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80.犯人は急に手のひらを返すお約束
しおりを挟む「あらあら、見つかってたのね」
それは視覚的なものを意味するのか、あるいはこの事件の真相に近づいたことを意味するのか。
そう言って姿を現したマリアさん。登場の仕方がいかにも黒幕っぽい。
「遅いぞマリア」
レイズ様は見るからに不機嫌そうだった。
マリアさんをこの場に呼び出すのは任せろと豪語していたからな、遅めの登場に不満があるらしい。
「ごめんなさい、私も困らせたくなっちゃたみたい」
そんでもってマリアさんはマリアさんで謝罪してるようには思えない。
困らせたくなったなんて付け加える余裕がある分、どちらかといえば楽しんでいる可能性さえあるように見える。出会った当初に感じたおしとやかそうな女性は一体どこ行った。
「それで、コントロールってのは?」
場に流れる微妙な空気を一掃したのはベルさんだった。
ベルさんと目が合うと、事情を知ってか知らずかほほえみかけられた。この人はやっぱり変わらないな。どことなく胡散臭いところも含めて。
「あ、えっとですね」
私は気持ちを切り替えて、横目でマリアさんを確認した。……なるほど、表情は崩れないっと。
『コントロール』という言葉を聞いてもなお、余裕そうなマリアさんのメンタルには感服する。どうせなら今の一言をきっかけにボロを出してくれれば楽だったのに。いつかのどこぞのお坊ちゃんみたいにねぇ?
「……」
「なんだよ」
「いえ、別に何でも」
いけないいけない、私としたことがつい熱い視線を送ってしまった。
うっかりボロを出した結果、追放に至った某おぼっちゃまの鋭い目から視線を逸らし、私は再びベルさんへと向き直った。
「ダンス審査が始まる前の事です。ちょっとした会話がありましたよね」
「ちょっとした会話?」
「ええ」
普通なら聞き漏らしてしまいそうな単純な日常会話。でもそれが恐らく鍵になっている。改めて口にするのはなんかちょっと恥ずかしいんだけど。
「マリアさん言ってましたよね。私とレイズ様が口論になった時、私達二人の様子に『嫉妬してしまう』と」
「そうだったかしら? よく覚えているわね」
あっ、はぐらかされた。このままだと、こんなやり取り覚えてるの私だけみたいな空気になって恥ずかしくなるやつだ。
「あの、いや、でも実際に……」
「あーそんなのあったかもな」
お。
私は咄嗟に声のした方を確認する。このタイミングで援軍とは。
「だよな、ベル」
お、お、おおう。
しかもそれはレイズ様だった。なんてことだろう、こんなにきっちりとまるで物語の準主役ばりにアシストしてくれるなんて。正直、完全にボロを生み出す失言製造機だと思っていた。戦力外にしてごめん。
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