うちの悪役令息が追放されたので、今日から共闘して一発逆転狙うことにしました

椿谷あずる

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153.カレー、再び

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 断ってしまった。
 貴重な貴重なお申し出を。
 どう考えても破格のご提案だったのにぃ……

「あーあ」

 私はちらりと隣を確認した。
 全く涼しい顔をしおって。

「なんだよ」
「分かってます? ここ見知らぬ土地なんですよ」
「だから?」
「まずはこの辺一帯を探索するところから、始めなきゃいけないんです。食料調達出来そうな集落を探すところから!」
「? やればいいだろ」
「誰が?」
「お前以外にいるか」
「やっぱり!!!!」

 言うだけ言って自分は一切何もしない。そういう奴だよ、コイツは。

「あーもーだから嫌だったんですよぉ」
「つべこべうるさい奴だな。メイドなんだから文句言うな」
「メイドが見知らぬ土地の周辺探索なんか出来ますかって! 私はサバイバルに長けた特殊なメイドじゃないんですーごくごく普通のお料理とかお洗濯とかするメイドなんですー」
「普通じゃないだろ。料理出来ないんだから」
「はあああっ!? レイズ様のこと、この先、一生カレー漬けにしてやりましょうか?」
「やれるもんならやってみろよ」

 いつか絶対やってやる。

「あのぉ……」
「うん?」

 白熱しそうな争いの中、おずおずと一人の手があがった。ヘッセンさんだ。

「どうしました?」
「集落をお探しでしたら、この辺りを出て真っ直ぐ西に進めば、恐らく小さな集落があったかと」
「おお!」

 さすがは有能な使用人。痒い所に手が届く。

「お前もこのくらい出来ればな」
「はいはい、聞こえなーい」

「どうぞこれをお使い下さい」

 ヘッセンさんはそう言ってポケットから、何か小さいカプセルのようなものを取り出した。外界の空気に触れるなりそれは、本来の形を取り戻す。

「これは」
「私どもが使っていた地図とコンパスになります」

 それは確かに言葉のままだった。
 違うところと言えば魔力量。その地図とコンパスは、薄く紫色の光が漏れていた。

 そういう魔法道具なのか。

「地図に目的地を念じれば、正しい方向へと導いてくれるでしょう」
「お」
「お?」
「お高くないですか」
「馬鹿」
「いや、だって」

 レイズ様は呆れたように私を見ていた。でもさ。
 助けてもらったからといって、こんな高そうな魔法道具をポイポイ他人に譲って大丈夫? これ無くて、ちゃんとお家に帰れる?
 そこが心配だった。

「私どもはこちらを使いますので」

 そう言ってぺらりとあるものを取り出した。

「あっ!」

 これは我々もよく存じ上げる、好きな場所にワープ出来る例の魔法のアイテム。私のボーナスが泡のように消えたあれだ。

「それを使うんですね」
「そうでございます」

 流石、金持ちは違うな。
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