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第12話 心配とレベルアップ

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「はぁはぁ…黒薔薇、黒牡丹…お帰りなさい…」

俺は急に体が熱くなり目が覚めた。

別に苦しい訳じゃない。

体の芯から温まった様な感覚。

お風呂にでも入って湯あたりしたような感覚だ。

体が…熱い。

「瞳様、目が覚めたのですか?」

「起きていたの」

「ああっ、目が覚めたんだ。急に体が熱くなった様に感じて、傍を見たら二人が居なかったから、はぁはぁ…心配していたんだよ」

俺にとっては何より大切な存在だからな。

「心配掛けてごめんなさいですわ」

「…ごめんなさい」

「良いよ!帰ってきてくれたなら、それで良い。今の俺には二人以上に大切な存在は居ないから…無事で良かった」

「「瞳様…」」

もう二人が傍に居ない生活に耐えられそうも無い。

邪神様が作った人形なのかも知れないが、どう見ても人間にしか見えないし、ちゃんと感情がある。

『誰も傍に居ない』から地獄や魔界の様な環境でも生活でき我慢出来た。

だが、今は違う。

そんな地獄の中で女神(邪神です)に出会い二人の可愛い天使(拷問人形です)に出会い…あの事故から初めて安らげる環境を得た。

もう、元の生活には戻れない。

きっと彼女達が居ない生活に俺の精神は耐えられない。

「それで何処に行ってきたの?」

「それは…あのですね」

「…」

「なにを聞いても怒らないから、本当の事を教えて欲しい」

「正直に言いますわ…聖女 宇佐川聖子を殺しました…わ」

「殺した…」

黒薔薇も黒牡丹も顔を真っ青にして震えている。

そうだな…こういう事はしっかりと話して置いた方が良い。

「そうか、良ければ今日はじっくりと話をしよう」

「「はい…」」

さっき以上に顔を青くして二人は震えだした。


◆◆◆

なにを勘違いしているのか…二人はぽろぽろと涙を流し始めた。

誤解をさせてしまったみたいだ。

「ごめん、勘違いしないで欲しい。宇佐川聖子なんてどうでも良い。それを咎めるつもりも無いし、何も怒ってない。だけど、相手は一応聖女だったんだ『もし君たちが怪我したら、もし死んでしまったら』それだけが心配だった…それだけだよ…だからこれからは、ちゃんと話して欲しい」

「「瞳様」」

良かった涙は止まったようだ。

俺にとっては『宇佐川聖子』なんてどうでも良い。

同級生も異世界の人間もどうでも良い存在だ。

小学5年生のあの事故から全てが変わった。

もし、その当時の友達が同級生に居たら、情が残ったかも知れない。

だが、異形の存在に見える様になった友達から逃げる様に中学は別の学区に行った。

その為、同級生には友達と呼べる存在は無い。

学校での必要な最低の交流しかしていない。

だから、友情も何も存在していない。

「ほら、可愛い顔が台無しだよ、ほら…」

俺は二人の顔を拭いてあげた。

「「瞳様…」」

「それで、どうして、そんな事したの? 全然怒ってないから詳しく教えて」

「解りましたわ…心配させてごめんなさいですわ」

「…ごめんなさい…もうしません」

詳しい事を二人から聞くと…俺に足らないのは回復の力だそうだ。

確かに俺のステータスには回復に関係する魔法もスキルも無かった。

この世界で俺が生きやすい様に、少しでも生存率が高くなるように、その力を手に入れる為に『宇佐川聖子』の死が必要だった。

そう言う事だ。

勇者パーティの中で唯一の回復役『聖女』それが居なくなれば、より魔王の方が優勢になる。

そして、俺に回復の力を与えることが出来て一石二鳥。

それが二人の考えだった。

『人を殺す事』

もし、俺の目が正常なら、きっと抵抗があったかも知れない。

今の俺は『どうでも良い』そう思っている。

それが一応は同級生だった『宇佐川聖子』でも同じだ。

だから、自然と口から出た。

「謝ることは無いよ。俺の為にしてくれたんでしょう? 本当にありがとう…嬉しいよ」

嬉しい。

自分が大好きな存在が、自分の為を思ってしてくれたんだ。

それが例え『殺し』であっても嬉しい。

そう思った。

「「瞳様…」」

「愛しているよ」

自分の事を考えてくれて『手迄汚してくれる存在』

ちゃんと気持ちを伝えて置くべきだ。

「瞳様…嬉しいですわ…私もお慕いしてますわ」

「…私も、愛している」

そう言うと二人は俺にしだれかかって来た。

◆◆◆

「それでは瞳様、これをはい、あ~ん」

「食べて…」

黒薔薇が、ビー玉位の赤い石を俺に差し出してきた。

ちょっと飲むのに辛そうだが、これが『人石』という物らしい。

魔族に魔石があるように、この世界の人間には『人石』がある。

本来、人石や魔石を手に入れても、自分に取り込む事は出来ないが、どうやらこの体は、それを取り込み自分の力にする事が出来るらしい。

それを利用して…黒薔薇や黒牡丹は俺を強くしたいようだ。

更に二人が『従者』だから二人が倒して手に入れた経験値でもレベルが上がるそうだ。

俺の体が熱くなったのはその為だった。

「いただきます」

そう言って俺が人石を飲むと…更に俺の体が熱くなった。

「これで、回復の力が手に入った筈ですわ」

「強くなった…」
「それじゃ、早速見てみるか…鑑定」

黒木 瞳
LV 10
HP 500 (+178000)
MP 1000 (+125000)
ジョブ:魔法騎士(魔界の勇者)(魔界の聖人)(邪神の眷属)
スキル:翻訳(意思疎通を付与し、人族だけでなく魔族、魔物相手にも翻訳可能) アイテム収納(広さは小城レベル) 鑑定(極み) (隠ぺい(極)) (邪眼:未覚醒) (闇魔法レベル10 )火魔法レベル10 風魔法レベル10 水魔法レベル10 
(光魔法(回復限定)レベル1)
(従者:黒薔薇 黒牡丹)
加護:(邪神エグゾーダス)(邪神コーネリア)
※( )の中が偽装される。

           ↓(偽装後)

黒木 瞳
LV 10
HP 500 
MP 1000 
ジョブ:魔法騎士
スキル:翻訳 アイテム収納 鑑定 火魔法レベル10 風魔法レベル10 水魔法レベル10
加護: ****** ******


「凄いな…レベルが10になっている…」

「あれでも聖女ですから、その位はあがりますわ」

「…うんあがる」

『人を殺すとレベルがあがる』もう俺は人間でも無いのかも知れないな。

「今回の件は本当にありがとう…だけど心配だから余り無理はしないでね」

「解りましたわ」

「解った…」

二人の話だと、一番必要な力が手に入ったから、此処からは無理に狙っては、いかないそうだ。

それなら…うん、安心だ。
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