちゃん」


グレーテルは可愛い顔で高らかに笑った。

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